盛り付けの可能性に注目し大学院に進学を決めるまで
皆さまこんにちは
フードスタイリストの河合真由子です。
このたび来年4月から大学院に進学することにしました。
note久々の更新となってしまいましたが、この1年ほど大学院受験のための準備でてんやわんやしていましたのが理由のひとつです。そこに思い至るまでの思いと今後の展望についてお話をします。
大学院に進学しようとおもったきっかけ
大学院では、「料理の見た目と味覚の感覚間相互作用について」研究を行う予定です。
私はフードスタイリストとして、長く広告の撮影や飲食店の開業支援に携わってきましたが、私の仕事の主なミッションは、商品やサービスの強みを発掘し、ユーザー目線で<視覚的な美味しさをつくる>ことにあります。
実際に食べる前から「おいしそう!」そして「たべてみたい!」と思ってもらうためにはどうしたらいいのか?について、カラーイメージやVMDなど様々な視点から検討を行い、実際のクリエイティブワークも行ってきましたが、料理だけをただ闇雲にいじるよりも、人間が食べ物をみたときになぜおいしそうに感じるのか?おいしさを感じる仕組みを知ることが一番の近道であると考え、大学院で研究をすすめたいと考えました。
「食べたらおいしかった」では大きな機会損失になる理由
そもそも私達は何を基準に、日々食べるものを判断しているのでしょうか?おいしさを構成する要因としては一般的に下記が挙げられます。
喫食行動と直接関係のある直接的要因と、食事にまつわる環境に基づく間接的要因、そして幼少期の食体験や文化、更には情報といった背景的な要因が複雑に絡み合っていることがわかります。
視覚は、喫食行動と直接関係する感覚であり、特に、料理の色、形、質感(ツヤ)などが関係してきます。
そして受容器における生理的感受性の割合において、視覚は87%を占めるといわれています。
つまり料理の見た目が料理への印象を大きく左右するということです。
先述の通り、広告や飲食店の世界では、そもそも人に興味を持ってもらうために料理を食べる前からおいしそう!たべてみたい!を引き出すことが重要です。他方、マーケティングの世界では、人は感情を揺り動かされたときに購買行動を起こすといわれており、料理の第一印象である見た目がよくないと、そもそも集客や売上に影響がでてしまいます。
加えて「なんだか見た目はイマイチだったけど食べたらおいしかったよ」では、食事に対する相対的な満足度は、ワクワクするような見た目の料理と比較すると低くなると予想されます。
つまり、料理の見た目をないがしろにしてしまうと、全体的な食事への満足度が下がり、どんなに優れた味の料理をつくっていても結局損をしてしまうということがわかります。
盛り付けの可能性
私は、これまで10年間、食品メーカーのカタログやCMの撮影のフードスタイリング、そして飲食店のプロデュースをおこなってきました。
その中で料理の見た目が変わるだけで、印象が大きくかわった結果、無理なく商品自体の価格を変更(上げる)できたり、売上そのものが上がった事例を目にしてきました。
全く同じお皿と同じ食材をつかっても、盛り付けが変わるだけで、こんなに人に与える印象が変わるものなのだとおもい、盛り付けの可能性に注目をしています。
2020年には、これまでのクリエイティブワークで実践してきた経験と調理学、食品学、カラーイメージコーディネート、マーケティングなどの知識をくみあわせ、オリジナルの盛り付けメソッドを確立し、盛り付けレッスンを開講しています。
盛り付けのいいところは、大きな投資をしなくても、今あるお皿や料理をベースに、手を加えるだけで料理の印象を変えられるところにあります。
但し、盛り付けというのは、感性によるものが大きいというところ、また視覚的なおいしさの基準というのは、個人によって異なることもあります。
特にビジネスの世界においては、同じフォーマットで比較することが求められ、客観性(数値、データに基づいた表現技術)が求められます。
そういった理由もあり、絶対的な正解値はないかもしれないが、平均値、標準がどこにあるのか、はたまたそこを目的とした際に、例えば自分の感じる視覚的なおいしさとどれぐらい距離があるのかを知る根拠を求めて進学を決意しました。
重複するようですが、
と、以前お世話になった感性マーケティングを専門とする宮内先生から学びました。
感性はいかしつつも、ビジネスとして客観性をもった表現をおこなっていくことを求めており、それが研究への大きな動機づけとなっています。
そしてそれには、私自身が盛り付けがもう一つの役割にも期待をしているからです。
盛り付けで誰でも食べる楽しみを味わえる世の中へ。
盛り付けといえば、少し前に流行った、映える料理というのを思い浮かべる方が多いとおもいます。
一瞬にして人の心を引きつけることが、マーケットにおける命題でもあるため、映えることも確かに大切であり、盛り付けについて客観的な表現技術があることは再現性の高い視覚的なおいしさをつくることに大きく貢献するとおもいます。
ただし、盛り付けは、それだけではありません。例えば、苦手なお野菜をブーケのようにかわいく盛り付けることで子供の好き嫌いをなくすことも、可能かもしれません。
また、高齢者やケアが必要な方たちにとっても食べる楽しみは、明日への生きる希望につながるとおもっています。少なくとも、私がこれから向かう未来には、食べる楽しみがある世の中であってほしいなとおもっており、研究で得た成果をもとに社会に実装していこうと考えています。
追伸:
仕事はこれまで通り、全力でがんばりますので引き続きどうぞ宜しくお願い致します!