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昭和的感覚の随筆・エッセイ

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昭和生まれの氷河期世代が令和の今をなんとなくの感覚でつかみ取った、あるいはつかみ損ねた事柄をつらつらと書き綴ります。
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#氷河期世代

町の雑音が音楽に

町の雑音が音楽に

外出すると、Bluetoothの無線イヤホンで音楽かYouTubeかを聴いている人をよく見る。
電車内の若者は、ほぼほぼそうだ。
振り返ってみれば、自分も十代、二十代の時は町歩きの時も電車での通勤の時もいつも音楽を聴いていた。
有線イヤホンで。

それが三十歳を過ぎた頃から変わって来た。
音がうるさくなってきたのだ。
だから音楽を聴くのをやめて、町歩きの時は景色や空を眺めたりするようになったし、電

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氷河期世代はなぜこんなにも虐げられるのか

氷河期世代はなぜこんなにも虐げられるのか

大学時代の友人から、久しぶりにメールが来た。
「暑いけど、調子はどうだ」
そんな書き出しだった。

でも、その後から話は一気に不穏な方向へ。
彼の会社の収支が上手くいっていないらしい。
ついては、早期希望退職者を募ることになったと。
対象年齢は、四十歳から五十歳ほど。
つまり我々の年齢だ。
それは氷河期世代に重なる。

就職する時も大きな苦労があり、働いていても低賃金で、その仕上げとばかりにリスト

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氷河期の首席

氷河期の首席

大学三年の時、本屋でアルバイトをしていた。
確か、時給は700円台。県の最低時給だった。
その割に仕事は多かったし、責任も大きかった。
けれど辞めなかったのは、居酒屋でもコンビニエンスストアでも待遇は大して変わらなかったし、人間関係が良かったから。
大学生のアルバイトが五人くらい、パートのおばちゃんがやっぱり五人くらい。
それに、店長と社員の12人ほどで店を回していた。
強制もないのに、飲み会には

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寿命と母とパソコンと

寿命と母とパソコンと

 日曜出勤をしたために月曜日が代休となったので、部屋にこもりいつものように本を読んでいると、母親から連絡が来た。
 パソコンを買い替えたいから一緒に来てくれというのだ。
 五年ほど前だろうか、実家の母親のノートパソコンを借りた時、立ち上がるまでに五分以上かかり、そろそろ替え時だと言った時があった。
 しかし、メールを見るのや年賀状を作るだけだから特に不自由はない、そう母は言っていた。パソコンが立ち

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