『うつ病九段』を読んで
藤井聡太七段が史上最年少タイトル獲得まであと一勝まで迫っており、将棋界に注目が集まっている。仮にタイトル獲得となれば藤井君のデビュー時のフィーバーに匹敵する程の注目度になるであろう。(記事を書いている間に本当に史上最年初の若さで棋聖タイトルを獲得しました。おめでとう! 7/16追記)
さて表題である、将棋棋士先崎学著『うつ病九段~プロ棋士が将棋を失くした一年間』を読んでみた。
なぜこの書籍に手を出したかと言うと、まず一つ目は私自身3年前にうつ病を患い、入院した経験があること。そしてもう一つは、将棋が趣味で筆者の事を20年以上前から知っていたからである。つまりこの本との出会いは必然的だったとも言えるだろう。
詳しい内容については割愛させていただくが、大雑把に解説?すると筆者がうつ病を発症し、棋士の仕事である対局を半年間休場する。そこから復帰するまでの半年間の行動、心の動きなどをつづった内容である。感想としては、将棋ファンであるなら興味深い所(他の棋士との人間関係等)はあり、最後までノンストップで読むことが出来たが、将棋界のことに興味がない人にとっては正直つまらないと感じるかも知れない。
ところで、筆者の存在を知ったのは私が中学生の頃で、NHK教育「将棋パトロール」という番組で神吉宏充五段(当時)との二人で進行する、プロ対局の面白棋譜などを紹介する番組であった。その当時のイメージのまま、なんとなく色物?エンタメ棋士といった印象を持ち続けていた為に、今回の著書は個人的に非常に衝撃を受けた。とはいえ、普段は豪快な雑な性格と思われていいるような人がうつ病を発症するというのもよくあること。それは自身が入院してそこで出会った方々を見ても経験上わかったことである。また、性格云々よりは立場がある程度上がってきて責任が大きくなっている人の率が高いように感じる。故に安定など程遠い常に真剣勝負の世界に身を置く将棋の棋士は精神的に疲弊するリスクが高いように思う。
現在将棋界は藤井聡太新棋聖誕生というニュースで沸いている。1995年におきた羽生七冠フィーバーに匹敵する状態だろう。今後数年間は藤井くん絡みで話題がつづきそうである。そういった華々しい活躍の裏には数多くの敗北が積み重なっているのである。そういった棋士の一人でもある筆者先崎学九段も過去は羽生を上回る天才ともてはやされた事があるほどの才能なのである。他のどの棋士も同じだ。そういった天才たちがしのぎを削りながら勝敗に一喜一憂し、血の滲むような努力を続けている事にスポットを当てて、将棋ウォッチングするのも悪くないだろう。
私や読んで頂いた方の世界でも、なんでも出来てパーフェクトなんじゃないかと思えるような人がいると思う。そういう人も皆見えないところでもがき苦しみながら努力をしているし、すごく嫌なヤツも、陰では怯えながら悩みを抱えていることだろう。そんな風に思えれば他人を愛せるし、普段の生活で生まれる嫉妬心や怒りや悲しみなんかも緩和されて、無用に精神をすり減らさずに済むと思うがどうだろうか?だがそれが一番難しい。