白い夢 (800字小説)
昼間の夢は背景が白い。夢の中で私は世界の理想を聞かれた。夢の住人は名をユメといった。この世のすべては嘘だと、ユメは言う。
私 「好きな人たちに囲まれていたい」
ユメ「人のつながりはすべて点でありすべて嘘」
私 「ストレスの少ない社会がいい」
ユメ「ストレスのような不快感は人の脳の欠陥か、あるいは危機察知のアラーム。人の欠陥は受け入れるがこのアラームは代替可能。よってすべて嘘」
私 「怒っている人が少ない社会がいい」
ユメ「怒りは真の危機を察知するためのアラーム。これも代替可能ですべて嘘」
私 「同調圧力のない社会」
ユメ「実は同調圧力など無い。何もないか、単なる暴力か、何れかでありすべて嘘」
私 「美しい世界がいい」
ユメ「人は体が求めているものを得たとき強い快感を覚える。美を感じるのは美に飢えている証拠。各条件下で官能に訴えるものが美だ。例えば体が乾いた時の水は美味い。例えば激しい運動で自分を追い込むことは、このメカニズムを利用して快感を人工的に作り出す、すぐれた嘘の活動だ。絶対的な「美」はなく人間の環境に左右される。官能は刹那。よってすべて嘘」
私 「シビれるような感覚が時々あってほしい。生きていることを実感したい」
ユメ「原因においてはすべてまやかしであり嘘。痛みやシビレは実感だがそのうち忘れる」
私 「朝が来るたびに世界の素晴らしさや美しさ、空気のおいしさを感じられる世界」
ユメ「もともと世界の姿は変わらないので受け取る側の問題。地球のせいにするのは間違いでありすべて嘘。人は代え難いものほど当たり前すぎて感知できないし目に入らない。」
すべて嘘なのか。電気が付けっぱなしの部屋で目を覚ました。時計を見ると夜中の3時だった。
「 山菜になりたい 」
と無意識に呟いていた。意味は分からない。寝ぼけていたのか、心の声か。すべて嘘か。