旨い飯と金魚風呂|湯田川温泉・九兵衛別館 珠玉や
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今回の旅行、日数があることから、基本的に宿泊は安さ重視のビジネスホテルや宿を利用してきたのだけど、1泊だけは贅沢をしようということで旅の最後に選んだのは、鶴岡市街地から車で約15分に位置する湯田川温泉にある「九兵衛別館 珠玉や」さん。
鶴岡周辺には、他にも「湯野浜温泉」「あつみ温泉」 「由良温泉」など、さまざまな温泉地があって非常に悩んだけれど、今回は街からのアクセスの良さと、イメージ上でのこじんまり感が気になって「湯田川温泉」に決めた。
決め手となったのは、館内すべてのお風呂が貸し切りであることと、とにかくお料理の評判がよかったこと。
旅行では、現地のローカルなお店を楽しみたいということもあって素泊まりにすることが多いんだけど、ここぞという時は思いっきりのんびりし尽くしたいので朝晩の2食を付けたい。
というわけで、お料理の美味しさについては必須条件。
まあこればっかりは好みもあるからね。あまり期待しすぎないようにはしているけれどね。
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とりあえず、チェックインして早々、まずは1番広い貸し切り風呂へ。
珠玉やの貸し切り風呂は全部で3つあり、予約不要で、空いていれば何回でも入浴できるというシステム。
週末や連休は混むようだけど、もともと部屋数がそこまで多いわけではないし、この日は平日ということもあり、ピーク時以外はすんなり入れた。
予約制は確実だけど、どうしても予約の時間や利用時間を意識してしまい、気持ち的にどこかゆったりし切れない部分があったので、個人的には「空いてたらオッケー」システムはわかりやすいし気楽でいい。
こういうのは人や。
想像以上に広くて、とても清潔感があり、「これ、貸し切っちゃっていいの…!?」という贅沢感にテンションが上がる。
まだお湯替えしたばかりだからか、なんとなくぬるめに感じたけど、この日は夏のように暑かったので、最初に入るお風呂としてはちょうどいい温度だった。
さっと楽しんだら部屋に戻り、道中で買ってきたお酒やおつまみをちょこっと入れる。
外はまだ明るい。楽しい。
少し休んだら、夕食前に外へ繰り出す。
九兵衛別館に泊まると、本館である「九兵衛旅館」、系列?なのか「ますや旅館」のお風呂、計9つものお風呂を利用することが出来るというかなりお得感満載なサービスがある。
そこで、どうしても行きたかったお風呂があるので、近くの散歩がてら、九兵衛旅館へ。
吉永小百合や藤沢周平にもゆかりのあるお宿らしく、写真やポスターなどがあちらこちらに貼ってあった。
ロビーのテラス?ウッドデッキ?から見えるお庭が見事で、見惚れる。
そこまで広くはないけど、高さと奥行きを存分に活かしており、とても素晴らしい。
さて、こちらで私がどうしても入りたかったのが、大きな水槽に入った金魚を眺めながら入ることが出来る金魚風呂。
時間による男女入れ替え制のため、私が入れる時間は夕飯前のこのタイミングのみ。
こちらは貸し切りではないのだけど、なんとも中途半端な時間だったからか、貸し切り状態で堪能することができた。
お金持ちの殿様になったような気分で、お風呂に入る。
金魚というのは特に珍しい生き物ではないけれど、生まれてこのかた、裸で金魚を眺めたことは無い。
たっぷりのお湯に体をゆだねながら、目の前でひらひらと薄絹のような尾ひれを揺らす金魚と、循環ポンプのボコボコと浮かぶ泡を眺めるというのは、なんとも形容しがたい道楽だなあと、愉快さと困惑が同時にこみあげた。
金魚を眺めながら入ること以上のことは何もないのだけど、とても貴重な体験だった。よかったよかった。
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街中には共同浴場が2つほどあり、こちらは平日ということもあってか、観光客っぽい人はほぼ見られず、地元の方々が利用していた。
地元の人がひっきりなしに利用するということは、それだけ求められる場であり、人々の暮らしにしっかり根付いていることを意味する。
建物も、外からちょっとみただけでもとても綺麗に管理されていて、遺産的な存在ではなく、ちゃんと生きている場所なのだということがよくわかった。
さすがにお風呂に入る時間はなかったけれど、ますやさんにも行ってみた。
コロナウイルス流行を経て、すっかり数が減った印象のある飲泉所。
あれば飲んでみたくなる性分なので、こちらには温泉を飲みにだけ寄らせてもらった。
味はまあ、なんとも言えない、これがミネラルなのか硫黄なのかなんなのかわからないけど、舌にアピールしてくるザ・温泉の味としか私には表現できない。
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さて、お待ちかねの夕食!お腹ペコペコ!ワクワク!
間仕切りのされた半個室のようなお食事会場で、案内された席に着くと、このしつらえである。
お食事会場に先付けが置かれてあるのはよくあることだけど、きちんとほこりよけされているうえに、それが無機質なフィルムや業務的な紙でないのは格段に嬉しい。
それから現れたお料理の見た目の楽しさに、口にする前からゴキゲンになってしまう。
どれも丁寧でバランスの良い味付けで、これだけでお料理の評判のよさが納得できるほどだった。
とっても美味しかったけれど、一番面白かったのはお餅にカラリと揚げた鶏肉が乗ったものをみたらし風のソースでいただくというこちら。
上に飾られているのは、揚げた稲穂。
「弾けたお米の部分は、ドン菓子感覚で食べることもできるし、食べなくても構いません」とのことだったので、もちろん迷わず食べる。
試しにと、硬そうなもみ殻の部分も食べてみたけど、サクサクに揚がっていたから思いがけず食べられてしまった。笑
大胆だけど、丸ごと季節感のあるアイデアは、食べていてとても楽しかった。
ちなみに、味もめちゃくちゃ美味しかった。
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お腹いっぱいになった後は、館内をちょっとお散歩。
図書室?のようなスペースもあり、この日は誰も利用していない気配だったけれど、レトロモダンな雰囲気で居心地は良さそうだった。
湯田川温泉は、街としてはさほど商店も無く、居酒屋も通りに1件ほど。
これは後から知ったのだけど、どうやら食事付きで滞在される方がほとんどらしく、それもあってかはわからないけど、ここの温泉街はいずれの旅館も全体的にお料理が美味しいらしい。
食後の運動も兼ねて、夜も周辺をお散歩してみたけど、よその温泉に入りに行く宿泊客と公衆浴場に通う地元の方が歩いているくらいで、特に賑わっているという感じもなかったけど、変に観光地化されていない雰囲気も個人的には好き。
というか、すれ違う人たちが、老いも若きもわりと気持ちよく挨拶をしてくれるのが印象的だった。
思春期真っ盛りそうな高校生くらいの男の子も「こんばんわ!」と気持ちよく返してくれて、よそ者ながら、いい街なんだなとぼんやり思った。
寝る前にまたゆっくりお風呂に入り、ここちよく眠りにつくことができた。
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起き抜けの寝ぼけた頭のままだって、さっとお風呂に入れるのも温泉宿の醍醐味。
第1希望のお風呂に先客がいたため、もう1つのお風呂へ。
こちらは、最初に入ったところより小さいと言われていたけど、貸し切るには十分大きい。
寝ぼけたまま、さっと体を洗ってお湯に浸かると、じわじわと頭と目がスッキリしてくる。
普段、こんな風に朝からゆっくりお風呂に浸かる余裕はないからこそ、じんわりゆっくり体を目覚めさせる贅沢さが身に沁みる。
それから、お部屋でまたゆっくりすごしてから朝食をいただきに。
ああ、朝から眩しい。
そういえば、宿に書いてあって知ったのだけど、珠玉やさんは
●じゃらん2023泊まって良かった宿大賞【総合】第2位
●じゃらん2023泊まって良かった宿大賞【朝食】第3位
を東北部門で受賞していたらしい。
え、すごすぎない!?あと夕食も美味しかったよ?
でもそうなるといよいよ朝ごはんが楽しみだね!!!!
なんて夫と話しながら、用意されていた朝ごはんがこちら。
華やか~!そしてやっぱり嬉しい和定食。
和洋中なんでもごされの朝食バイキングも楽しくて大好きだけど、ごはん&味噌汁の鉄板コンビに、焼き魚、卵、納豆、お漬物がベースであれば、他にどんな料理が並ぼうと、非常に堅い。強い。
右にあるのはとろとろほろほろのお豆腐。席についてからアツアツを出してくれて、朝から顔がほころんだ。
納豆も、庄内の郷土色である塩納豆。食べたかったヤツ!嬉しい!
塩漬けにした納豆と麹、昆布を混ぜたもので、粘り気が少なく、ごはんに良く絡んでとても美味しかった。もちろん帰り道のスーパーで購入した。
朝ごはんも本当に美味しくて、従業員の方もとてもほどよい距離感と親しみやすさで接していただき、私の顔はずっとゆるみっぱなしだった。
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そして、最後のお別れお風呂タイム。(何それ)
建物の最上階にあるお風呂は昨夜も入ったのだけど、やはり朝は景色がとても爽やか。
窓を開け放って半露天風呂状態にすると、涼しい秋の風が吹いてきて、爽やかさが倍増する。
景色の奥には、鳥海山。
この日は空がかすんでボケていたけれど、うっすらと稜線が見えた。
我が家としては奮発したお宿だったけど、それ以上のおもてなしと温泉とお食事を堪能することができて、とっても満足度の高い宿泊となりました。
そして最終日!今日も天気がすこぶる良さそう!
帰宅するのは何時になることやら…
つづく