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旅先でのチャンスは二度とない? 「カティサーク」を見逃して

こんにちは。交通技術ライターの川辺謙一です。

今回は「旅先でのチャンスは二度とない? 『カティサーク』を見逃して」という話を書きます。

ざっくり言うと「旅先で出会ったものを大切に」という話です。

お楽しみいただけたら幸いです。

■ 二度とないチャンスがある

みなさんには、旅先で偶然あるものに出会い、「観ておきたいけれど、また今度でいいや」と思った経験はありませんか?

私にはあります。

そして、あとになってその価値に気づき、「あのとき無理してでも観ておくべきだった」と後悔したことが何度があります。

その代表例が、ロンドンで「カティサーク」を見逃したことです。

■ 内部を見逃した「カティーサーク」

ロンドンのグリニッジに展示されていた「カティーサーク」。2006年6月撮影

「カティーサーク」とは、イギリスで建造された大型帆船で、1869年に進水しました。中国からイギリスまで紅茶を輸送する「ティークリッパー」として活躍したもののうち、唯一現存する船です。

ざっくり言えば、イギリスの紅茶文化だけでなく、同国が船で世界を制した時代を語るうえで欠かせない存在です。

私は、2006年6月にロンドンを訪れたときに、グリニッジ天文台に行きました。グリニッジ天文台は、経度0度の本初子午線が通ることで知られる天文台で、グリニッジ標準時(GMT)の基準になっている場所です。

その帰り道で、偶然「カティーサーク」に出会いました。それは一般公開されており、内部も見学できるようになっていたので、多くの観光客が訪れていました。

ところが私は、そのチャンスをうっかり逃してしまいました。

理由は単純です。グリニッジ天文台の実物を観ただけで満足したうえに、恥ずかしながら「カティーサーク」の歴史的価値を知らなかったからです。

グリニッジ天文台の最寄駅の看板。駅名に「カティサーク(Cutty Sark)」の文字が

グリニッジ天文台の最寄駅は、「Cutty Sark for Maritime Greenwich(直訳すると、海事都市グリニッジにふさわしいカティサーク…でいいのかな?)」です。この駅名を見れば、「どうもカティサークはグリニッジ天文台よりも価値がある存在らしい」とわかるのですが、それでも私は船全体の写真だけ撮り、内部の見学をせず、電車に乗って帰ってしまいました。

グリニッジ天文台の見学というミッションを終えたゆえに、偶然見つけた「カティサーク」に関しては「観るなら、また今度来るときでいいや」と思っていたのです。

今なら、すぐにその場でスマートフォンで調べ、「カティサーク」の歴史的価値に気づいていたかもしれません。

ところが2006年当時は、初代iPhoneがアメリカで一般販売される前年で、まだスマートフォンが普及していませんでした。手元にあったのは、イギリス旅行用にレンタルしたノキアの携帯電話だけで、インターネットと接続して情報を収集できませんでした。

■ 帰国後にまさかの焼失

帰国後、「カティーサーク」の歴史的価値に気づき、後悔しました。あの大型帆船がただの船ではなく、イギリス帝国の絶頂期とされるヴィトクリア朝時代を語るうえで重要な遺産だったなんて。

また、不幸にして「カティーサーク」は、復元工事中だった2007年5月に発生した火災によって大部分が焼失してしまいました。

そのニュースを聞き、あらためて後悔しました。
あのとき見学しておけば」と。

なお、「カティーサーク」はその後に復元され、2012年に一般公開が再開されました。ただし、私は残念ながらあれからロンドンに行けず、まだその姿を生で観ていません。

■ 旅先で出会ったものを大切に

ここまでご覧いただきまして、ありがとうございます。

今回お伝えしたことは、冒頭で述べた通り、「旅先で出会ったものは大切に」ということです。

みなさんが旅を存分に楽しむうえで、以上の話が少しでもお役に立てば幸いです。

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