大河「光る君へ」(42)川辺の誓い
※タイトル画像は実家の工場。お蔭様でRENEW大盛況だったようです。感謝です!
季節のガテン仕事も無事終了、やっと来た秋を満喫しております。ただひとつ心配なのはこの大河が終わってからのロス。うわあああんこれから何を楽しみに日曜夜を過ごせばいいのおおお。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)
侍「うわああああん右近ちゃあああああん!」
右「なあに侍従ちゃん。まあ予想通りだけど落ち着いてね」
侍「なんで?!なんで右近ちゃんはそんな冷静なの?!ひっさびさ!のまひろちゃん道長くんのLOVE炸裂攻撃でもうアタシ、キュンキュンしすぎてしにそうなのにイイイ!!!」
右「ハイハイどうどう。うん、そこは認める。三条天皇との色々やら息子の出家やら何やらで道長くんすっかり折れちゃってたもんね。まひろちゃんに呼ばれた時のあの表情ヤバかったわ。元カレにあんな顔されたら流石に放っとけないわよね」
少「まひろさんに気づく前の、柱にしどけなく寄りかかったお姿もとんでもなく破壊力ありましたわ……そこからの生気を取り戻す流れも含め(うっとり)」
王「わかる、まさにあれこそ『しどけなし』よね。威厳も気どりも何もない、全身の力が抜けて無防備状態なんだけど基本お品が良いから『だらしない』には遠い。それどころか普段は内に隠れてる色気が一気に大放出、みたいな」
侍「王命婦さんそれ!!!キラキラ☆オーラの大盤振る舞いグレイトスペシャルサービスタイムってやつよ!!!」
右「ひっさびさに聞いたわキラキラ☆オーラ。道長くん、侍従ちゃんが最推しのヒカル王子限定フレーズ使っちゃうくらい輝いてたってわけね」
少「まひろさんの光る君はやはり道長さまただお一人だったんですね……遠い日の川辺の景色と重なって、胸がいっぱいになりました」
王「まひろちゃん、そっと涙拭いてたわね。くったりしてる道長くんの姿見た瞬間に。長い間封じ込めてた積年の想いが溢れたのね」
侍「もうねーもうねー、二人穏やかーに話してるのに内容がメッチャクチャ情熱的なのがさあ……『俺より先に死んではならん』てさだまさしかーい!関白断った道長くんが宣言しちゃうんかーい!って脳内ツッコミしながら、ちょー感動しちゃって!しかもまひろちゃんの『生きてください』で道長くん号泣するし!すごくすごく我慢してたんだねー辛かったんだねーって……うあああああん!アタシどうしたらいいのおおお!」
右「どうどう侍従ちゃん、まあわかるメッチャわかる。あとさ、まひろちゃん、二人で流されちゃいます?って言った拍子に創作の神が降りてきちゃってたでしょ?あの一瞬、道長くんのこと頭からすっ飛んで明らかに別世界を見てたよね。『死んではならん』セリフこのすぐ後だからね?これ、こういうとこがまさに道長くんを永遠に惹きつけてやまないまひろちゃんなわけでさ」
少「胸熱ですわ……あのお二人の人生が、愛が、積み重ねた喜びも悲しみも苦しみも全部ひっくるめて『宇治十帖』という作品を世に生み出す糧となるなんて」
王「そうね。ドラマとはいえ本質に迫ってると思う。実際、源氏物語は紫上の死で事実上終わりだったのよね。紫式部さんは、今回の道長くんと同じような『紫上がいなくては生きていけないヒカル王子』を描き切って、一旦筆を置いた。おそらく直後はロスもあったと思うのよ?それを乗り越え、満を持しての『宇治十帖』スタート……まさかこういう展開で持ってくるとはね。脚本の妙も極まれり」
侍「ロスといえば、大河もあと一か月少々なんだよね……アタシ、耐えられる気がしない……(ぐすぐす)」
右「何言ってるのまだまだよ。双寿丸がどうなるかドキドキもんだし。心配だわー大宰府行くとか言っちゃってるしさ、大体フラグなのよねそういうの。わかってんのよ。ふん、負けるもんですか。いい加減学習したわ大河の無慈悲さ」
少「賢子さん……あまりお辛い目に遭ってほしくないですわね」
王「どんなことになろうと、すべては人生のいちページ。最後までしっかり目エかっぴらいて見届けるのよ。そう、真のファンならね!」
侍「王命婦さんがガンギマリオタクみたいになっちゃったー!」
右「ロス不安にめげず来週もお楽しみにー!(やけくそ)」
今回も政治闘争テンコ盛りでしたねー。過去に前例を作ってしまった一帝二后。道長の娘妍子をまず中宮にし、それから娍子を皇后に、と本命を後出しするやり方はなかなかの手練手管です。娍子の立后(本宮の儀)と妍子の参内の儀が同日に重なり、殿上人の殆どが道長に忖度して娍子の方を欠席したというのも、ああして映像で見るとインパクト大ですね。史実らしいけど、一体ああいうえげつないやり方で留飲が下がるものだろうか。ドラマの道長の性格ならば、心身の調子を崩すのも必定という気がします。
一方、今回の実資さんは中々格好良かったですね。誰も行こうとしない娍子の本宮の儀に出席し立后の上卿まで勤めてエライ。
「天に二つの日は無く、土に二つの主は無い。であるから巨害(道長)を恐れることはない」(小右記より)
実際には道長と対立するのは避けたかったようで、日記でしか言いたいこと言えなかったみたいですが、それでもこういった公平な行動をした、その勇気と気概には素直に感服します。
さて道長の辞表、いわゆる致仕の表は源氏物語中でも何度か出てきます(慰留され続投すると致仕大臣と呼ばれたりもする)。いやーコレが実写で観られて大感激ですわ。ちなみに三度受け取り三度返す、は三国志における諸葛孔明に対する劉備玄徳の「三顧の礼」から来ているんだそうです。勉強になるなあ。
これからまひろは「宇治十帖」の執筆に入っていくわけですが、あれって序盤は宇治出てこないんですよね。始めに薫と匂宮の紹介を軽く、それから夕霧、玉鬘、真木柱や紅梅(柏木の弟)の後日譚、みたいな話が続いて「橋姫」からが本番。
ドラマでは宇治川に流れゆく二人、というイメージからインスピレーション!て感じでしたけど、実際はどうだったんでしょう?私にはこの序盤で、「光源氏」という圧倒的スターの不在をキッチリガッチリ読者に植え付けてる気がするんですよね。その辺り女房ズにも喋らせてます↓
薫と匂宮を「光源氏とは全く違う、遠く及ばない」と散々っぱらdisって、脇役っぽく扱いつつもどういう人となりかは強く印象づける。薫の出生の秘密について、何となく本人が勘づいていることをも匂わせる。そこからの「橋姫」。かーなーり周到に計算して書いてる気がしますよ?
「宇治十帖」の一番すごいのは「源氏物語」を読んだことがなくても楽しめそうなところです。「宇治十帖」の登場人物の殆どは「光源氏」の記憶は薄いか、全くない。よって「源氏物語って有名だけど読んだことない」という未読の民にもとっつきやすいわけです。ここから読んでどハマりし、光源氏編に戻って全て読破した人も少なくないのではないか?などと思ってしまいます。紫式部が意識的にこうしたのかどうかはわからないですが、読者層はこれで更にぐーんと広がったんじゃないでしょうかね。
あと終わりがもう見えてきたところでふと思い出しましたが、今大河では
「真夜中に道長が紫式部の局の戸を叩く」
エピソードなかったですね。まあ代わりに昼となく夜となく部屋に来ちゃってましたが、個人的には残念。すんごく色っぽいドキドキシーンを想像してました。いやでも私、道長と紫式部の間にはラブはないという意見なんですよ未だに。だからこそのギリギリ感を観たかったんだなあ、うん(うるさい)。
とりとめなくなりました(いつも)んでこの辺で。ではではまた来週!
(「源氏物語アカデミーレポ」はボチボチやります!うん絶対!)
<つづく>
「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。