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「行ったり来たり」光岡明著:読書感想文

地方へ旅行に行った時に、史跡の説明や町や村の成り立ちを書いた案内板を見るのが好きだった。
特に、それが神話と結びついていたり、鬼や精霊が登場するものだった場合一層興味が増す。
このような文章を短編小説として作り上げたのが、光岡明の「行ったり来たり」だ。
水が豊富で、水神を祀る多土半島という地における過去の伝承から現代までを綴る。
源為朝や修験者、鬼やキリシタン大名などの、いかにも教科書に出て来そうな素材が散りばめられているかと思いきや、現代の選挙における生々しい実情なども描かれていて一筋縄でいかない面白さがある。
「行ったり来たり」というのは、二つの水源をその名の通り行ったり来たりする存在のことで、妖怪なのか精霊なのか、それとも水神様なのか、その正体を読者にゆだねた書き方をしている。
いかにも風光明媚な場所で、その水も手足の病気に効くというのだから、ぜひとも行ってみたい気にさせる。

が、ここってもしや作者の空想の地……?

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