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【資料】近現代

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#映画感想文

アナログ派の愉しみ/映画◎ウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー』

分断と復讐の
果てにあるものは
アメリカの建国以来の歴史において南北戦争(1861~65年)が特別重大なできごとだったのは、約62万人という戦死者数がのちの第一次・第二次世界大戦での合計を上まわっていることだけからも明らかだろう。この未曾有の内戦はまた、ハリウッド映画史に屹立するふたつのスペクタクル大作を生みだした。ひとつは『風と共に去りぬ』で、マーガレット・ミッチェルが1936年に発表した小説を

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あまりに人間的な「ブリキの太鼓」

あまりに人間的な「ブリキの太鼓」

第二次世界大戦後にドイツ語で書かれた文学でもっとも重要だとされている作品は「ブリキの太鼓」だろう。もう記憶が曖昧だが、たしか大学のドイツ語の授業でもその一部を読まされたような記憶がある。僕は集英社文庫の翻訳を買ったものの、何度も読みきれず、本の山に積んでいた。
というのも、3歳で成長することをやめた主人公オスカルが、太鼓を叩いて叫び声を上げてガラスを割りながら、戦前から戦後のダンツィヒ(現代のグダ

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知らないことは反省もできない / 「ディア・ハンター」

知らないことは反省もできない / 「ディア・ハンター」

3時間にも及ぶ大作なんて、よほどの作品でなければ観る気もしないだろう。
「ディア・ハンター」はそんな傑作の1本だ。
スラヴ系アメリカ人の若者3人がベトナム戦争へ出征し、それぞれ異なる人生を歩んでいくことになる様を描いたこの映画は、劇中のロシアンルーレットのシーンであまりにも有名になった。ちなみに、著名なジャーナリストから、ベトコンが捕虜とロシアンルーレットをしたなんて話は聞いたことがない、と批判さ

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