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【妄想本棚:闇抱え男子編】こんな本読んでる人に好きって言われたらどうしよう!元書店員が本気出して彼氏の家の理想の本棚作ってみた。《シリーズ第2弾》

*この記事は、WEB天狼院書店で連載していたブログ「川代ノート」からの再掲です。(更新日:2018年1月)
*初出時はタイトルに「書店員」と記載していましたが、現在は書店に勤務していないため、「元書店員」としました。

みなさまこんにちは。川代です。
どうやら私は定期的に頭のおかしいことを書かないと気が済まない脳みその構造をしているようです。いやー、困った。
子供の頃から妄想は好きでした。ことあるごとに妄想を繰り広げていました。自分がお姫様になったら。ポケモンマスターだったら。絵描きさんになったら。海外に住んだら。かっこいいOLになったら。
まだ社会を知らない頃、純粋でまっすぐだった妄想は、「働く」という行為を経るごとに、次第に切実なものへと変わっていきました。ふらりと、パンパンにむくんだ足を引きずりながら池袋駅周辺を歩いているときなんかに、ふと突拍子もないアイデアが浮かびます。
あー、この信号を通り過ぎたときに肩がぶつかって、「すいません」って振り向いた相手が菅田将暉だったらどうしよう……。
「あっ、すいません」みたいな感じで、つけてるイヤホンはずしながら言うんだろうな。ジャージみたいなゆるゆるの服着てるんだろうな。イヤホンから聞こえた音楽がたまたま私が好きなマイナーなバンドの曲で、「あ、〇〇の歌……」とか思わず呟いたら、「えっ、好きなの?」とか言って食いついてくるんだろうな。そんなことしてる間に青信号チカチカしはじめて、赤信号になって慌てて二人で渡って、笑いあったりして、そこから恋が始まるんだろうな……。
と、そこまで考えて、あ、私疲れてるわ、今日は早く寝ようと家に帰る。そんな毎日です。
まあそんなわけで、日々むなしい妄想して溜まっているフラストレーションをぶつける先がほしいので、「妄想本棚」第二弾をやることにします!! いえーい!
 
*第一弾はこちら

【妄想本棚とは?】
本棚って人柄が出ますよね。本の選び方、並べ方、カバーのかけ方などなど。どんな本をどんな風に読むのかで、その人となりがわかります。「っぽいわ〜」となったり、「意外にこんなの読むんだ!」となったり。
この「妄想本棚」という企画は、他人の本棚の物色が大好きな元書店員の私が、「こんな本読んでる人と付き合いたい!」というテーマで選書してその本棚にイケメンの魂を宿らせようという目論見でやっております。

第一弾はわりと「クセのない人」という設定で妄想しましたので、今回はもう少しスパイスを効かせて「闇抱え男子」というテーマで考えていきたいと思います。
ええ、闇抱え男子です。闇を抱え、心に傷を持ち、ひねくれていて、世の中を穿った目で見ている男の子です。
こんなところで宣言することではないかもしれませんが、私そういう「俺なんて死んだ方がいい」系男子が大好きでして、心に大きな傷を負っている人をみると走って行って抱きしめたくなる衝動にかられるんです。
そういう闇抱え男子でかつ読書家なんていったらもう! もう最高! はい最高! ということで、また今回も趣味全開で選書していきたいと思います。頭から終わりまで「何言ってんだこいつ」感がすごいとは思いますが、どうか最後までお付き合いください。



さて、今回の本棚に宿っていただく妄想彼氏さんは、年下です。ええ、年下なんです。
まずはプロフィールから見ていきましょう。
 

年齢:22歳(大学4年生)
所属学部:文学部
血液型:AB型
趣味:なし
アルバイト:なし

いやー、このプロフィールを見ただけで、察しの良い方は、もうお分かりかもしれません。
この彼、人生迷走中です。無気力なんです。
そんな彼を、私はどうしても、どうしても養いたくなってしまった。
ええ、この彼、ヒモなんです。
バイトもしておらず、貯金もない。そんな彼ですが、ほぼ半同棲のような形で私の部屋に入り浸っています。
実家にもほとんど帰らずに私の部屋で何をしているのかと思えば、本を読んでいるんです。
と言っても、勉強をしているわけではありません。
文学部に入学し、大学2年生の頃までは一生懸命に勉強をしていた彼ですが、ある出来事をきっかけに、授業にほとんど行かなくなってしまったようです。
単位もちゃんととらず、バイトにも行かず、毎日ぼんやりと本ばかり読んで過ごしていた彼を、私は見捨てることができませんでした。
さて、そんな彼の本棚は、私の部屋の一角にあります。
 
注:これ以降川代の脳内妄想がスタートします。あくまでも妄想です。なお、この彼氏は染谷将太さんの顔面で脳内再生してください。


とにかくなんでも読むタイプ。普通の本屋も古本屋も図書館も行く無類の本好きです。私の部屋には彼の本を置いておくためのスペースがあって、彼は好きな本を気がむくまま詰め込んでる感じ。ちゃんと整理して並べるタイプじゃない。適当に読んだ本をそのままごちゃっと適当に突っ込むタイプですね。大雑把なところと神経質なところのバランスがすごいめんどくさい。で、私の本棚にある本を勝手に自分の棚に移動させたりとか、持ち出したりするんですよこの人! 

『終点のあの子』と『注文の多い料理店』が気がついたらなくなってて、「ねーあの柚木麻子さんの本知らない? また読みたいんだけど」とか聞くと、「あ、なんか俺持ってるよ。貸してあげよっか?」とか言って自分の本棚から持ってくる。いや貸してあげよっかじゃねーよ!! 何勝手に持ってってんだよ!! みたいな。ヒモのくせにめちゃくちゃ偉そう。それが彼です。
しかし、やはり本棚を見ていくと彼の闇が垣間見えます。
 
雑多に積んであるのは、ジャンルもバラバラ。
気になる本は適当になんでも読む彼ですが、文学部だったわりには文豪の作品はそれほど持っていません。なんでないの、と聞くと、「……親がすごい読めって言ってきたから、読みたくなくなった」とぽつりと言ってきます。じゃあ、なんで谷崎の『痴人の愛』はあるのか。
 
「うちの親、谷崎だけは大っ嫌いだったんだよね」
 
はい、ことあるごとに家庭環境に何かしらの闇があることを匂わせてくる彼であります。でも詳しいことは教えてくれない。情報はチョコ出しで言ってくるから話を聞いてもらいたい気持ちはあるんだろうけど、具体的なことは言わないあたり、だいぶこじらせててめんどくさい性格が垣間見えます。
そして平積みされている本の一番下にはエーリッヒ・フロムの名著『愛するということ』。これがあるあたり愛情の欠如を感じさせますね。いやー、抱きしめたい!
愛されることに飢えている彼は、自分の進路にも悩みを抱えています。どんな仕事がしたいのかわからない。そもそもこれから社会に出て行くのも嫌。できることなら一生ヒモでいたいけど、そんなの通用するわけない。承認欲求と現実の間に挟まれて日々悶々としているわけです。ひい!
あまりに自己肯定感が低いので、私が持っていた『嫌われる勇気』を貸そうとするも、「いや、そういうのはなんか違うんだよね」「今は読む時期じゃない気がする」とか言って読みません。めんどくせー!
 

 

でも知識を学ぶのは好きだから、教養系の本は結構読む。難しい本が苦手な私に科学系の本の内容を要約して教えてくれます。ライフシフトとかもめちゃくちゃわかりやすく説明してくれる。しゃべりだすと止まりません。「へえ〜、そういう話なんだ〜。私、頭の回転遅いから教えてもらえてよかった〜」とか言うと、「あはは、さきは頭悪いもんね〜」とか言ってなでなでしてくる。
歪んでるプライド! 虚栄心! 自己顕示欲! そういう歪んでる自分と葛藤しているところとか見ると本当キュンとしますよね。╭( ・ㅂ・)و̑ グッ
 
とはいえそんなめんどくさい彼にも一応ぼんやりやりたいと思うことはあります。それがコーヒーです。
 

コーヒーには一応こだわりがあるようで、私が仕事でクタクタになって帰ると、おいしいコーヒーをいれて待っていてくれます。「おかえり〜」と迎えてくれる染谷くんを見ていると心が一瞬にして癒されるので、ダメだとわかりつつも、ついこの男の子を飼っている状態をやめられないのです。
コーヒーを飲みながら、私たちは取り留めもない話をします。
「……ねえ」
「ん?」 

彼は、雑誌『スペクテイター〈31号〉 ZEN(禅)とサブカルチャー』をぱらぱらとめくりながら話半分で聞いています。
 
「大学、行かなくていいの」
「……」
「休学するにせよ、また授業出るにせよ、何かしら手続きとかいるでしょ」
「……」
「一緒に行ってあげようか?」
「……」
「……」
「……大学、行くと、思い出すから」
「え?」
「大学2年の、頃のこと」
 
それっきり、だんまり。何も言いません。
私はそれ以上聞くことができなくて、結局うやむやのまま。
この状態がしばらく続いています。何があったんだ、こいつには。過去にどんな暗い闇があるんだ! ちょこちょこ闇を出してくるわりには具体的に何があったのか教えてくれない。何なの? いつになったら教えてくれんの? 何? 失恋? 宗教勧誘? 親友の裏切り? どれ?
私はもう思いつく限りの闇を想像しますが、ただでさえ家族関係で傷ついている染谷くんの顔を見ていたら根掘り葉掘り聞くなんてことできるはずがありません。
こいつ本当どうにかならんのか? 卒業しないのか? ってかいつまでもこんな生活してていいの? と思いつつ、つい彼の面倒を見続けたくなってしまう。
「彼にはあたしがいないと!」と思ってします。
そして彼はそれだけめんどくさいやつでありながら、ときどき、本当にときどきこう言うのです。
「……ねえ」
「んー?」
それはだいたい、私が洗い物をしていたり、洗濯物をたたんでいたり、ぼーっとスマホをいじっているときだったりします。
「……好き」
そうボソっと小さな声で言ったかと思うと、ぎゅっと抱きしめられる。
「……離れて、いかないで」
いやー、あかんやろ。
これはあかんやろ! ずるすぎる!!
この感じですよ! 色々めんどくさいし歪んでるし闇抱えてるのにたまにデレてくる染谷くん! これはやばいですね。無理ですね。こういう人に好きとか言われたら本当やばいですね。あーもう結婚とかどうでもいいわ、あたしがこの子を幸せにするんだから!!! と気合が入りそう。





……はい。
いやー、趣味全開で行ってしまったために息も絶え絶えで、なんか「自分何やってんだろう」感がハンパないですが、いやー、それでも超絶楽しかったです。
もうこの本棚、染谷くん宿ってますもん完全に。就活もバイトもしてない染谷くんの魂が垣間見える。私には見える! 確実に見える。あー楽しい。
 
というわけで妄想本棚第二弾も、お付き合いいただきありがとうございました。
こういう系の闇抱え男子本当大好きなので、趣味が合う方、ぜひ語り合いましょう!
 
妄想本棚楽しいので、みなさんもぜひ自分の妄想を本棚にぶつけてみてくださいね〜〜〜!
 

今回の妄想本棚

  • 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)

  • 『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店)

  • 『ホーキングInc.』(柏書房)

  • 『檸檬』(新潮文庫)

  • 『注文の多い料理店』(新潮文庫)

  • 『終点のあの子』(文春文庫)

  • 『コーヒー語辞典: 珈琲にまつわる言葉をイラストと豆知識でほっこり読み解く』(誠文堂新光社)

  • 『スペクテイター〈31号〉 ZEN(禅)とサブカルチャー』(幻冬舎)

  • 『痴人の愛』(新潮文庫)

  • 『世界を変えた10冊の本』(文春文庫)

  • 『レトリック感覚』(講談社学術文庫)

  • 『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)

  • 『森の探偵——無人カメラがとらえた日本の自然』(亜紀書房)

  • 『自分探しと楽しさについて』(集英社新書)

  • 『愛するということ』(紀伊國屋書店)


おまけ


「あれ? 嫌われる勇気なんでこっちにあるの?」
「……え、あ、いや」
「もしかして読む気になった? ってかもう読んだ?」
「……」
「……その顔は、読んだな?」
「……」
「……感想は?」
「……めっちゃよかった」(超小声)
 

かわいいかよ!!!!!!


 おしまい。
 
 
 

ブログ記事のバックアップをせっせとnoteにも移行中です。
過去記事も日記の合間に掲載していきますが、お付き合いください!


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