カルボナーラ随想
七月初めとしては類を見ない猛暑だった或る日の夜、行きつけのバーで若手女性バーテンダーから「河原さん、京都でナポリタンの美味しいお店ご存知ですか? フードメニューに加えたくて最近食べ歩いてまして」と言われ、ぱっと思い浮かばなかった私は「あ、あぁ、うーん、赤ちゃんの時から行ってる『イノダコーヒ本店』のイタリアンは好きだけど」とお茶を濁すように応えながら、自分のパスタの原体験はどこにあるか、記憶の中を探した。
1970年代、京都にイタリア料理店は『フクムラ』という一軒しかなかったと言われているのに対して、フランス料理店はすでにいくつも存在した。
私の日本的洋食以外の本格的な西洋料理との出会いはそれらのフランス料理店のひとつ鷹峯にある『ボルドー』というお店(現存)で、幼稚園の時すでに「海の幸のテリーヌ」「仔牛の胸腺肉のポワレ シェリーソース」「タカサゴヒメジのポワレ ブールブランソース」「鴨胸肉のロースト ラズベリーソース」といったメニューが意味もよくわからないまま好物として頭の中に輝いていた。
一方、イタリア料理については『イノダコーヒ』のイタリアンか家庭料理のミートソース、ボンゴレ、たらこ程度の知見しかなかった。
イタリア料理に多少親しむようになったのは小学校に上がってからだ。
私にとっての原体験はこの記事の結びになるので後に置くとして、小学校高学年になる頃、第二の記憶に残る体験があった。
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