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演奏会場は街。「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」で見た都市の姿
今年9月の7日(土)と8日(日)に、仙台で「定禅寺(じょうぜんじ)ストリートジャズフェスティバル2024」が開催されました。これは、ジャズに限らず、ポップスやフュージョン、ロック、ブルースなど、さまざまなジャンルの生演奏を屋外で楽しめるイベント。初開催は1991年で、今回が33回目です。
私は2日目の8日(日)に仙台に行き、このイベントを観てきました。今回は、そのときの様子をご紹介します。
■ ステージは街?
「定禅寺ストリートジャズフェスティバル2024」のパンフレットには、次の3つのコンセプトが記されています。このコンセプトは、1991年に第1回目を開催して以来変わっていないそうです。
ステージは街です。
あらゆるジャンルの音楽で溢れます。
市民みんなで作っています。
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1番目の「ステージは街です。」を見て、驚いた方はいませんか? 「街がステージになるって大げさでは?」と思う方もいるでしょう。
ところがこれ、本当なのです。
そのことは、パンフレットの会場マップを見るとわかります。このイベントの主催ステージは34ヶ所あり、仙台の中心地に配置されています。東(地図右)側はJR仙台駅、西(地図左)側は広瀬川に面する公園(西公園)に及びます。
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コンセプト通り、本当に街をステージにしてしまうとは。仙台、恐るべしです。
なお、公式パンフレットには、参加するバンドは2日間で600グループ以上で、演奏者が全国各地から集まることが記されています。このことから、仙台や東北地方という一部地域に住む人を対象としたイベントではないことがわかります。
■ 歩行者天国になった定禅寺通
仙台に着いてからは、まず定禅寺通に行きました。「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」というイベント名の通り、そこが中心となる会場だからです。
定禅寺通は、中心地を東西に通る6車線の幅広い道路です。歩道や中央分離帯がケヤキ並木になっているため、杜の都・仙台の象徴となっています。
今回のイベントの会期中は、片側3車線が歩行者天国になっていました。
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■ 屋外での音楽鑑賞に慣れた人々
歩行者天国になった場所の各ステージでは、それぞれ別々のバンドが演奏していました。空を覆うように葉が茂るケヤキ並木の下で、バラエティ豊かな音楽のシャワーを大音量で存分に浴びることができるなんて、よく考えるとなかなかぜいたくな空間ですね。
定禅寺通に集まった人々の中には、アウトドア用の椅子に座っている人もいました。コロナ禍でオンライン企画になった2020年を除き、毎年開催されていることもあり、屋外での音楽鑑賞に慣れた人が集まったようです。
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■ アーケードに空中ステージ
中心地は広いので、34の主催ステージのすべてを巡ることはできませんでした。ただ、アーケードがある歩道のステージはざっくりと巡りました。
目玉となるのは、やはり1番の勾当台公園市民広場のステージです。ここは大人数で編成されたビッグバンドが演奏する場所です。
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私が夕方に訪れたときには、老舗のバンドが演奏していました。そのメンバーのMCによると、第1回開催以来、毎回「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」に参加しているとのことでした。30年以上活動を継続しているだけでも驚きです。
MCで自らの高齢をネタにして観客を笑わせたあと、バンド全体で余裕がある演奏を披露。その姿を見て、「カッコいい歳の重ね方をしているなぁ!」と感じ、思わぬところで勇気をもらった気がしました。
アーケード街である「マーブルロードおおまち」では、「おおまち空中ステージ」が設けられました。看板を見て「空中ステージって何?」と思ってふり返ったら、本当に空中(アーケードの天井付近)にステージがあり、バンドのメンバーが路上に立つ人に向けてパフォーマンスをしていました。
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■ あのライオンもこの姿
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上の写真は、仙台三越にあるライオン像です。ジャズにちなんで、サックスをくわえていました。粋ですね!
中心地をざっくりと歩き回わって感じました。
このイベントが街にすっかり溶け込み、定着しているんだなぁ、と。
子供からご年配の人、そして一部の人が連れてきたペットたちが街に集まり、あたかも遠い昔から続いてきた行事であるかのように受け入れ、楽しんでいる。そのような姿を現地で見ました。
とはいえ、「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」の歴史は、順風満帆ではなかったようです。たとえば近年は、コロナ禍の影響で開催形式が変更される、または規模が縮小されるということがありました。2年前の2022年には、勾当台公園市民広場の入場者数が制限されたため、私は演奏を観るために長い行列に並びました。
それでも現在まで33回も続いてきました。喜ばしいことです。
■ 仙台ならではのイベント?
現在日本では、多くの都市でジャズフェスティバルが開催されています。
その中で、仙台の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」は、異色な存在のようです。
たとえば、日本経済新聞社のNIKKEI STYLE(2019年7月7日付)に掲載された記事「音楽に包まれる休日 街ごと楽しむジャズフェス10選」では、仙台の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」が第1位に選ばれました。
現在は、掲載当時とちがい、コロナ禍の影響でジャズフェスティバルの状況が変わっています。
ただ、「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」がめずらしいジャズフェスティバルであるとは今も言えるでしょう。なぜならば、仙台の定禅寺通のケヤキ並木そのものが日本では特殊であり、それを生かした音楽イベントというだけで希少な存在になるからです。
ちなみに私は、現在茨城県に住んでいますが、「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」開催初年の1991年には、仙台で大学時代を過ごしていました。当時は、このイベントの存在を知っていたものの、現在のように規模が拡大するとは想像できませんでした。
また、私はジャズなどの音楽に関する知識をあまり持っていませんが、それでもこのイベントは十分に楽しめました。演奏するバンドのメンバーと、それを観る人たちがかもし出す不思議な一体感にふれることができたからです。
もしこの記事で興味を持った方がいたら、来年の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」に行くことをオススメします。街でさまざまなジャンルを音楽を「体感」することは、結構楽しいですよ。
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