目が覚めたらオストメイトになっていた。当事者になって気づいた大変なこと
ある日突然、起きたらお腹から腸が出ていた。
……そんな事態が起こったら、あなたはどうしますか?わたしだったら、とりあえずすごく驚く。そして事実は小説よりも奇なり、つい先日、そんなことが実際に我が身に起こったのです。いや本当に。なんだったら今も出てるし、腸。
すごく雑な説明をすると、この「お腹から腸が出ている人」は、オストメイトと呼ばれています。つまりわたしは、目が覚めたらオストメイトになっていたのです。
せっかくオストメイトになったので、
えっ、オストメイトって何?突然なるようなものなの?
オストメイトはどんなことに困ってるの?
何かできることはある?
と思っている方に向けて、オストメイト当事者の立場から、オストメイトについて知っておきたいことや大変だと思っていること、配慮してもらえたら嬉しいことなどについてまとめていきたいと思います。
ただし、あくまで一個人の気づきや感想ね!こんな人もいるんだな〜程度にお読みいただければ幸いです。
オストメイトとは
まずは「そもそもオストメイトって何なの?」という基本から始めていきましょう。
大丈夫、わたしも自分がオストメイトになるまで、恥ずかしいほど何も知りませんでした。「オストメイト??なんかそういうトイレがあるよね?」ってくらい。
オストメイト=人工肛門または人工膀胱になった人
オストメイトとは、人工肛門または人工膀胱を有している人のことです。
Wikipediaの説明がわかりやすかったので引用すると、
とのこと。「開口部」というまろやかな表現がされていますが、実際には、おへその横あたりから腸の一部がひょこっと出ています。怖いよね。わたしも怖い。
しかも、人工「肛門」とか人工「膀胱」だとか言うくらいなので、たとえば人工肛門を造設したオストメイトの場合は、お尻の穴じゃなくて、お腹の腸から排泄するようになります。この、お腹から出ている腸が人工肛門というわけです。現代医療すごすぎる。
人工肛門は、専門用語(?)で「ストーマ(またはストマ)」と呼ばれています。わたしは人工肛門を造設したオストメイトなので人工膀胱の事情には明るくないため、この記事における「ストーマ」は人工肛門を、「オストメイト」は人工肛門保有者をそれぞれ指していると思ってください。人工膀胱の方、ごめん〜。
わたしがオストメイトになった経緯
Wikipediaにある通り、オストメイトは癌(をはじめとする病気)や事故によってなり得るものなので、つまり、誰しもがある日突然オストメイトになる可能性があるわけです。
わたしの場合は、2024年のGW最終日にいきなり腹痛で倒れて、なんとか救急車を呼んで病院に運ばれて、検査したら「腸に穴が開いてますね」ということで即手術、からの大腸がんステージ3確定&オストメイトに転生!という流れでした。
全身麻酔で手術して、起きたらおへその横からなんかピンク色の内蔵が出てた。なんだこれ…と思ったかどうかは正直覚えていません。麻酔が切れてから動くたびに痛くて、それどころじゃなかったからな!!
もちろんストーマは勝手に造られたわけではなく、手術前に同意書へサインした上での造設です。とはいえストーマ造設 or DIEだから、この状況でオストメイトになることを拒否できる人は、基本的にいないでしょう。
余談ですが、手術の前に先生が「大丈夫。絶対に治すから」って言ってくれたの、思い出すだけで今でも泣いちゃいそうになる。難しいことはわからないけれど、医師の立場上「絶対に」って言葉はあんまり使っちゃいけないような気がするんだよね。それでも、不安と痛みで泣いてるわたしに対して、先生はあのときそう言ってくれた。しかも「治るから」じゃなくて「治すから」って。大げさかもだけど、その言葉だけでこれからも頑張って生きようって思った。本当にありがとうございました。
ストーマ装具とストーマの種類
そんなドラマのような美談を経てオストメイトになったからには、早くストーマからの排泄に慣れなければならない。しかしここで問題なのが、腸には筋肉がないということ。筋肉がないとなると、お尻の肛門のようには締められないため、オストメイトは自分の意思で排泄をコントロールできないのです。なんということでしょう。
ストーマ装具とは
そこで活躍するのが、ストーマに装着する「ストーマ装具」です。こればかりは読むよりも見てもらったほうが早いので、説明を諦めて画像を貼る。生々しい画像は載せないので安心してください。
こんな装具を、
こんな感じで、ストーマを包むようにお腹に貼ります。
(いらすとやって、オストメイトのイラストまであるんだ…すごい)
すると、ストーマからの排泄物はパウチ(袋)の中に溜まるので安心!あとはお手洗いへ行ったときに、パウチのキャップを開けて中身をトイレに捨てるだけ!
……安心…?本当に安心なのか……?出先でストーマ装具が外れた日には、もはやちょっとしたテロなのでは??今でこそ、自分に合った装具を正しく装着さえできていれば、ちょっとやそっとでは外れないことがわかってきましたが、仕組みについて初めて知ったときは、不安でしかありませんでした。実際、入院中に1回外れたし。
あと、ストーマ装具のパウチって基本的に透明なんですけれど、初めて装具を見たときはそれもなんか嫌だった。自分の排泄物が透け透けなわけじゃないですか。でも、まあこれは仕方ないとは思います。透明じゃないと、どれくらい溜まっているのかわからないから。玄人向けに色のついたストーマ装具もあるようですが、わたしはその域まで辿り着けるかな、どうかな〜。
ストーマ装具の交換方法
ストーマ装具には、肌に優しいもの、ツーピースに分かれているものなどさまざまな種類がありますが、いずれもずっとつけっぱなしにするわけではなく、1〜2日おきとか3〜4日おきとか、定められた頻度で交換する必要があります。この交換がね、まあ、めんどくさいんですよ。
専用のはくり剤を使ってお腹から装具をはがす
ストーマや、まわりの皮膚を洗って拭く
新しい装具の「面板(お腹に貼り付けるシール箇所)」を、ストーマのサイズに合わせてハサミで切る
お腹に傷や凹みがあれば、粘土状の皮膚保護剤で埋める
ストーマを包むように、面板をお腹に密着させて装具を貼り付ける
以上が交換の大まかな手順なのですが、先述の通りオストメイトは自分の意思で排泄をコントロールできないので、交換している最中に排泄してしまうこともあるわけです。
わたしは、たとえ自分の排泄物であっても、できる限り触りたくはないんですよ(だいたいの人はそうだと思うけど)。なので、少しでも排泄を抑えるために交換の2時間くらい前から何も食べないようにしているのですが、その準備を含めてめんどいなと。ガーゼもめちゃくちゃ使うし、なんだったら使い捨ての手袋も買ったよね。ちょっと神経質なのかな、みんなどうしてるんだろ。
ストーマの種類
ストーマの種類についても紹介します。
わたしのストーマは「一時ストーマ」といって、やがて閉鎖される運命のストーマです。ストーマを閉鎖するというのは、つまり出ている腸を再びお腹の中に入れて、人工じゃない肛門からの排泄に戻るということ。一応、抗がん剤治療が終わったらオストメイトじゃなくなる予定で、順調にいけば2024年末にはストーマとお別れするんじゃないかな。
反対に、閉鎖する予定のないストーマは「永久ストーマ」といいます。永久ストーマのオストメイトは身体障害者4級(状況に応じて1級または3級の場合も)に該当するため、ストーマ装具の給付や、等級に応じた控除や補助が受けられるようです。一時ストーマは障害認定されないんだって!ケチ!(?)ストーマ装具、1つ1,000円近くするので、一時ストーマにも補助が欲しいなというのが本音です。
また、ストーマを造設した位置によっても、結腸なら「コロストミー」、回腸なら「イレオストミー」といった呼び方があるみたいです。わたしは大腸がんの中でもS状結腸がんという病名がついているので、結腸っていうくらいだし、コロストミー?と思っていたのですが、実はイレオストミーであることが術後1ヶ月経ってからわかりました。たぶん看護師さんは教えてくれてたと思うんですけど…まあ、用語がわからなくても日常生活に支障はないから……。
オストメイトトイレはなぜ必要か
さて、オストメイトの説明をするにあたって、切っても切り離せないのがトイレです。
オストメイトがどういうものかは知らなくても「オストメイト」という言葉だけは聞いたことがある人、けっこう多いのではないでしょうか。少なくとも、わたしはそうでした。多目的トイレに「オストメイト対応トイレ」があるからね。それで「なんかオストメイトっていう病気?があるんだな〜」って思ってた。今考えると無関心にもほどがあってなかなかお恥ずかしいのですが、でも、わたしみたいな人って多いと思う。
オストメイト対応トイレ、こんなやつね。
ここで問題です。オストメイトは、オストメイト対応トイレでしか用を足せないのでしょうか?
答えはノー。一般的なトイレも全然使えます。
パウチに排泄物が溜まったら、パウチの下部にあるキャップまたは開口部を開けて、排泄物をトイレに捨てる
というのがパウチ処理の一般的な手順なのですが、つまりパウチの中身を排出できさえすれば問題ないので、一般的なトイレでも目的は十分果たせるわけです。
じゃあ、オストメイト対応トイレとは何なのか?いったいなぜ必要なのか?
想像してみてください、お腹からぶら下がっているパウチのキャップを開けて、太ももあたりの高さから排泄物をトイレに流す(造設位置にもよるけれど、オストメイトは水様便になりがち…)という行為のディテールを。高い位置から排出することで、便器に溜まった水やら排泄物やらが跳ね返るのです。最悪。無理すぎ。
なので、多くのオストメイトが普段どうやってパウチの処理をしているのかというと、跳ね返りがないように、ぷるぷると中腰になりながらトイレと向き合っているわけです。人知れずひっそりと行われる悲しい筋トレ……。
そんな問題を解決すべく、オストメイト対応トイレは立ったまま処理ができる高さに設置されています。
わたしにとってオストメイト対応トイレは「なくてもなんとかなるけれど、あったらありがたいもの」という位置付け。ただし、これはわたしが39歳とオストメイトにしては若くて健康体(癌だけど)だから言えるのであって、ご年配の方だったり、癌が進行して筋力が低下している方だったりは、たぶんすごく体に負荷をかけながら処理をされているんだと思います。
そう考えると、オストメイト対応トイレはあればあるだけいいことには違いない。しかし設置状況としては、最も普及が進んでいるであろう東京23区の駅や公共施設、商業施設などにおいても、まだまだ改善の余地がある印象です。ストーマ造設の手術をした病院にすらなかったしなぁ。
とはいえ、導入だってタダじゃないわけだし、どこまでマイノリティに配慮するべきかは難しい問題だとも思う。パッと浮かばないけれど、もっと喫緊の配慮が求められている問題があるような気もするし。
皆さまの街ではどうですか?今度、多目的トイレを使う機会があれば、オストメイト対応トイレが設置されているかどうか、ぜひ見てみてください。
オストメイトトイレの水は汚い?
これについては、結論から言うと、蛇口から出る水は手洗いの水と変わりませんのでご安心を。ただし、流し台はトイレの便器と同じようなものなので、もし間違って触れてしまったときは必ず手を洗ってください。
間違ってオストメイト対応トイレで手を洗ってしまった人って、どれくらいいるんだろうね。わたしの友だちは、新幹線で間違って使ってもうたわ!って言ってました(新幹線のオストメイトトイレの画像を見たら、たしかにかなり紛らわしいなと思った)。
オストメイトになって大変なこと
トイレでのパウチ処理以外にも、オストメイトになってみて気づいた大変なことはまだまだあります。思い浮かんだことをざっと羅列してみます。
トイレへ行く頻度が増えた
これはまあ、オストメイトに限らず、お手洗いが近い人も同じ悩みを抱えているとは思うのですが。少なくともわたしは、お手洗いへ行く回数が明らかに増えた。
パウチが重くなったり膨れたりすると、パンツ(ズボンという意味での)がきつくなったり、なんか動きにくくなったりと、さまざまな弊害が生まれます。なので、ちょっとでも溜まったなと思ったら、できる限りお手洗いへ行っておきたい気持ちがある。
トイレが長い
そのままです。今までは座って済んでいたことに、パウチの処理という手間が加わるため、お手洗いに滞在する時間は必然的に長くなります。Chu!トイレ長くてごーめーん!
食べるのも遅い
お手洗いだけでなく、食べるのもかなりゆっくりになります。これは、オストメイトになるにあたって腸の手術をしているわけで、すなわち腸が切られていたり弱っていたりで詰まりやすいので、あんまりガツガツ食べられないんですよね。現にわたしも、オストメイトになってから腸を詰まらせて、せっかく退院したのに再入院してしまった経緯があります。医療費〜!!!
もう怖いからさ、ひと口20回は噛むよね。この前カレーを食べる時間を測ったら、45分もかかってた。昼休み終わっちゃう。
食べる量やタイミングに気を遣う
そもそも人という生き物は、食べると排泄する仕組みになっています。わたしは小学校を卒業しているので、そのことを知っています。ふふん。
なので、これからしばらくお手洗いに行けないな、行きたくないなというときは「食べない」ということが有効な解決策になる。たとえば、これから出勤するとか、しばらく作業に集中したいとか、それこそ寝る前だとか、そういうときは食べなければいいわけです。
でもさ、これって言うのは簡単だけど、なかなかつらいじゃないですか〜!わたしも人なのでお腹が空くし、もっと食べたい!今食べたい!というときだって普通にあります。しかし、それを自制心を持ってコントロールしていく必要がある。
しかも、そこまでしても絶対に排泄を抑えられるわけではないので、あとはもう体調とストーマの気分次第。運ゲー。
着る服を選ぶ
お腹にストーマ装具がついていて、しかもそのパウチが膨らむこともある都合上、着る服はかなり選ばなければならなくなりました。
少なくとも、体のラインが出るようなパンツやスカートは履けなくなった。手持ちのボトムスの半分ほどは、ストーマを閉鎖するまで履けないことが確定しました。悲しすぎる。でも、今年一番のお気に入りであるユニクロのタックワイドパンツはなんとか履けています。これが履けなかったらふてくされて外出しない勢いだった。ユニクロはいつだって神。40周年おめでとうございます。
排泄音が恥ずかしい
これ、本当に「わーっ!」という気持ちになるのですが、ストーマからの排泄時にお腹が鳴ることがあるんですよ。音としては、お腹が空いたときに鳴る音に近い感じ。あと、たまにポヨヨ…とか謎の音が鳴って、何?!ってなる。
街や飲食店など、ある程度賑やかな場所でその音に気づく人は少ないかとは思いますが、オフィスや美術館、図書館など、BGMが流れていないような静かな場所だとたぶんバレる。わたしがオストメイトであることは、おそらくはたから見てわからない分、周りの人からは「この人すごいお腹空いてるんだろうな〜」と思われているはずです。
熟睡できない
わたしはもともと眠りが深いほうではないのですが、オストメイトになってからは、輪をかけて眠れなくなりました。「わ、漏れてないかな」と夜中に必ず起きてしまう。女性の方は、生理中の睡眠事情をイメージしてもらえたら。
うつ伏せになれない
ストーマやパウチが潰れてしまうので、オストメイトは基本的にうつ伏せにはなれません。だから、うつ伏せになりながら肘をついてスマホをいじるという、定番の怠惰ポーズがとれない。でも、その体勢が健康にいいとは思えないので、ある意味よかったのかもしれない。
人に裸を見せにくい&恋愛が始まりにくい
今わたしにはパートナーがいないため、幸か不幸か、裸を見せるような相手はいません。パートナーとはいえ、あるいはパートナーだからこそ、ストーマのついた裸や排泄物の入ったパウチを見せることに対して抵抗感はあるよね。
ただ、パートナーがいないという状況が幸か不幸かは、本当にわからない。なぜなら、オストメイトはおそらく、新しい恋愛を始めにくいからです。たとえば、わたしは退院後にノリで某マッチングアプリに登録したのですが、マッチして少しやり取りした後に癌のことやオストメイトであることを伝えると、おもしろいほどに相手からの返信がパタリと途絶えます。仲良くなる前なのでダメージは軽いものの、こうも続くとさすがに傷つきはするよね🖕
まあでも、たしかに重いよな〜。事前に伝えるのが誠意だと思ってるんだけど、いまだにコミュニケーションの正解がわからない。最終的に、めんどいなと思ってプロフに書きました(そして激減する“いいね”)。
というか、今気づいたんだけど、カラダ目的の人々…いわゆるヤリモクを排除するために「しばらくオストメイトなんだ🥲」と伝えるのは、かなり有効な策かもしれません。魔除けのおまじないとして使っていいよ!いや、だめか?わかんない!
一応、ありがたいことに、本当に少しの人とは今でもやり取りが続いています。人間捨てたもんじゃないね。まだ誰とも会ってはいないけれど、なんかすでに満足しているかもしれない。そして一向に始まらない恋愛……。
オストメイトが配慮してもらえると嬉しいこと
オストメイトになった身として、配慮してもらえたら嬉しいことについても触れたいと思います。
配慮してほしいことは人それぞれ
結論から言うと「配慮してほしいことって、なんかある?」と聞いてもらえたら嬉しい。それだけです。また、オストメイトはオストメイトで、配慮してほしいことがあれば自分から伝えるのが理想的だとも思います。
アレルギーを例に挙げるとわかりやすいかもしれない。たとえば、人にお店を選んでもらうシチュエーションで、
「アレルギーとか苦手なものはある?」
と、さらりと聞いてくださる方、時々いるじゃないですか。時々でもないか、最近は8割以上は聞いてもらえる気がする。ありがたすぎ。もちろんわたしも聞く。で、聞かれたら「エビとかカニとか、甲殻類のアレルギーで🙏」などと返しますよね。そしたら、
「わかった!ちょっとでも入ってると厳しい感じ?」
「いや、まるごと食べない限りは全然大丈夫!」
のようにアレルギーの度合いを確かめるやり取りがあって、お店選びに至るわけです。
でも本当は、選んでもらう側が「お店選びありがとう!わたし、エビとかカニとかの甲殻類アレルギーなんだけど、まるごと食べない限りは大丈夫だから!」と自己申告しちゃって、相手に質問の手間をかけさせないのがスマートだよね、って話。
聞かなきゃわからないことは相手に聞く
言わなきゃわからないことは自分から言う
アレルギーでもオストメイトでも何でも、配慮に関しては、これに尽きると思っています。
オストメイトであることを知られたくない人もいる
そして大切なことですが、さまざまな事情からオストメイトであることを隠している人も、世の中には少なからずいるはずです。
だから、本人からの申告や許可がない限り、無理に聞き出したり、アウティング(本人の了解なしに言い広めること)したりするのは絶対にやめとこう。それがたとえ配慮のためであったとしてもね。
わたしがたまたま過度にオープンなだけで、みんながみんなそうじゃない。オストメイトに限らず、その人の心や身体について、どこまでどのように伝える/伝えないか決める権利を持っているのは、その人だけです。
オストメイトへの配慮の例
ちなみに、あくまでわたしが配慮してほしいことを挙げるとしたら、
映画館はちょっとつらいかも(途中でお手洗いに立ちにくいのと、ストーマの排泄時にお腹が鳴ってしまうことがある🤫)
基本的に運動は無理(パウチが揺れて外れるんじゃないかと心配)
大盛り系や食べ放題は厳しいね(まだ量が食べられないので)
ラーメンや定食屋など、回転率を重視するお店もちょっと申し訳ない(食べるの遅すぎ問題)
温泉やサウナは、個室または貸し切りじゃないと入れない…というか、一人でしか行かないと思う
和式トイレしかないところや、お手洗いに行けないところは遠慮したい
ぐらいでしょうか?
ただし、本当に「あくまで今のわたしの場合」です。オストメイトでも映画を観たり運動したりする人は全然いる。わたしもストーマや装具の扱いに慣れたら大丈夫になるかも。ごはんも退院して間もないから無理なだけで、そのうち食べられるようになるはずだし。
温泉やサウナに関しては、シンプルにわたしが嫌なだけです。一応、これらの施設がオストメイトであることを理由に利用を断るのは、法的に適切ではないとされています。
オストメイトは温泉に入っていいのか問題
でもさ〜、温泉や銭湯、サウナなどの公共の場で堂々とストーマ装具を見せている人がもしいたら、わたしはちょっと…いや、かなり引いてしまうと思うんだよね。
ここで勘違いしないでほしいのは、ストーマ装具が入浴によって外れる可能性を危惧しているわけではない、ということです。
正しく装着したストーマ装具がいきなり外れる可能性は、まずないと言っていいように思います。少なくともわたしは、装具をつけた状態でほぼ毎日シャワーを浴びて(ほぼ…?)(風呂キャンセル界隈)、たまにはお風呂にもゆっくり浸かって、それでも装具が外れたり、外れそうになったりしたことは、ただの一度もありません。ストーマ初心者のわたしでも失敗してないんだから、熟練者の皆さまはもっと安定感があるのでは?
ただし、いつでも正しく装着できるとは限らないし、外れる可能性が0%ではない以上、公共の入浴施設において周囲の不安にはオストメイト側が配慮すべきだとわたしは思う。そして何より、外れる外れないじゃなくて、そもそもわたしは人の腸や排泄物を見ながらお風呂に入りたいとは思えない。ごめんだけど、生理的に無理。そして自分がそう思う以上、人に不快感を与える存在にはできる限りなりたくないので、わたしは透明なパウチをぶら下げた状態で、温泉や銭湯、サウナなどへ行くことはありません。行くんだったら個室か貸し切り。
でもさ、温泉やサウナが好きなのにオストメイトになった人は、きついよね。その気持ちはすごくわかる。わたしもサウナが好きだったので、気軽に行けなくなってしまって本当に悲しいです。誰しも、なりたくてオストメイトになったわけじゃないんだ。だからこそ、特に永久ストーマの人の気持ちは、できる限り尊重したいとは思う。
さっき言ってたことと矛盾してるじゃん!って思われるかもしれませんが、どっちも本当の気持ちなんです。だってさ、もし自分が温泉で透明なパウチをぶら下げたオストメイトと一緒だったら、もし自分が温泉好きなのにオストメイトになったとしたら、って想像してみてくださいよ。
世の中には、ストーマ装具ごと覆う肌色の防水シールがあるみたいなので、オストメイトはそういう補助具(?)をうまく活用できたらいいよね。でも、それだって安くはないし、貼ったところで周りの人が心配になってしまうのもわかるから、永久ストーマの人へは、貸し切り温泉とか個室サウナの利用補助があってもいいと思う。国とかから。
話がとっ散らかった。とにかく。
わたしは貸し切りや個室じゃない限りは、温泉や銭湯、サウナ施設には入らないし、もしストーマや排泄物が見える状態で入る人がいたら「まじか」と思ってしまうけれど、そういう個人の主義や感情とは別に、その人を責めはできないよね……というのが、この問題に対する今のところのわたしの答えです。無論、みんなが同じ考えであるべきとは、まったく思いません。
ストーマ、キモい問題
ストーマのこと、見たくないだの生理的に無理だの、散々ネガティブに言ってごめんなさい。でもストーマって、実際ビジュアルがそこそこアレなんですよ。
病院からもらった『はじめてのストーマ』みたいな冊子には「名前をつけると愛着が湧く人もいるようです」とか書いてあったけれど、裏を返せば、そうでもしないと「なんで、こんなよくわからん内臓がお腹に……」としか思えない、ということだと思うんです。
わたしは自分のストーマのことを親しみを込めて「金玉」と呼んでいますが、実物はなんかふよふよ動くし、もっとリアルな内臓感があります。というか腸です、普通に。腸以外の何物でもないです。腸がお腹から出ています。しかも2個(個…?)も。だいたいの人は1個なのに。なんで???
でも、当事者は自分のストーマのことをああでもない、こうでもないと言う権利がありますが、第三者にその権利がないことについては、くれぐれもご留意を。
たとえば、何度もお見舞いに来てくれた気の置けない友人との会話において、
わたし「ストーマ、キモ可愛く思えてきた」
友人「成長じゃん」
わたし「せっかくだから1個あげるよ」
友人「あ、すごくいらないです〜」
は全然あり(わたしはね。嫌な人は嫌だと思うよ)。でも、
「オストメイト、キモい」
「人工肛門とか絶対なりたくない笑」
などと、主語の大きなネガティブ発言をしてしまう人がもしいたら、わたしは全力で「えー、大丈夫そ?」と思います。
外見と一緒よ。自分で「目がコンプレックスなんだ」って言うのはいいけど、人に対して「○○ちゃんの目って変だよね〜笑」って言うのは絶対に違うじゃん?インスタで裏垢作ってせっせとクソみたいなコメントをしちゃうタイプか?あと、オストメイトに関しては、いつでも誰でも、ある日突然転生する可能性はあるからさ。現に、わたしがそうだったように。
日本のオストメイト人口
日本におけるオストメイトの人口は、正確な統計がないため、推定でしかわかっていないらしいです。そんなゆるい感じなんだ。推定数としては、
というデータを見つけたので、とりあえず30万人いると仮定、で、日本の人口は1億2263万1432人(2024年)とのことなので、日本では約409人に1人がオストメイトということになります。
日本の人口は減る一方で、自分や周りの人が歳を重ねるごとに癌にかかる確率が上がることを考えると、これを読んでいる方がオストメイトと出会う可能性、そして自身がオストメイトになる可能性は、生きている限りどんどん大きくなっていくと思う。だから、オストメイトってどんなものか、知っておいて損はないんじゃないですかね。
最後に、この記事について
とはいえ、別にわたしは「もっとオストメイトへの理解を!オストメイトが生きやすい社会を!」みたいな大義があって、この記事を書いたわけではありません。ただ、わたしはたまたまライターの端くれだったから、自分がオストメイトになってみて知ったこと、思ったことを書いておきたかった。それだけ。
でも、オストメイトに限らず、できるだけ多くの人が生きやすい社会になったらいいな〜っていうのは普通に思ってるよ。その実現のためにも、まずは知ることが大切な一歩だとも思うし。なので、この記事が誰かの知識や気づきに少しでもなってくれたら幸いです。
そしてオストメイトの方へ、もし不快な思いをさせてしまっていたら、本当にごめんなさい。この記事は「オストメイトってこういうもの!こうあるべき!」という話ではまったくなくて、あくまでわたし個人の気づきや考えに過ぎません。私は/俺はこう思うよという意見があれば、可能な範囲でぜひ発信していただけたら、もっと誰かの気づきの手助けになるんじゃないかなと思います。
ではでは、長かったのに最後まで読んでくれてありがと!よかったら、スキ(ログインしなくてもできるし、誰がしたかはわからないようになってるよ)とかフォローとかシェアとかしてもらえたらとっても嬉しいです。わたしに興味を持ってくださった方のために、人気記事も置いておきます。
なんかさー、大変なこともあるけど、お互い頑張ろうね。あるいは、頑張らなくてもいいからぼちぼちやってこうね。「みんな頑張ってるんだから」ってノイズは無視していいから。それが成り立つんだったら、みんなが頑張ってないことは頑張らなくていいことになっちゃうし、自分が頑張ることくらいは自分で決めてこ。とりあえず、わたしは今日はこれを公開できたから上出来。偉すぎ。超天才。こんな長い文章を読み切ったあなたも今日は100点満点です。
これを読んでくれたすべての方に愛を込めて🫶
かわむらまみでした!またね!