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読書記録「小川未明 童話集」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、「小川未明 童話集」新潮社 (1951) です!

「小川未明童話集」新潮社(1951年)

・あらすじ

人間はこの世の中で一番やさしいものだと聞いている――北海の海底に一人寂しく過ごしていた人魚が、夢と希望を託して人間界に生み捨てた美しい娘の運命を描く『赤いろうそくと人魚』等全25編を収録。グリム、アンデルセンにも比肩する児童文学の金字塔。

同著 背表紙より部分抜粋

東京読書倶楽部の読書会にて紹介を受けて以来、いつか読んでみようと思っていた作品。

先週、たまたま神保町は(元)鶴屋洋服店の店先に並んでいたのを発見し、ようやく紐解いた次第。


個人的に、小川未明の童話集を読んで良いなと思った点は、「そんなもの」にも感情移入するのかということ。

例えば『飴チョコの天使』では、お菓子自体は欲しいけれども、包装紙は雑に捨てられる運命にある、菓子箱に描かれた天使が主人公。

都会の工場で造られ、田舎の駄菓子屋で売られる。ある天使は溝に捨てられ、ある天使は破かれ、ある天使は犬のおもちゃにされる。

使命を果たした天使たちは、星空の輝く空へ昇っていったとさ。


また『負傷した線路と月』では、文字通り負傷した線路(レール)が嘆きの言葉を月に話す。自分を通過した機関車が、わざと痛めつけたのだと。

月は線路を負傷させた機関車を見つけ出すも、列車は大量の貨物と長旅で疲労困憊になっていた。

貨物(箱)に話を聞くと、自分たちですらどこに送られるのか分からないのだと言う。

では線路を負傷させた諸悪の根源は誰か。街へ降りると、窓から可愛らしい赤ん坊が月に向かって笑っていました。


『殿さまの茶わん』や『小さい針の音』など教訓があるような物語もあれば、『月夜と眼鏡』や『金の輪』では白昼夢のような不思議なお話もある。

小川未明は1882年から1961年の人。その間に徐々に作風や伝えたいことに変化はあれど、その根底にある「愛情」を沸々と感じ取ることができる。

人間も自然も、人間の醜いところも、自然の平凡なところも、それからまた人生の悲しいことも、不幸なことも、凡て愛情によって清められ、美しさとなって表現されて来るのではないでしょうか

同著 251頁 坪田譲治の解説より抜粋

『赤いろうそくと人魚』や『負傷した線路と月』なども、ある意味で、人間の悪いところが描かれている。

根も葉もない噂に惑わされて人魚を売りに出してしまう。技術発展に伴い自然を蔑ろにしてしまう。忙しくいるばかりで、自分の本来の目的を見失ってしまう。

それらを優しく諭すような、愛情を以って読者に語りかける。

『とうげの茶屋』では、茶屋の前にバス停ができるため、これまでのように、歩いて隣町へ向かう人達の利用が減るのではないかと、心配になる店主のおじいさん。

それでも、町から町をつなぐバスができるのならば、これまで以上に親族に会いやすくなるだろうし、決して悪いことばかりではないだろうと。

ただ世の中の明るくなるのが、なにより喜ばしいことであるように感じられ、また、多くの人たちがしあわせになるのを、真に心から望まれたのでありました。

同著 174頁「とうげの茶屋」より抜粋

私たちは、目の前に広がる世界を、愛情を以って見ているだろうか。それではまた次回!

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川口 竜也 / 川口市出身の自称読書家
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