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「情報インフレ」_現代の蒙古斑と近代の断末

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〜3月27日 07:30


先般、日本銀行が金利の引き上げをアナウンスした。
具体的には、無担保翌日物における銀行間取引金利いわゆるオーバーナイト金利を現状の0.25%から0.5%になるまでマネタリーベースを段階的に減少させていく。
金利を引き上げ国内のカネ回りを悪化させることで、加熱しているインフレを抑制するのが狙いである。

意図的な景気悪化によるインフレ退治。

これは近代においてはセオリーだった。
だが現代においてはセオリーではない。
今般の日銀による金利引き上げでは、目下日本におけるインフレを抑制できない。
近代と現代ではインフレのメカニズムが変遷しているからだ。


本記事では、
「情報インフレ」という現代の物価上昇メカニズムを解説する。
目下日本を悩ませている人件費高騰のメカニズムと言い換えても良いだろう。
情報インフレ・人件費高騰のメカニズムを解説するプロセスで、近代型の金融政策ないし財政政策がインフレを抑制できない理由も氷解させていく。

それでは、現代21世紀の新たなインフレーションメカニズムを観にいこう。



ネットに繋いで稼いでる?_「情報所得」の時代

  【個人情報】
 「誰が」「何を知らないのか?」
   →
利用者  検索エンジン/情報資本
   ←
   検索サービス

検索エンジンを無料で利用できるメカニズム

我々が検索エンジンを利用する時。
利用者の「誰が」「何を知らないのか?」…といった個人情報が検索エンジンサイドに収集される。
その対価として我々は検索サービスを表向き無料で利用できている。

しかしながら、検索サービスというものは従来「辞書」が担ってきたサービスであり本当は有料である。
だから実際のところ、
我々は個人情報を商品として売却しその代金分の検索サービスを購入しているのだ。
文章だと分かりにくいので図にしよう。
この一連の手続きを図にすると次のようになる。

第一段階 個人情報を売却して情報所得に変える

  【個人情報商品】
 「誰が」「何を知らないのか?」
  →→売却→→
利用者   検索エンジン/情報資本
  ←←獲得←←
  「情報所得」

第二段階 情報所得で検索サービスを購入

   「情報所得」
   →→支払い→→
利用者    検索エンジン/情報資本
   ←←購入←←
   検索サービス

第三段階 情報所得を相殺すると…
  【個人情報商品】
 「誰が」「何を知らないのか?」
   →
利用者  検索エンジン/情報資本
   ←
   検索サービス

情報所得が発生しているのだが・・・

まず第一段階。
利用者が検索エンジンに知りたい言葉を打ち込む。
この時に「誰が」「何を知らないのか?」…といった個人情報を商品として売却している。
その対価として「情報所得」を獲得しているのだ。

次に第二段階。
利用者は獲得した情報所得を用いて検索サービスを購入する。
個人情報を商品売却して獲得した情報所得を用いて検索サービスを購入した。

第一段階で獲得した情報所得は第二段階で全額支払いに当ててしまうため手元に残らない。
全てが一瞬でありなおかつ等価交換でなされるため、情報所得は見えないし手元にストックされることもない。
だから、「情報所得」の存在に気付きにくい。
利用者が気付けるのは、個人情報を差し出して検索サービスを利用したという結果だけだ。

  【個人情報】
 「誰が」「何を知らないのか?」
   →
利用者  検索エンジン/情報資本
   ←
  検索サービス

情報所得の発生には気づきにくい


しかしながら、
我々はインターネットに繋ぐことで様々な実質無料サービスを利用している。

貨幣経済の視点で見れば無料であるが、
情報経済の視点で見れば無料ではない。

我々がインターネットサービスを利用する時。
貨幣は払っていないが、情報を支払っている。
その対価として情報所得を獲得し、この情報所得でネットサービスを購入している。

個人情報商品売却→情報所得獲得→ネットサービス購入

ネットに繋ぐことでなされていること

  個人情報商品
  →→→→
利用者   検索エンジン/情報資本
  ←←←←
  情報所得

ネットに繋ぐだけで、個人情報商品を売って情報所得を獲得できている

この目に見えない手続きがネットに繋いでいる間、ずっとなされているのだ。
つまり、我々はネットに繋ぐだけで稼げてしまっているのだ。
その稼ぎである情報所得をその度にネットサービス購入に充てているため気付かないだけである。



働くと稼げない??

ネットに繋ぐだけで情報所得を獲得できることはすでに述べたのでもう述べない。

 個人情報商品
  →→→→
利用者   検索エンジン/情報資本
  ←←←←
  情報所得

再掲


ネットに繋げば情報所得を稼げる。
だが、そうなると気になることはないだろうか?

働く時にはネットに繋げない。


ネットに繋げないと情報所得を稼げなくなってしまうではないか。

すなわち、働くと情報所得を稼げない。
世に云う「働くと稼げない問題」である。



労働力の商品化か?個人情報の商品化か?それが問題だ

20世紀は労働力商品の時代だった。
かたや21世紀は個人情報商品の時代である。

早い話しがネットに繋いで稼げるってことですわ。

   労働力商品
   →→→→
労働者    企業
   ←←←←
   労働所得

「労働」 近代20世紀の稼ぎ方

 個人情報商品
  →→→→
利用者   検索エンジン/情報資本
  ←←←←
  情報所得

「ネットに繋ぐ」 現代21世紀の稼ぎ方


20世紀は、厳密に言えば1995年までは、労働力を売って労働所得を得ていた。
21世紀は、厳密に言えば1995年からは、個人情報商品を売って情報所得を得られるようになった。

早い話しが、ネットに繋ぐだけで稼げてるってことですわ😉

そして、ここで問題が生じた。
労働する間は個人的にネットに繋げない。
なんとなんと、労働すると情報所得の稼ぎが減少してしまうではないか。

確かに労働することで労働所得は得られる。
しかし、労働することで情報所得が得られなくなってしまう。

いわゆる「労働ビンボウ」「労働所得と情報所得のトレードオフ」
と云われることになる現象である。

「労働ビンボウ」
「労働所得と情報所得のトレードオフ」


ここに現代の大きな問題がある。



労働所得と情報所得のトレードオフと人件費高騰


 個人情報商品
  →→→→
利用者   検索エンジン/情報資本
  ←←←←
  情報所得

働いている間はネットに繋げないため、上図における情報所得の収入が途絶える。
働くことによって情報所得の機会損失が発生する。

こうした事情があって、人々は労働するにあたって情報所得の上乗せを求めるようになった。
この情報所得の上乗せ部分こそが人件費高騰の要因だ。
確かに情報所得は目に見えないし認識しずらい。
だが、ネットを利用しない時間帯における「超不便」はもはや明確だ。
このネットを利用しないことによる「超不便」は、ネット利用による「超利便」の裏返しである。
ネットを利用できないことで「何か大きな利益」を失っているという認識が現代人には明確に存在する。
この労働することで失われる「何か大きな利益」の上乗せを人々が求めるのは必然のなり行きである。
そして、この「何か大きな利益」の正体こそが「情報所得」なのだ。

時代区分   稼ぎの形態
近代     労働所得
        ↓↓↓
近現代  労働所得+情報所得
        ↓↓↓
現代     情報所得

時代ごとの所得のあり方 近現代は労働所得から情報所得への過渡期にある


いまや日本の企業は労働所得だけでは労働者を雇えない。
労働所得に情報所得を上乗せして支払わなくては労働者を雇えない。
だから、人件費が高騰しているのだ。

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