「できない」ものを軽々に手放すな
誰もができないことは無くした方がいいと思っているが、できないことそのものも「自分自身の能力」であることは、あまり意識されていない。
つまり、できないことをなくすことは、自らの能力の一つを捨てることであるのを、私たちは、できないことをできるようにする際にはよく考えるべきということだ。
それが、もとに戻せるものなら問題がない。しかし、一度できるようになったら二度と「できない」ことに関しては、その失われる「できない」をもっと惜しんだ方がいいのである。
別に、できないことに価値を見いだせないのなら、無理にそう考える必要はない。だが、少なくとも「できない」は「できる」が「ない」ものではない。それは「できる」とは別に、「できない」のだ。私たちの中にある能力や特性や技術や知識や、生きている自分自身の一つの構成要素として「できない」がある。
それがもたらすバランスは、普段から意識されないことが多い。あるのに。欠かせないかもしれないのに。だから私たちは軽々と、できないことを無くそうとしてしまう。
自分のものや、他人のものですら。吟味せずに。勝手にいらないものと断じてしまう。
それが早計であることもあると、認識を整えておくことに、損はないはずだ。
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