上手くなくていい。楽しめたらいい。
デザイナーの友達が、最近、英語の勉強を始めたらしい。
彼女は、大学生の頃からデザインの職業に憧れて、今フリーのデザイナーとして活躍しています。
そんな彼女が、デザインより英語を勉強してる方が楽しい、なんて。
いいなぁ。
私も、そういうの見つけてみたい。
…デッサン!
絵描きには、超大切と言われている「デッサン」!
実は私、のらりくらりと絵描きをやってきたので、デッサンを学んだことがないのです。
それに…
それって、上手くなったら、あかんってことじゃないですか。
その通り。
絵には答えがない。
だから、微妙な画力の私でも、生き残れているのだと思います。
むしろ、私にとって、この微妙な画力こそが強みです。
だから、上手くなれない。
絵描きなのに、絵を描くのが上手くなれないというジレンマ。
こんなに、やる気が出てるのに!
毎日昼まで寝ちゃうズボラな私が勉強したいなんて、今しかないかもしれないのに!
興奮していると、画面越しの友人が言いました。
「じゃあ、文章は?漫画は、画力と文章力が必要でしょ」
あ、それ、いいかも!
私の頭のアンテナが、ピーンと立ち上がりました。
この髪の毛のハネ、ダウジングの機能を持ってるアンテナ……
だったらいいのにな!
実は、文章については、大学受験の時に、小論文の講座を受けたことがありました。
でも、一時的な集中講座だったし、アラフォーの私にとって、それは遠く、薄れゆく、記憶……。
たまに文章の仕事もあるけど、本当にノリで書いているんですよね。
誤字脱字がないときなんてない。
私は、「文章」を勉強することを決めました。
ーそれから約2週間ー
私は、欲望に溺れていました。
DMMの電子書籍の割引セールに、溺れていました。
100冊の漫画を購入し、読了し、それでもまだ読みたい衝動が止まらない私は、Amazonのアプリを開きました。
するとカートの中に、文章力を学ぶための本が入っていました。
しかも5.6冊。
このとき、我にかえりました。
そうでした。
2週間前、友達と話して、文章の勉強をしようとその気になった私は、「文章力」関係の本を、いくつかカートに入れてたんですよね。
その時の、意欲、どこに行ってたんだろう。
また、どこかに行かないうちに…
ポチッ
よし、購入!
そして、翌日、「文章」の本が届きました。
本は数冊書いましたが、その中でも、ファーストインプレッションで気になっていた本がこれ。
このタイトル、私にピッタリじゃないですか?
『めんどくさがりなきみのための文章教室』 はやみねかおる
中学生の男の子が、10万年生きたっぽい猫に、文章を教えてもらうという小説風のハウツー本でした。
まずはパラパラっと、全体をチラ見してみます。
すると、
「ヤバイだけじゃヤバイ」というタイトルが目に入りました。
なんと。
「ヤバイ」って、ヤバイのか。
今まで、仕事でも「ヤバイ」使っていたような気がする。
「ヤバイTシャツ屋さん」好きだし。
でも、「ヤバイTシャツ屋さん」は、一生懸命考えて、「ヤバイ」という言葉をバンド名につけたのだと思います。
それに比べて、私は何も考えずに「ヤバイ」という言葉を使ってました。
私、「言葉」を真剣に考えて使ってないんだ。
最初のページから、じっくり読み進めることにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・へ?
時計を見ると夜中の2時、子どもを9時ころに寝かしつかせてから、読書をはじめ、あっという間に、時間が過ぎていました。
早く寝なきゃ…
でも先が気になる…
読んだところだけでも、反映したら文章がよくなりそう…
覚えたてホヤホヤの「文章がよくなる」方法を、このエッセイで試してみたい!
スリープしてたノートパソコンを起こして、数時間後に納品する予定のエッセイコラムのデータを開きました。
「伝わる、心に残る、文章はシンプル」
「五感で感じたことを文章で表現する」
「うまく書こうと思わなくていい」
「書きたいと思う気持ちが一番大事」
「文章に答えはない」
サラサラサラ
サラサラサラ
あれ?
おお?
書ける、書ける、書ける。
手を止めずに、書ける。
詰まらずに、書ける。
文章が、生まれてくる。
うまくなくて、いい。
楽しめたら、いい。
この感覚は……
小さい頃、絵を描いていたときのことを思い出しました。
まだ、絵の世界で生きる厳しさなんて、知らなかったとき。
ただ真っ直ぐに、寝る時間を惜しむくらい夢中になった、「あの」感覚。
誰かと比べられず、誰かと比べず。
誰も入ってこない、私だけの時間。
その頃の私は、毎日少しずつ、絵が上手くなることが楽しかった。
ただ、楽しかった。
ポヤン。
友達が言っていた言葉を、思い出しました。
彼女が英語を学ぶ楽しさは、こんな気持ちだったのかもしれない。
上手くなるって、楽しい。
成長するって、楽しい。
その理由は、「新しいこと」だからかもしれない。
私が今、絵より文章に対して「楽しい」と思うのは、文章の実力が未熟で、その世界のことをまだ知らないから。
イラストの仕事は、かれこれ10年以上になります。
それだけこの世界にいると、自分がどれだけ微妙な画力なのか、思い知らされてしまいます。
この世界が好きなほど、深く入るほど、痛感します。
仕事は、お金をもらえるだけの価値を作り出さないといけません。
そうやって、いろいろ考えすぎちゃって、いつの間にか、そばに「重り」をたくさん積んでにしてしまっていました。
あの頃の、はじまりの、一番大切なモノを、遠くにやってしまっていました。
仕事だから、目的を達成する責任があります。
それだけの、価値を作る必要があります。
だから、ある程度のプレッシャーは、あってもいい。
いや、必要なんだと思います。
でも、ここまで積み上げなくてもいいのかもしれない。
一番大切な「楽しい」の気持ちは、一番近くに、置いておきたい。
この感覚を、ずっと忘れずに、
大好きな絵と文章で、刻みこむ。
おしまい。
カワグチマサミ(@kawaguchi_game)