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おすすめ刀剣本②「ふでばこ 39号」

日本刀雑誌の中ではまさにトップクラスの内容充実度を誇ります。
内容は初心者向けで日本刀に無知な人でも読むと日本刀に関する一通りの知識を付けられるという代物。

日本刀についてちょっと勉強を始めようと思っている人がいたら、私なら最初の1冊はこれをお勧めします。
私の場合、初心者向け刀剣書を10冊くらい買いましたが、たぶんこれを1冊読んだ方が理解が早かったです。

・ふでばこ

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1.どんな本?

2019年10月末に発売された比較的新しい雑誌です。
日本刀の歴史から、刀剣用語、5ヶ伝の違い、製鉄方法、作刀方法、研磨方法、鑑賞方法、刀装や金工の話まで、日本刀に関わる内容が全て網羅されています。
しかも、それをたった110ページ位に納めているのが凄い
イラストや写真が一緒なのでとても分かりやすいです。

その一例として、良く話題になる「沸と匂の違い」について。
大抵の刀剣本ではイラストで描かれていて、粒子の大きい方が沸だ、みたいな書き方をされています。
でもこういった内容だけでは本物の刀を見た時に結局分かりません。


ですが、この本だと…

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実際の写真が綺麗に掲載されているので、イラストの物を見るよりも理解しやすいです。

次に地鉄についても同様です。
文章だけで「木目のような」とか言われても初心者の頃の私にはさっぱりでそういう本が多いのも事実ですが、この本のように載っていればぱっと見で分かります。

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2.目次

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3.一部内容紹介


・分かりやすいイラスト付き

刀の各部名称などもイラスト付きで分かりやすいです。

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お決まりの時代毎の刀身姿の変化などもちゃんと載っています。

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・五ヵ伝の特徴が簡潔にまとめられている


五ヵ伝(山城伝、大和伝、相州伝、備前伝、美濃伝)の特徴が以下のように簡潔にまとめられています。
(「匂い口が柔らかい」「刃は青白く」など、刀本には刀身を表現する言葉がいくつか出てきますが、こういう見る人によって変わる感覚的な表現は正しい知識を持った人に実物を何振りか見せてもらわないと分からないと思うので、取りあえずはそういうものだとしてスルーして良いと思います)

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・作刀や研磨工程が凄く分かりやすい

日本刀の作刀に付いては工程ごとにカラー写真つき!

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ここまでは他の刀剣雑誌でもたびたび見かけるのですが、凄いのは以下。
なんと研ぎ工程も写真付きで分かりやすく載っています

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更に感動したのが、「作刀と研磨工程が一体になったフローチャート図」
大抵は「刀の作り方」というフローチャートがあったとすると、研ぎの部分は割愛されているケースがままあります。
つまり鍛冶屋だけの仕事が書かれていて、研ぎ師の仕事が省略されています。

しかし実際の刀製作の場では、鍛冶押しが終わった段階で一度研ぎ師のもとへ刀を渡し、研磨してもらうなど、刀工と研ぎ師の間を行ったり来たりします。

この本のフローチャートは一振りの刀が出来るまでの全工程が分かりやすく載っているので、例えば将来的に刀鍛冶さんに注文打ち(刀を作ってもらう)をして、進捗を確認した時にも混乱せず「あぁ今この辺なんだな」とすぐに分かります。

このフローチャート図を見たい方は是非購入して見てみて下さい。


・試し斬りについて

戦が無くなる平和な時代になると、罪人の死体を使い試し斬りなど行われており、これは日本刀の歴史と切っては切り離せない内容です。
その事も載っています。

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・刀装と金工

技術的にも芸術的にも最高の水準にあったと称される幕末から明治にかけての刀装や金工の一部が紹介されています。
内容としてはそこまで濃くはないですが、写真からも驚愕の技術を目の当たりに出来ます。

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・燭台切光忠の再現雑談会

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燭台切光忠の復元に付いて携わった職人たちの話も載っています。
燭台切光忠を「再刃(刃を焼き直して綺麗に研ぐか)」するか「復元(本物を参考にしながらもう一振り新たに作るか)」するか悩んだ話などは読んでいて面白いです。

これほど有名な刀を現代の刀匠に委ねるのはかかる責任が非常に重い事や、焼け身であっても価値の高い文化財ということに変わりはないという事で、復元することに決まったとの事。
どのように復元していくかなど読み応えがありました。

研ぎを担当された以下の斉藤さんは横浜支部の鑑賞会にも時々いらっしゃるので、今度復元の話について苦労話などお聞きしてみようと思います。

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4.終わりに

「もっと早くこの本に出会っていれば」、という感想が初めて読んだときの感想でした。
この本は本当に良書だと思います。
日本刀の本は古い本だと高い傾向もあり、なかなか資金的につらい物があります。
現代でここまで分かりやすい本を出版して下さった白鳳堂さんには感謝です。
他の方々も賞賛しています。


2000円位で買えますので興味のある方はどうぞ!
(個人的には1万円位の価値を感じます)
少し古い雑誌なので、書店ではもう無いかもしれないのでネットで買う事をお勧めします。


それでは皆様良き御刀ライフを~!

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