「小笠原諸島に空港は必要か⁉」新科目公共で学ぶ探究のトビラ(14)
人間社会では,必ず意見や考え方が対立します。解のない問題や課題が現代社会では増え続け,これからはコミュニケーションを通じた共に納得できる解を見いだす姿勢や態度がますます求められます。中高社会科教員経験のある大学教員です。生徒や学生たちとの授業実践,互いの根拠や意味を問い合う対話による探究活動を紹介します。諸学校での授業活用はもちろん,理解しやすい身近な題材にしていますから,友人同士や家族団らんで語り合ってみてはいかがでしょうか。
※ キャッチアイ映像は,小笠原村役場様より
世界自然遺産小笠原諸島
東京から南に約1000㌔の太平洋上に浮かぶ小笠原諸島は,世界自然遺産にも登録されており,東洋のガラパゴスとも称されています。多くの島々に囲まれており,父島と母島に島民が暮らしています。
本土との交通アクセスは?
東京とつなぐ船便しかありません。片道約24時間かかり,週1便の定期船が唯一の交通手段となっています。そのため以前から,航空便のための空港建設に関する議論がなされています。
環境保全を!
空港建設には,長距離に及ぶ滑走路が必要になります。その建設により豊かな自然や貴重な生態系が破壊されるのではという懸念があります。経済振興や地域活性化の起爆剤となりうる航空便導入ですが,反対意見も少なくありません。
島民の命をどう守る⁉
父島・母島島内にそれぞれひとつの診療所しかない医療体制は脆弱と言わざるを得ず,重病患者の救急搬送が課題となっています。海上自衛隊によるヘリ搬送も万全ではなく,急患搬送を可能とする空港建設は島民の悲願でもあります。
今後の方向性は⁉
小笠原諸島が世界自然遺産である以上,むやみに環境破壊につながることはできません。しかし,高齢の島民に長時間の船舶移動を強いり続けることは,生活の安定を奪うことにもなりかねません。東京都は自然環境と調和した実現可能な空港建設を検討していくとしています。私たちもこれからの小笠原諸島を注視したいですね。
探究とは…
①自分で課題を見いだす
②解のない問いと向き合う
③人としての在り方生き方を追究する
④他者と共に望ましい社会形成に参画する