震災復興
近年、日本では災害が発生すると、メディアを皮切りにあらゆる場面で“復興”という言葉が使われます。災害支援を行う際も、そのキーワードを掲げて活動が行われるわけですが、「何をすることが復興につながるのか?」「何をもって復興したと言えるのか?」が共有されぬまま時間だけが過ぎていく現状があります。そのような状況を踏まえ、自治体職員やNPO団体、ボランティアなどの災害支援者側が活動をする上で参考になる復興の“知識”や“施策”を掲載します。
自然災害は完全に防ぐことはできません。地震災害の場合は予測することも不可能です。だからこそ被害をできる限り減災するためには、“事前”に復興の定義を共有し、可能な範囲で「事前復興計画」を立てておくことが望まれます。
今もなお復興過程にある東日本大震災の被災地はもちろんのこと、首都直下型地震や南海トラフ地震などが予測されている日本の未来において、少しでも役立つことを切に願っています。
復興のヒストリー
“復興”とは何か。
広辞苑によれば、“復興”とは「ふたたび盛んになること」と定義され、“復旧”とは「もと通りになること」とされています。まさに、復旧は被災の影響を「ゼロ」に戻していく過程であり、復興は被災前の状態より「プラス」の状態をつくり出していくものだといえます。しかし、実際の災害現場においては、辞書のように簡単に“復興”を定義することはできません。
例えば、河川の増水などによって橋桁が落ちた場合、通常は橋を修復する「復旧作業」のみが行われ、「復興計画」が立てられることはありません。つまり、「自然災害=復興」という図式ではなく、“被害程度”によってその判断は変わります。また、復旧には「もとに戻す」という“基準”が存在しますが、復興を掲げた場合には、どの程度までプラスな状態を目指すのかといった明確な基準は存在していないのです。
そのような中、自然災害において“復興”の必要性が考えられるようになったのはいつの頃からなのでしょうか。
“復興”の必要性
日本の災害史の中で“復興”という概念が明確に使われたのは、1923年9月1日に発生した『関東大震災』だったといわれています。マグニチュード7.9、死者約10万人、家屋倒壊や焼失を含めて30万棟以上の被害が出た大規模災害でした。
当時、内務大臣に就任した後藤新平は『復興院』という組織を立ち上げ、震災翌日には「東京を旧状のまま再建させない」と『東京復興4方針』を打ち出して遷都を否定。30億円もの復興費をかけ、欧米の最新の都市計画を適用した「復興計画」を実施しました。その背景には、首都・東京が壊滅的な被害を受けた中で「もと通りにするだけで良いのか?」「同規模の災害が起きたらどうするのか?」という議論があり、もとに戻すという“復旧”の思想ではなく、災害以前よりも改善された新しい都市を目指す“復興”の必要性が認識されたのでした。
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