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家族の元気は、子どもの元気につながっている。
私は、島根県雲南市にある「おんせんキャンパス」で働いています。地域の教育支援センターであるおんせんキャンパスは、さまざまな理由で学校から足が遠のいてしまった子どもたちが通う場所で、私は家族支援と食育プログラムを担当しています。
「子どもたちのための施設で、家族の支援もするの?」と思われる方もいるかもしれません。“家族の元気が、子どもの元気につながる”ことを私が実感したのは、ある家族との出会いがきっかけでした。
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さやかさん(仮名)は、中学に入学してすぐに学校に通えなくなり、おんせんキャンパスを利用するようになりました。当初は、不登校になったさやかさんに家族もどう接したらいいのか分からず、家族みんなが気を遣っている様子でした。
おんせんキャンパスは山間部にあるため、基本的に家族の送迎が必要です。さやかさんの場合は、一緒に暮らすおばあさんが送迎をされていたのですが、おばあさんの表情がいつも不安そうで気にかかっていました。
何度かおんせんキャンパスに通ううちに、さやかさんはお菓子作りに興味があることがわかり、一緒に作るようになりました。最初に作ったのはティラミス。その日のお迎えはお父さんが来られたので一緒に食べてもらったところ、涙ぐみながらうれしそうに食べていました。
家族に喜んでもらえた、役に立てた!と思えたのでしょうか。それから、さやかさんは家でもお菓子を作るように。
そうすると、家族が一緒に買い出しに出かけたり、さやかさんが作ったお菓子を近所の親戚にも配りに行ったりするなど、家庭のなかにも変化が見られるようになりました。家族の変化として私が印象的だったのは、送迎に訪れるおばあさんの表情が柔らかくなっていったことでした。
そのうちに、さやかさんは他のことに対しても少しずつ自信や意欲を取り戻していき、学習など他のプログラムにも参加するようになりました。高校受験では、人と話すことの苦手さを乗り越えて面接試験のある学校に合格し、今は高校に通っています。
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保護者にとって、子どもがある日突然学校に通えなくなるのは、すごく不安なことです。でもその不安は、きっと子どもにも伝わります。
私たちは家でも学校でもない第3の居場所(サードプレイス)を届けていますが、第1の居場所である家庭の居心地が良いことが、何よりも大切だと思っています。
そのために私は、家族の不安も受け止められる存在でありたい。子どもと向き合いながらも、子どもの一番近くにいる家族も一緒に元気になれるよう、これからも関わっていきたいなと思っています。
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今回のコラム担当:佐々木 有子(ささき・ゆうこ)/おんせんキャンパス
児童書の作家として活動するかたわら、2019年にカタリバ入職。文京区青少年プラザb-lab(東京都文京区)を経て、2022年よりおんせんキャンパスで家族支援や食育プログラムなどに携わっている。児童書を書くうちに、学校外の「教育」と「いまの子たち」をもっと知りたいという思いを抱き、カタリバへの入職を決めた。