居酒屋で最終面接を受けた話
最近のワカモノ(なんて書くとますますオジサンが加速する気がするが構いやしない)は目が肥えているような気がしています。私が10代だった頃と比べて、色々な情報に触れる量が絶対的に多い。それだからなのかな、ワカモノが良い!と言っているものの良さを、時間が経ってから気づくことがたくさんあります。(自分の感度が低いだけか)
#Adoの声ってジワジワと中毒性があるよね
さて、私が就職活動で1社を選んだ話。
最近、未来のことを考えるのと同じくらい、過去にも目を向けて内省している。いったりきたりして、色んな経験と価値観がつながっていくのを感じる日々です。
―――今からさかのぼる事、2005年。
私は就職活動をしていた。地方の大学に通っていたこともあって、周りの友達も含めて就職活動のスタートは遅めで1~2月頃からリクナビなどの就活サイトに登録して、合同企業説明会みたいなものに参加して、同時進行で自己分析やら業界分析、自己PRの作成なんかをやっていたと思う。
2月の途中から、地元の大阪に戻って就職活動を進めていた。とは言っても、入りたい企業も、やりたい仕事も、将来なりたい自分なんてものもなくて、どこかの企業に入って働く自分の姿を思い描くことが全く出来ていなかった。
そんな足元グラグラだったくせに、根拠のない自信だけは人一倍強くって、どんな仕事についても誰よりも成果を出す自信に溢れていた。世間知らずって強い、本当に強い。(そしてこの根拠のない自信と伸びきった鼻っ柱は新卒1年目でバッキバキに折れる ※詳細はコチラ)
そんな舐め切った就活生だったので、選考は最終か最終一つ前くらいでいつも落ちていた。よく採用担当の方から頂いたフィードバックは「いまいち志望理由や熱意が見えなかった」
#さすが、しっかりバレてる
そんな悲惨な状況なのに、当時の私は「自分に合う会社ないなー」なんて、自分が選んでいるような強気な立場に立ち続けていた。面接でも面接官が回答に困るような質問をしては"試す"ようなことばかりしていた。あの鋼のメンタルはなんだったんだろう。そして青さというか、勘違いというか書いていて恥ずかしくなってきた。
#今はたぶん改心したので許してください
そして東京へ
そんな鳴かず飛ばずの就活を続ける中、4月の下旬かGW明けくらいのことだったか、いくつか気になる企業が出てきた。それらの企業は東京にあったので、上京することを決めた。
2歳から3歳くらいの頃に千葉に住んでいたことがあるらしいが、記憶はほとんどない。就活が始まるまで、学生時代にも東京に行ったことはなく、物心ついて初の上京に私はビクビクしていた。警察密着24時みたいな物騒な事件が頻繁に起きているのではないか、油断したら刺されるんじゃないか、Air MAXを狩られるんじゃないか、、、そんな恐怖心を抱きながら夜間高速バスに乗ったのを覚えている。
#都会に対してはチキン野郎(そしてAir MAXも履いていない)
たしか、高速バスが到着したのは明け方の新宿だったと思う。小学生時代から仲がよかった友達が東京で仕事をしていたので、彼の家にお世話にながら東京で就活を始めた。
#東京に降り立って暫くは、どこまでも梅田が続いていると思ってキョロキョロしていました
ちょうど拠点を東京に移したタイミングだったと思うけれど、面接慣れのためになんとなく受けていた企業から内定を頂いた。その企業は全国展開をしている飲食チェーンで、普段よく食べていたからという雑な理由で受けたにも関わらず、すんなり内定となってしまった。しかし、申し訳ないことにその企業で働くつもりは一切なかった。けれど、他に内定が出ている企業もなく、1か月くらいは回答を待ってくれるということだったので、保留して就職活動を続けた。
就職活動の終盤にて
東京ではベンチャー企業を中心に説明会や選考を受けていた。そのうち2社、選考が進んでいった。この2社は自分の中でもかなり興味を惹かれた企業だった。ここに至るまでにエントリーした企業は約100社、説明会に参加した企業は約60社、選考参加は約30社くらいだったと思う。季節は6月も後半に差し掛かっていた。
#周りの友達はGW前にはほとんどが就活を終えていたので、圧倒的な進捗の遅さ。
2社のうちA社は採用支援・教育関係のサービスを提供している会社で、選考がユニークで面白かった。選考途中のグループワークのボリュームが非常に大きく、他に選考に参加していた就活生とも深い交流ができ、非常に面白かった。採用リーダーの社員ともたくさん話す機会があり、個人的に飲みに連れて行ってもらったりした。有難いことに、最終選考を前にして、その方からは私と一緒に仕事をしたいと強めに口説いてもらった。
もう1社のJ社は実際に入社することになるのだが、こちらは採用関連のコンサルティングや広告販売などを行っている会社だった。この会社も選考フローが少しユニークだった。ざっくり言うとこんな感じ。
会社説明会+筆記テスト(SPI的なやつ)
→(1次面接)
→懇親会という名の飲み会(社員ほぼ全員 × 選考途中の学生)
→課題(簡単な企画書の作成)+2次面接(面接官3人 対 学生1人
→最終面接(対社長)
→内定
筆記試験に合格した後、私はなぜか1次面接が割愛され飲み会の案内を受けた。後から聞いた話だと、私が参加した説明会は2nd termだったらしいが、1st termの選考に混ぜ込みたかったから1次面接はカットしたらしい。
#この辺の自由さがベンチャーな感じ
飲み会は本当にただの居酒屋でざっくばらんにお話をするだけのものだったが、ここでほぼ全ての社員と話すことができた(当時社員は15名もいなかった)ことによって、就活をしていて初めて、自分の働くイメージを描くことが出来た。というかむしろ見えた。どの席で、どんな景色を見て、どんなテンションで仕事をしているかまで、働く前からビジュアルが浮かんだ。その瞬間に、自分の中では、その企業に入社することが決まった。
#当然、社員側は学生の"オフ"を見ている
その後、課題と2次面接の合格通知を受け、残すところ最終の社長面接だけになった。
そして、私はこのタイミングで最終面接前だったA社と内定連絡を頂いていた企業に辞退連絡を入れた。繰り返すが、まだJ社は最終面接前である。
J社の最終面接は会社近くの静かな居酒屋で行われた。
1時間くらいだろうか、社長と改めてお互いのことについてお話をして、その場で内定を頂いた。差し出された社長の大きな手の感触は今もなんとなく覚えている。
#なんとなくです。いや、ひょっとしたら勘違いかも。
入社後に知ったのだけれど、この話にはちょっとした裏話がある。実は3回ほど、不合格になるピンチがあったらしい。
1つ目の不合格ピンチ ーSPIの成績ー
1つ目のピンチは1次選考の筆記試験にあったらしい。私のすぐ隣では京都大学の学生が試験を受けていた。彼は、その企業でインターンをしていたこともあり、その優秀さは社員も既に認知しているところだった。
そして、そんな彼よりも私の筆記試験のスコアがよかったらしい。
「―――京大生君の隣のよくわからん奴、やりやがったか?」そんな疑念が採用を担当する社員の脳裏をよぎり、社内で慎重な審議が行われたらしい。
2つの点から私の潔白は証明された。
1つ目は正解、間違いのパターンが京大生君とは一致しなかったこと。2つ目は、筆記試験の途中退席時間よりも早く回答が終了した私は、ペンを置いて顔をあげて暇そうにしていたのを試験官の社員が覚えていてくれたらしい。(その社員は、暇そうにしている私を見て「諦めちゃったのかな~」なんて心配していたらしい)
ちなみに私はSPIだけは得意で、私が選考に参加した企業のうち、SPIを実施している企業では、常に誰よりも早く解いて、一番最初に会場を後にするという妙なこだわりを持っていた。
#ほんとに歪んでたな
2つ目の不合格ピンチ ー課題ー
2つ目のピンチは、私が提出した課題にあったらしい。確か課題のテーマは、その企業の「学生向けサービスをあなたの大学で広めるならばどうするか?」的なものだったと思う。提出フォーマットは自由、ボリュームも自由だった。
私はpptで企画の概要と骨子だけをまとめ、提出した。全部でスライド7~8枚だったんじゃないかな。それぞれのスライドに2行くらいの文章がちろっと書いてあるだけ。
これの課題を見た営業部門のマネージャーが「こんなやる気のない奴はいらん!」とNoを宣言したらしい。ちなみに他の学生が提出したものには、同じ大学に通う学生へのアンケート結果だったり、データ的なものがバッチリ入っていたらしい。当の私は「この会社に入ることが確定」している(あくまで自分の中で)ので、課題は多少いいかげんでも大丈夫と思い込んでいた。そういう意味では、営業マネージャーの評価はごもっともだったのである。
そんな中で2人の社員の方が、私の採用をサポートしてくれた。
1人の社員はかなりベテランの凄腕営業担当の方で「俺が学生でもこんな課題やらん」と言い切ってくれ、面接での評価を優先してくれた。
もう1人の社員は懇親会という名の飲み会の際に、他の学生が落とした箸袋をスッと拾い、空いているグラスを見つけてはこまめに注文を取っている私を見て「コイツは将来化ける(かもしれない)」と感じて、採用すべきだと後押ししてくれたらしい。
#ベンチャーの採用ってなんというか人間臭い
3つ目の不合格ピンチ ー社長面接ー
まぁ、最後はピンチというわけではないのだけれど、2次面接が終わった時点で、私の採用の可否は社内でキッパリと評価が分かれて物議を醸していた。
そこで、最終的な判断は全て社長に委ねられた。社長が実際に話して、いけると思えばその場で採用。ダメだと思ったら不合格。ということで、社長は全社員から判断を一任されて面接に挑んでいた。
ちなみにこの社長は偉そうなところが全くなく、周囲の意見に実直に耳を傾け、誠実に物事に向き合う人徳者だったこともあり、より強い責任感を感じて緊張していたらしい。
私は私で、他の選考を全て辞退して、入社する気で最終面接に挑んでいる。万が一不合格にでもなろうものならば、もう何を目指していいか分からない状況なので、それなりに緊張していた。
結果としては、社長は私のことをヨシとしてくれて、その場で固い握手を交わし、乾杯のビールも頂いた。
#感覚としてはプロポーズをOKされたあとのハニカミみたいな感じ(恥)
今こうやって思い返しても、よく私を採用したなと思う。それくらい私は歪んでいたし、勘違いしていた学生だった。けれど、私にとってはあの会社で働いたことが社会人としての全ての原点になっているし、間違いなく礎となっている。
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普段は新卒採用は学生と企業のどちらにとっても運要素の強いものだとか、面接官のドライな評価とか、そんなことに目を向けてしまっているけれど、こうやって思い返すと、就職活動も新卒採用もとっても大事な機会なんだと改めて思う。
「箸袋を拾ってビールを注文したら内定が出た」なんて言うつもりはないけれど、何が自分の人生に影響を持つのか、どこでどう繋がるのかなんて、本当に分からない。
だとするならば、目の前のことに対して、自分の流儀で後悔無くやるしかないなと再確認した今日この頃です。
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