読書記録「太陽のパスタ、豆のスープ」
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
今回読んだのは、宮下奈都さんの「太陽のパスタ、豆のスープ」集英社 (2013) です!
・あらすじ
嫌な話は食事の「後」に話してと言ったはずなのに。結婚式直前に婚約破棄を言い渡された明日羽は、失意のどん底に落ちていった。
何が悪かったのかは分からない。だけど譲さんは、私とは結婚できないのだという。本当に悪いと思っているとも。
実家で意気消沈していた明日羽に、叔母の六花さんが提案したのは「ドリフターズ・リスト」を書くこと。
こんな状況だからこそ、明日羽にはドリフターズ・リストが必要なんだって。
ドリフターズ・リストを書いている内に、徐々に明日羽は、自分のやりたかったことや、心が望んでいることを見つめ直し、成長していく物語。
会社の先輩が紹介してくれた本。大型連休の旅のお供に紐解いていた次第。
ドリフターズ・リストというと、ビジネス書で「願望リスト」や「夢リスト」なるものがあった。
まだ自分でやる気に満ちていた頃、実際に何度か真似して書いていた。何が欲しいかとか、何がしたいかとか。
だけど、書いている間も、書き終わった後も、ずっと違和を感じていた。
それは、ビジネス書で紹介されるやりたいことリストは、”お金や時間の制限がなかったら何がしたい”という前提で書き出すよう指示されていたからだ。
それって、書いた夢を実現するために、仕事や副業とか、別の努力をする必要があって、私の思う「やりたいことリスト」ではないよなって。
言語化したのはいいけれども、結局自分は何がすればいいんだろうって思うと、動けなくなってしまう。
だからあくまでも、この物語で語られるのはドリフターズ・リストである。
人生の漂流者のために、今自分は何がしたいんだっけ、何を望んでいたんだっけと、その手がかりになるリストだ。
ビジネス書や自己啓発本で紹介されるような、やりたいことリストが書ける人は、そもそも人生の漂流者ではない。
本当に失意のどん底にいたら、将来やりたいことなんて思いつかないわけで。むしろ夢や願望をすらすら思いつける時点で、そこまで漂流していないだろう。
それゆえに、TODOリストほど”やらねばならない”感じでもない。
例えば、明日羽は休日の青空マーケットにて、会社の同僚の郁ちゃんが出店していた豆を買って、自分のリストに「豆」と書く。
だけど、改めてリストを見返してみても、「豆」と書いているだけで、具体的に何をするべきかはよくわからなかった。
やりたいことが具体的であれば、何をやるべきか明確になる。何のためにと自分に質問すれば、解像度は上がるだろう。
おそらく自己啓発系の本だったら、明確に書くべきだと言うかもしれない。
それに、書いたのだから、行動に移すことは大事である。
明日羽もまた、リストに書いたからこそ、やってみようと行動に移している。このまま意気消沈していても何も始まらない。だったら良くも悪くも、行動してみるべきなんだって。
だけど、ドリフターズ・リストにおいては、そこまで考えて「やりたいこと」を書く必要もないのかもしれない。
今はまだはっきりとは分からない。だけど、生きていくうちに、ふと見つけることだってある。
明日羽が「豆」と書いたきっかけがあるように、明日羽にとっての「豆」の価値や意味を、自分で見つけたように。
何のためにとか、どういう状態になるためにとか、考えたらきりがない。
考えたほうが良いにしても、私の場合は考えたら考えたで余計に動けなくなる。
だったらこれくらい、無理に頑張る必要のないものが良い。毎日に自分に◯をつけられるくらいのものでいいんだって。それではまた次回!