きみは「グミ・チョコレート・パイン」を知ってるかい
「ジャンケン・ポン!」
「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」
夏の夕暮れ、いつもの商店街を歩いてると小学生が懐かしい遊びをしていた。
誰もが一度はやったことがあるであろう、じゃんけんをして、グーで勝ったら「グ・ミ」とニ文字のニ歩、チョキで勝ったら「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」と六文字の六歩すすめるという、有名な遊び。
「今の時代でも小学生はこの遊びをやるんだ」という驚きと懐かしさ、それと同時に十五歳の頃に読んだ小説「グミ・チョコレート・パイン」を思い出した。
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これはミュージシャンで作家である大槻ケンヂさん(筋肉少女帯、特撮)が1993年〜2003年で出版した、半自伝的な小説。
ぼくの周りでグミチョコを読んだ人は、ほぼ100%の確率でバンドを組んだ。
そしてロックをやった。
思えば自分の中での“漫画ではなく小説を読む”、という原点であり、十五歳という思春期には充分すぎるほどの衝撃を与えた。
「厨二病」という言葉があるが、
まさにその入り口で手に取る、こじらせ期〜入門編〜とも言える一冊だった。
「これ、俺の為に書いてるよね?」
読んだ人がほぼそう思える(はず。少なくとも僕は思った。100回思った。)ほど、
魅力的で甘酸っぱくて少しドロっとした青春ストーリー。
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主人公の大橋賢三(おおはし けんぞう)を中心とする主要人物はアングラロックバンド、B級映画、小説などが大好きで、周りのクラスメイトより自分は知識があると思うがゆえに、温度差を常に感じており、サブカル好きだったら誰もが共感できる設定。
五千四百七十八回。これは大橋賢三が生まれてから十七年間の間に行ったある行為の数である。ある行為とは、俗にマスターベーション、訳すなら自慰、つまりオナニーのことである。—『グミ・チョコレート・パイン グミ編 (角川文庫)』大槻 ケンヂ著
この書き出しはまさに名曲の歌い出しのような、思春期の少年少女の心をグッと掴む言葉だと思う。
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「グミ編」「チョコ編」「パイン編」と三部作であり、全て読むと読み応えのある長さなのだが、読書に慣れていなかった十四歳でも読める読みやすさだった。江口寿史さんの表紙も素晴らしい。
十代の頃は毎週必ずブックオフを数軒はしごして、掘り出し物のCDや漫画、小説などを買い漁っていた。
100円コーナーにグミチョコレートパインがあったら持っていても見つけ次第に買って、友達にあげたり、本棚に並べたりしていた。
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今、あの頃の僕のような十代はグミ・チョコレート・パインを読んでロックをやらないのだろうか。
マイノリティに憧れる自分に酔って、自虐的なナルシズムに浸らないのだろうか。
「俺はみんなと違う・・・」とか「誰にもわかってもらえない・・・」とか思いながら詩を書き、数年後それを読んで死にたくならないのだろうか。(すべて体験談)
作中にヒロインである山口美甘子の「人生って、グミ・チョコレート・パインだと思うの」という名言は今でもはっきりと覚えてる。
十代の頃に触れることができて良かったと、
大人になって読んでもあの時の衝撃は超えることはできなかったはず。
夏の夕暮れ、商店街でグミ・チョコレート・パインで遊んでる小学生を見て、そんなことを思った。
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