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書評

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#歴史

批評の課題——柿木伸之『燃エガラからの思考──記憶の交差路としての広島へ』書評

批評の課題——柿木伸之『燃エガラからの思考──記憶の交差路としての広島へ』書評

 石原吉郎、パウル・ツィラーン、原民喜、殿敷侃、そしてベンヤミン。本書において引用されるのは、みな歴史的経験によって生存を脅かされ、多くは自死に至った者たちである。各々の経験は第二次世界大戦中のものだという共通点を挙げられるものの、それぞれにまったく質の異なる出来事だった。本書が示す批評の力は、それらに布置を見出し、まったく質の異なるものの連帯を描き出す点にある。

 星の一つひとつは小さな光でし

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