読書記録「一人称単数」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、村上春樹さんの「一人称単数」文藝春秋 (2020)です!
・あらすじ
ある男は、普段めったにスーツを着ることがない。仕事柄スーツを着る必要がないのだが、年に数回しか着ないことに対して、ある種の申し訳なさが芽生えていた。
ただ、この申し訳なさが一体どこからくるものなのかよくわからない。日々の労働で真っ当に購入したスーツに対して、なぜ後ろめたさを感じるのか。ただまぁ、そういう日もある。
妻は友だちと食事に出掛けている間、特に理由もなく(説明しろと求められても答えられないのだが)スーツに袖を通す。部屋でじっとしていもつまらないから、スーツを着たまま夜の街へ出た。
今までに行ったことがないバーに行き、ウォッカ・ギムレットを飲みながら、読みかけのミステリー小説を読む。その姿は、どこか、私自身ではないような気がした。
すると、隣に座った女性から声をかけられた。「そんなことをしていて、なにか愉しい?」と…。
その他、シューマンの「謝肉祭」の話で盛り上がる”醜い”女性との物語や、ビートルズのLPを抱えた女性とある女性との交際を描いた話などの8編で構成される短編集。
先日の村上春樹作品を語る会に参加する前に、1冊でも多く読んでおこうと手に取った次第。
かれこれ1年近く読書会をやっているけれども、村上春樹さんの作品を持参する方は多くはない。いや、むしろいたかどうかも思い出せない。
それが有名すぎるからなのか、それとも「私、村上春樹読んでいるんで」と公言すること恐ろしいのか、はたまたそれ以外か。
ただ気持ちはわかる。どうも感想という感想が浮かばないことが多い。だからこそ、読み耽ってしまうのかもしれない。
例えば、同著にある「クリーム」という短編作品の中に、このような問いかけがある。
そんなことに考えを巡らせている間に、傷ついた経験も取るに足りないことのように思えてくる。
不思議だ。不思議としか思えない。フィクションだから当然だが、実際に起きた物語ではない。だが、リアリティーがありすぎてしまう。これは村上さんが実際に経験したことだと言われれば、正直信じてしまう。
結局、村上作品を読んで思うことは、この言葉に集約されてしまう。
それではまた次回!