ナラティブで溢れたホテルAzumi Setodaとは。
ナラティブとストーリーの違いを私は未だによく分かりませんがナラティブを私なりの物語とするならば主役は私自身。
そういう立ち位置で私はナラティブというキーワードを選びました。
私はエンタテインメントという場に身を置いていて常に持っていた”問い”がありました。
自分(ゲスト)が主役となるエンタテインメントを作り出したい。
要は鑑賞型ではなく体験型ということになります。
体験を自分らしく感じられる場所。
それはやっぱり旅だと思うのです。
旅をしていて嬉しいのはやはり出会い。
その土地の人、土地の味、土地の音、土地の香り。
そこに心が動くようなストーリーがあれば自分だけのナラティブを紡いでいけるのではないか。
そんなことを考えます。
私は学生時代に広島で過ごしました。
広島と言えば風光明媚な瀬戸内海。
そんな瀬戸内海の中に浮かぶ生口島という場所にホテルが建ったのが話題になりました。
世界的なラグジュアリーホテルで有名なアマンホテルのエイドリアン・ゼッカ氏が建てたことで話題になりましたが、私は瀬戸内海の小さな街がなぜ選ばれたのか。
そしてなぜAzumiというネーミングとなったのか。
そんな問いを考えると強く惹かれるようになりました。
学生時代、長く住んでいても見向きもしなかった場所に。
実はその昔、生口島のあたりには海の民がいて安曇(あずみ)族と呼ばれていたこと。
この辺りは世界の交易が広がり海のシルクロードと呼ばれていたこと。
そんなことを旅を通して知ることになりました。
HPで見たこのロゴはこのホテルへ足を運ぶ前からとても気になっていてこのモチーフについてもホテルでスタッフさんに詳しく聞いてみました。
すると波のないはずの瀬戸内海ではあるがこのあたりは渦潮が起こり潮がぶつかり合い潮の流れが強い海なんだと聞きました。
瀬戸内海と言えば鏡面のような水面でとても穏やかな場所という印象でしたので、とても印象に残ったのです。
話は前後しましたが、そんな自分なりのナラティブを感じたくてAzumi setodaに立ち寄ることにしました。
予約の電話を入れるとAzumi setodaとyubuneという二つのホテルがあることを知りました。
説明を聞いているとyubuneは食事は地元の商店街で地元の味を楽しむことをお勧めしていること。
そして銭湯とサウナと湯上がり施設を完備しているという。
地元のスナックなどに足を運んでみたいなと思い、このyubuneに予約をすることにしました。
冒頭でも述べた通り、どうすればエンタテインメントを体験型にできるか、という“問い”を私は持っていました。
旅を体験型にする、そのひとつの答えとして、サウンドスケープ(音風景)を感じる、という考えに至りました。
そのための”実験”として、旅先での音風景をレコーディングするのがライフワークになっていた私は、部屋につくなり、スマホにマイクを装着し、ヘッドホンをつけて外へ飛び出しました。
現地の音をマイクを通してより臨場感高く感じたい。
特に渦潮の音を聞いてみたいと思いました。
確かに至るところに渦潮が現れこの渦潮をしばらく眺めているだけでも旅がより豊かに感じられました。
この海で海の民たちが世界と交流していたのだなぁとその歴史に思いを馳せるのも旅の味わいを増幅させてくれます。
自分の中で物語を紡ぎながら音に耳を傾けていました。
安曇族、海の民を紐解くための書籍も充実していて、長期滞在でその土地の音を録音(フィールドレコーディング)して聴き比べたりしながら参考書籍を読破したいとさえ思われてきます。
部屋も一人旅には十分に広く、和モダンの造りも私にはとても心地良いものでした。
渦潮の音をひとしきり楽しんだ後は国宝の向上寺三重塔へ登り、音に耳を済ませにいきました。
銭湯で旅の疲れを取ってからは一人で商店街へ飲みに出て瀬戸田レモンのレモンサワーやタコの唐揚げなど地のものを味わいました。
瀬戸内海に浮かぶ島。
圧倒的な静寂に包まれた場所でした。
渦潮が巻くとは言え、波のない穏やかな海、夜になると真っ暗になる島。
そんな場所に安曇族という海の民がいたという歴史に思いを馳せながらその土地の音や香りに耳を澄まし、鼻を研ぎ澄まし、私が自分の解釈で紡ぎ出すナラティブがここにありました。
ホテルはその土地や自然、歴史と繋いでくれる場所。
そして自分なりにその土地の、その旅のナラティブを深めることも出来る場所。
今までの泊まるという”手段”だけではなくその役割はより多様化していっている、そう感じられる旅でした。
一度、Azumi setoda(yubune)へ足を運んでみてはどうでしょう。
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