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美術展 『横尾忠則 寒山百得』 -風狂に!自由に!-

秋晴れの上野公園。
トーハク本館や表慶館の威風堂々とした佇まいは、いつ何時見てもカッコイイが、やはり青空を背景にした姿が一番好きだ。

1909年開館  片山東熊 設計「東京国立博物館 表慶館」

この表慶館で開催中の展覧会『横尾忠則 寒山百得』展。
まず、表慶館でやっていることに驚いたが、その意外な組み合わせは直ぐに大きな期待へと変わった。

展覧会のテーマは、日本や中国における伝統的な画題「寒山拾得」。
このテーマ1つで、新作を102点も描いたという。
その情報だけでも驚嘆なのに、制作期間は約1年半のハイスピードで、キャンバスサイズはいずれも130×162cm以上。
85〜87才の間にこれだけ描き上げることが出来る凄み。

2年前に東京都現代美術館で開催された同氏の個展も観に行ったが、個人的には、今回の展覧会の方が圧倒的に好みで且つ、とても勇気をもらえる内容に感じた。


「2021.10.16」

今回展示されている作品のタイトルは、全て制作年月日になっている。
2021.09.03〜2023.06.27まで日付順に展示されているため、画風の変遷を辿る楽しさと観やすさがあった。

「2022.02.06」/「2022.07.04」
「2022.10.19」/「2022.10.20」


・・・って、私はなぜ、こんな説明的に書いているのだろう・・・。

もっとぶっ飛んでいいんだよ
既成概念なんか蹴散らして、
自由な感性で生きていいんだよ˚* ੈ✩ 


だって、寒山の巻物をトイレットペーパーに置き換えてるんだよ?
拾得の箒を掃除機に置き換えてるんだよ?
便座を首にかけてフルマラソンしたり、牛柄の象がいたり、拾得に左右で異なる靴を履かせてみたり、アインシュタインがいたり、もう本当に様々なユーモアが散りばめられていて、観ていて思わずクスッとしてしまう作品の多いこと・・・!

「2022.02.09」

黄色の野に立つゴッホ。
右手に持つのは銃なんだろうけど、私には刀に見えたんだ。
左手に持つのは革傘なんだろうけど、私には和傘に見えたんだ。
日本に憧れを抱いていたゴッホが重なって見えて、泣きそうになった。

けれど、ゴッホに会いたかった寒山が、笑顔で記念撮影しているようにも見えて、泣きそうだった感情は、ふっと微笑みに変わったんだ。

ゴッホ meets 寒山

偶然その場に居合わせた私が、寒山に頼まれて二人の記念写真を撮っているような、夢の錯覚を横尾さんはプレゼントしてくれた。ありがとうございます。
オーヴェル・シュル・オワーズを訪れたときよりも、ゴッホをなんだか近くに感じたから不思議だ。

「2022.10.10」

自分の分身だと思えばいいよ。Y君のなかにあるマヌケな部分もカシコイ部分もカッコイイ部分も自分の中の寒山拾得と思えばいい。

原郷の森 最終章505頁

なんだこの言葉は!うるっときたぞ!
いいなぁ、この受容の視点がいい。。好きだなぁ。。。

「2023.01.15」/「2023.01.14」

伝顔輝筆の寒山拾得を元にした作品だけど、ただの模倣じゃないところがホント、流石です。
山水を二人の身体に見立てて描くところ、ユーモアだけじゃなく、敬意も感じた。そして、画風の振り幅の広大さに、改めて感動。

表慶館 meets 横尾忠則

理性や既成概念の枠に囚われず、豊富で独創的な、横尾さんの感性と想像力。
「これくらい奔放にしてみたらどう?」と、強いるわけではなく、思いつきのような軽さで、頼もしい背中を見せてくれた。
「ちなみに僕はこんな感じ」といった具合に。

《生きづらい》《面倒くさい》と、もはや口癖のように溢れ出る呪文に押し潰されそうな現世において、軽快で風狂な彼らの存在は、晴れ間に似た光を感じた。
その光を見せてくれた横尾さん、展覧会を企画してくれたキュレーターの方々に、心から感謝!
そして!この展覧会へ足を運んだ自分自身にも、感謝なり!

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