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『法廷遊戯』五十嵐律人


僕は高校の文理選択で何も考えずに理系を選んだ。結果には後悔は無いけれど、過程には後悔している。当時の僕は文系の学問について何も分かっていなくて、だからこの選択は可能性を一瞥もせず捨てることと同義だった。文系の面白さを教えてくれるこの本を、高校生の僕に捧げる。---河村・拓哉の推し・文芸

本書を知るきっかけとなった、QuizKnock河村さんのコラムの一節だ。自分も何も考えずに理系を選び結果にも後悔はしていないが、果たしてその過程について思いを巡らす機会があっただろうか?と気づかされた。そういう意味でも非常に興味が湧き、本書を読んでみることにした。

以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。

ストーリーが進むにつれて発生する事象、その事象に関する法的な定義と論理、その論理に対する登場人物達の考察。文系の頭がいい人達の論理構成力、瞬時の言語化能力に圧倒され続ける。
そしてそれら全て、一字一句漏れることなく、全てエンディングの1パーツとして必要なものになっている。
読了後、こんな感覚に陥ったのは初めてだった。ミステリー小説が好きで、これまでの人生でそれなりの冊数を読んできた自負はあるが、そんな自分の推理など全く意味をなさないものだった。 主要な登場人物が全て、白になり、黒になる。しかも、美しく。
いわゆるラスト数ページのどんでん返しなどではない。ゆっくりと、1歩ずつ、着実に。ある意味追い込まれていく感覚。

主人公とヒロインの唯一のキスシーン。ここから始まる、一分の隙もないストーリー展開を、ぜひ皆さまもお楽しみ下さい。




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