嫌われ者の害虫でオーガニック稲作?!ジャンボタニシ農法で除草剤いらず
ジャンボタニシは、稲を食べるということで日本が認めた侵略的外来種ワースト100に選ばれています。
しかし、そのジャンボタニシの特性を利用し雑草を除去し無農薬で栽培する農法が今、密かに注目を集めています。
◆そもそも、ジャンボタニシとは?
ジャンボタニシは東アジア、東南アジア各地で稲の害虫となっている外来種。
世界の侵略的外来種ワースト100にも殿堂入りしているほど、強力な害虫として扱われています。
別名スクミリンゴカイと呼ばれていますが、日本には1981年に食用として台湾から長崎県と和歌山県に持ち込まれました。
それから2年後の83年には養殖場が35都道府県、なんと500か所にも上りました。
しかし、見た目など日本人には合わなかったため需要がなく次々と養殖場が放置されていきました。
そこからジャンボタニシが逃げだし、あっという間に全国へと分布を広げていき稲作に害をもたらすようになったのです。
◆有機栽培への転換
彼らの食欲・繁殖力旺盛な性質を何とか利用できないか?
と考えた農家さんが、1989年から実験的にジャンボタニシによって田んぼの除草を行う実験をしていき試行錯誤の末、画期的なノウハウの作り上げました。
ジャンボタニシ農法の主なポイントとは?
①苗の種類
②水管理
の二つに分けられます。
通常、水稲の苗は『箱苗』が使われますがジャンボタニシ農法では『ポット苗』が使われます。
両者の違いは、苗の葉の数です。
まず、箱苗では通常葉が2枚の幼い苗(稚苗)が使われます。
箱の中に種もみを沢山蒔けるので、ひと箱で田植ができる面積が大きいです。
◆なぜ成苗にする必要があるのか?
分かりやすいので写真を見てみてください。
箱苗は、この箱の中に培養土を入れてその上に、種もみを沢山蒔きます。
それを育てて田植をするので、一枚の箱苗で多くの面積を植えることが
できます。
箱苗の写真
箱苗が2枚の幼い苗に対して、ポット苗は葉っぱが約4.5枚の大人の苗(成苗)使われます。ポット苗の写真(上表・下裏)
ポットのような形の中に、種もみをまいて育てます。
苗同士の隙間が大きいので、より苗の生命力を引き出すことができます。ポット苗の様子。葉が4.5枚程度になり、成苗となっています。
ジャンボタニシは柔らかい草ほどよく食べる特徴があります。
なので若い植物ほど食べられやすいということです。
ポット苗は、箱苗と比べて固いので、ジャンボタニシは田植して後から生えてくる雑草をたべるので、除草剤を使う必要がなくなるのです。
◆ジャンボタニシの動きをコントロールする重要な水管理とは。
ジャンボタニシの除草効果はかなり高く、体長1~2㎝のものが、1㎡に2個以上おれば除草効果は心配ないと言われています。 (草が少ない場合は1個/2㎡でもいい)
でも、時にはジャンボタニシの数が多すぎたり、エサとなる雑草が育っていない時があり、稲が食べられることもあります。
そんな時は、田んぼに溜めてある水を水深1~3㎝くらいの間に調整します。するとジャンボタニシは動きが鈍くなるので、その間に雑草を伸ばし、彼らのエサを増やすのです。
他にも野菜の残渣や、タケノコ、苅草などを入れて餌にすることができます。
どんなに農薬をまいても完全駆除が難しいジャンボタニシも、考え方一つで味方にもなるという事を農家さんが実践されています。実際に10ヘクタール以上タニシに草を食べさせて、全てオーガニックで栽培されている農家さんもいます。凄いですよね。
P・S:ジャンボタニシはもともと食用でしたので食べられます。甘辛く煮て食べるとそこそこ味はいけますが寄生虫がいますので、よほど火を通さないと食べてはいけません。