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【書評】うつ病になった棋士の回復記〜『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』(先崎学)

以前、書店で平積みになっているのをよく見るなあと思っていた時に、「世界一受けたい授業」にご本人が出演されているのを見て、興味を持って読んでみた本です。

『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』。著者はプロ棋士の先崎学さん。

我々の業界もうつ病が本当に多いので、他人事とは思えません。

1、内容

先崎学さんといえば、いわゆる「羽生世代」の一人である名棋士。

ある日、日本将棋連盟のホームページに突然の「先崎学・休場の告知」が。世間は、藤井聡太四段がデビュー29連勝を成し遂げ、空前の将棋ブームが起きていた頃。

実は先崎さんはうつ病と闘っていたのでした。

この本は、先崎さん自身がうつ病の発症から回復までを綴った、貴重な手記です。

2、私の感想

読みながらなんだか泣けて仕方がありませんでした。

ご本人曰く、「うつ病回復期末期の患者自身がリハビリも兼ねて書いたという、世にも珍しい本」とのこと。

本物のうつ病のことをきちんと書いた本というのは実は少ない、というのは本書にも何度も登場してくる先崎さんのお兄さんの弁です。

このお兄さんは精神科医をしていて、この方の支えがあったからこそ回復したんだ、ということがよくわかります。

お兄さんが毎日LINEで送ったという「必ず治ります」のメッセージはさぞかし心強かったことでしょう。

それにしても、うつ病は完全に脳の病気だということがご本人の語りからよくわかります。この辺、世間的にはまだまだ「心の病」だと勘違いされています。

「うつ病への偏見はなくならないよ」というお兄さんの言葉も重いです。

うつ病は回復してきたらきたでまた大変なんだ、ということもよくわかります。回復期は意外に危ないようです。

発症直後はまるでダメだった将棋が、回復に伴ってだんだん指せるようになっていく過程の様子は感動的でした。

いざという時に自分を救ってくれる「何か」を持っていることのありがたさを感じました。

エピソードが少なすぎて困った、とご本人は書いていますが、全くそんなことはありません。

発症から回復までの出来事の全てが貴重なエピソードだと思います。

うつ病についてもっと正確に理解してもらうために、映画化したらいいのでしょうか。「ツレうつ」も映画化されたことですし。

テレビに出演したのも、うつ病への理解を広めるという意図があってのことなのかな、と思いました。

※文春オンラインでマンガにはなっていました。

棋士としての先崎さんを応援したくなります。

3、こんな人にオススメ

・将棋が好きな人
「あの先崎さんが……」と思うのではないでしょうか。

・うつ病の人やその家族
共感もできるでしょうし、希望も持てると思います。

・仕事が忙しすぎる人
うつ病はいつ誰がなってもおかしくない病気です。働き方を考えるきっかけにもなります。

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