【誕生日表】はもういらない?無くしてしまう前に考えて欲しいその効果を実践から語ります。
保育室を、いかにも保育室らしくする要因はたくさんあります。その中でも、分かりやすいのは壁面装飾でしょうか。
壁面装飾もさらに分類すれば、季節の製作物、お誕生日表、当番表、日付表などなど色々あります。私も毎年、年度末に新クラスが決まるとそれらを作っていました。
しかし、最近は保育園を家庭の延長と捉えたり、あえて保育園らしさを出さないという意味で壁面を飾らない園も増えています。(その根底には保育者への負担を減らしたいからですが。)
私が現在勤務している園では、そういった製作物は、日付表だけになっています。退職した園でも確か私がいなくなるタイミングで無くす方向になったと記憶しています。
保育者の負担(業務量)を減らすという意味でメスが入りやすいのはこういう部分なんです。時代の流れですね。
ですが私個人としては作るのが楽しかったり、考えたりするのが面白かったりするので大変ですが、苦ではなかったです。
メルカリとかではこういった壁面を販売している人もいるくらいですから、好きな人はやっぱり好きなんだろうなと思います。
自分の居場所として
私が昨年度担任を持つ際に、例年通りに【誕生日表】を作りました。人気の絵本である『だるまさん』シリーズをモチーフに。
ただこの年は作るのが慣例となっていた誕生表にある“ねらい“を持たせようと思っていました。なので製作過程をいつもと変えることに。
これまでは誕生表に子どもの名前を書いて、保育室に張り出すところまでを完成としていました。
しかし、この年はだるまの形だけは切っておき、表情などを子どもたちに描いてもらった上で、私が最後に誕生日の日にちとその子の名前を書き入れました。
“誕生日表製作に子どもたちを巻き込んでみた“のです。
この取り組みに以下のような私の思いがありました↓
・進級したことの喜びを絵に描いて表現する
・自分が描いただるまが保育室内に掲示されることを喜び、作品やクラスに親
しみを持つ
・自分の誕生日を知ろうとする。それをきっかけに友だちの誕生日にも関心を
持つ
楽しい時も悲しい時も一緒に過ごしてきた子どもたちが、年長さんとして最後の1年を過ごす…。クラスとして団結力を高められたらいいなという願いと、自分はこのクラスの一員で、欠けてはならない大切な存在であることを感じてもらいたいと思っていたんです。
この活動自体はとても盛り上がり、新年度初日の進級したての子どもたちの気持ちをさらに膨らませることができました。「絵本のだるまみたいにひっくり返りっても良いよ〜」と伝えると、寝転んだだるまや逆さまのだるまも生まれ、子どもたちを巻き込んだからこその面白さが生まれました。
掲示する場所を変えてみた
そして、もう1つ。これまでと変更したことは、掲示する場所。
この年は子どもたちの視界に常に入りやすい場所に掲示してみたのです。
どういうことかは↓の図で説明します。
子どもたちが椅子を並べる場所と私の立ち位置の基本スタイルが図↑でした。なので私が前に立てば、自然と誕生表も視界に入ることになります。これまでは子どもたちの視線に対して左側にあったため、目に入る機会が少なかったのです。その結果、あるのかないのか分からない状態になっていってしまった(環境に溶け込んだ)のです。
場所を変えるだけで何か効果があったのかと思われるでしょうが、とても印象に残ったエピソードがあったんです。
あるゲームでのこと
夏の園外保育の際に、講師の方と体育館でゲームをしていました。そのゲームは“誕生日の生まれ順で並ぶゲーム“でした。
おそらく講師側は子ども同士で誕生日を聞き合うというコミュニケーションを促進するねらいだったのでしょうが、この時の子どもたちは少し違いました。
「〇〇君の誕生日は7月だよね」
「〇〇ちゃんの誕生日は2月だから後ろの方だよ」
と自分の誕生日だけではなく、友だちの誕生日まできちんと把握した状態でゲームを進めていったのです。中には19人全員の誕生日を把握している子もいました。この子どもたちの姿には圧巻で、まさに年度当初に設定した私の思いやねらいが見事にハマった瞬間だったのです。嬉しかったなぁ〜。
慣例となったことにこそ疑問を
冒頭でも書きましたが、誕生表などの壁面製作が保育者の業務負担を減らす観点で廃止の方向に舵を切っている園もあります。きっと、始まった時は理由があったと思うのです。ところが作ることが慣例となり、意味を考えなくなった時に、“これって必要あるのか?“となってしまい消えていってしまっている。
けれど私が意図を持たせて、一緒に作った誕生日表で、子どもたちは自然と友だちを大切にする心を育んでくれました。これはとても尊いことなのではないでしょうか。
意味をきちんと持たせられば壁面製作はまだまだ捨てたもんじゃない、というお話を現場保育士目線でお伝えさせていただきました。