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昔のオモチャ屋のクレーム処理。
前回、クレーム対応の話を書いていたら浮かんできた思い出話です。
昔々、南大阪の地方都市のオモチャ屋で店長をしていました。
クレーム対応 (あえて苦情処理とは記しません) は、店長の仕事でした。
ボクはガラスのハートなので、当時、クレーム対応で、度々メンタルをヤられていました。
オモチャは、かわいい雑貨達と違ってクレームが桁違いに多く、商品のクレームに、南大阪の地域性も加わって、厳しく理不尽なものも多く…
同チェーン店で店長していてた先輩にグチをこぼしていた時に聞いた、先輩のエピソードです。
年の瀬も押し迫ったある日のこと、
テレビゲームが使えん!
とクレームの電話。
電話を受けたスタッフが、アッという顔で、先輩に取り次いできました。
クレームの主は、先輩の前の店長の時に、不良品交換しようにも在庫がなくて、返金処理で拗らせて、お詫びに行って、持っていった菓子折りを投げつけた伝説の人。
気に入らん店なら来なけりゃエエやんと思われるかもしれませんが、ネット通販がまだ浅い時代、オモチャを買うのはオモチャ屋で、そこら中にオモチャ屋があるわけもなく、買う方も店を選べない時代でした。
オモチャは、店でパッケージを開けてしまって 初期不良をチェックできない商品がほとんどなので、ある程度の不良品発生は仕方ありませんでした。
呼び寄せる能力が有るかと疑いたくなるほど、同じ人に度々 不良品が当たるケース、オモチャ屋あるあるなんです。
でも、それだけ店で買ってくれている裏返しなので、大切にしないといけないお客様でもありました。
電話を取り次いだ古いスタッフから、例の伝説の主ですよ と囁かれた先輩は、くどい謝罪や
商品をお持ちいただければ…
なんて対応はせず、すぐにクレーム主のお宅へ伺う段取りを取りました。
「 さっさと使えるようにせぇや」
部屋に上がらせてもらい、みてみると、型の古いテレビで、接続できる端子が無い、まだまだ映る立派なテレビ、ゲームのために買い換えてくださいとは言える訳もなく、ゲームを繋ぐには、その本体ゲームメーカーのモノでない、別のコネクターがあればなんとか繋げそうか…と。
クレーム主はイライラしていましたが、先輩は意を決して、その旨を伝えました。
「それさえ買うたら、できるねんな」
繋がらなかったらごめんなさい では済まんかも…
と内心不安に思いながら、先輩は店に戻り、コネクター探して、またクレーム主のお宅へ。
でも、さすが理系の先輩、無事接続し、テレビゲームはできるようになりました。
正月に来る孫のために、孫からのリクエストされたソフトと、本体を購入されていました。
前の店長の時のクレームの話も出て、それも孫からリクエストされたオモチャだったそうです。
先輩が、クレーム主のお宅を後にする時には、夜もふけて、閉店時間も過ぎていました。
年が明けて初売りの日、クレーム主から「店長を呼べ」の電話が。
また何か、不具合が?
恐る恐る受話器を取ると、
「帰りたないって泣いとるワ
ありがとう」
孫の楽しい顔が見れたと感謝の電話だったそうです。
接客ミスと商品不良は別物、クレーム主がして欲しい事で、対応をすぐ見極めなアカン。
ただ、謝ったらエエ ちゅうもんとちゃうで。
ステキなアドバイスでした。
クレーム対応は、初動が大切と言われていました。
クレーム電話が来たら、スタッフに任さずにすぐ引き継ぐルールに。
初動の見極め、おかげで、大きなトラブルもなく店長時代を過ごせたと思います。
平成の始めの頃のスキルです。
最近の小売店さんは、クレーム処理が本部一括とか、店で受けてもメールのみとか、電話でも自動音声の受け答えなんてとこも多くて、味気ないけど、その方がクレームする方も熱くならずに済むのかもしれません。
もう、時代おくれのスキルは無用の長物でしょう。
ちょっと、寂しい気もします。