公共図書館における非正規職員問題に対する再考(加筆修正9月16日)
反論
はてなダイアリー(匿名日記)
図書館司書の非正規問題(9/14追記)
ますだの内容要約
著者は、図書館司書の資格自体を低く評価している。司書資格が取得しやすい一方で、現場ではその資格が十分に生かされていないと感じている。また、特にレファレンス業務などの「専門性」とされる部分に関しても、専門職と呼ぶには不十分だと強調している。さらに、地方自治体や国立図書館での待遇の差も指摘し、資格を持っているだけでは優れた職員になれないと批判している。
非正規職員の待遇改善に対する批判
著者は、非正規職員の待遇改善を求める声に対して批判的であり、非正規職員が非正規待遇に甘んじるのは、彼らの能力が不足しているためだと考えている。そのため、正規職員と同等の待遇を求めることは無理があると主張している。現場での実力不足や意識の低さに対しては、非正規職員だけでなく、正規職員にも厳しい目を向けている。
自らの孤立感と疲弊
著者は、図書館内で意識改革を試みたが、年配の職員や上司層の変わらない姿勢に失望している。「自分だけが頑張っているが、周囲は能力も意識も低く、結果的に自分の努力が報われない」と感じ、その結果、疲弊し退職に至った。これは、職場環境に対する強い不満と、自らの理想が実現できなかったことによる挫折感を示している。
公務員としての職場の在り方に対する疑問
著者は、図書館司書という公務員職において無能な正規職員や非正規職員が数多く存在し、業務の質や職場のモチベーションが低下していると考えている。組織の硬直性や年配職員の変わらない意識に対する不満も抱いており、優秀な職員だけが正当な評価を受けるべきだと主張している。この考え方は、一般企業の能力主義的な視点に近く、公務員という職業の特性と対立している。
最終的な結論
著者は、図書館司書という職業が過大に評価されていると考え、実力に基づいた評価と待遇を望んでいる。しかし、実際の職場は硬直した制度と無能な職員に支えられており、真に優れた人材が正当に評価されない環境に失望している。その結果、著者自身もこの環境に見切りをつけ転職に至った。
意見のまとめ:
著者の意見は、図書館司書という職業の専門性に対する過度な期待に疑問を投げかけ、能力に基づいた評価や待遇が必要だと主張している。しかし、公務員という立場からの視点において、個々の能力主義に依存する姿勢は、公共サービスの一環としての図書館の役割を十分に認識していない可能性がある。著者の孤立感や挫折感も含め、現状の図書館制度や職場環境に対する批判が多いが、解決策については限定的であり、個人的な見解が強く反映されている。
反論文の書き手
私は、ある市区町村立図書館で約3年間、非正規公務員として勤務した。この期間は、非正規公務員が会計年度任用職員制度に移行する前のものである。
大学で図書館司書資格および教員免許を取得し、その後、様々な職務を経験した。具体的には、子ども向け水泳教室の指導員、飲食業、発達障害児支援など、多岐にわたる業務に従事した。また、地域振興を目的としたボランティア活動を通じて、住民サービスの重要性を再認識し、図書館での勤務を志した。勤務前から図書館関係の研修に参加し、勤務後も積極的に図書館見学を行い、図書館運営形態の理解を深めた。
指定管理者による図書館や行政直営の図書館など、様々な形態の図書館を訪問し、それぞれの特徴と課題を学んだ。また、国立国会図書館の特別見学や図書館市民交流団体に参加し、様々な視点を持つ方々との交流を通じて知識を広げた。
これらの経験を通じて、「より良い図書館サービスを実現するにはどうすべきか」を学び続け、実際の勤務館でも、試行錯誤を重ねてきた。この反論では、非正規公務員時代の経験に基づき、ますだ氏の主張に対して見解を述べる。ますだ氏の「優秀な人材が適切な待遇を受けるべきだ」という考えには一定の理解を示しつつ、公務員の役割についても触れていく
公共図書館における非正規職員問題の再考
公共図書館における非正規職員の問題は、幅広く議論されている。しかし、多くの批判は彼らの役割や専門性に対する誤解に基づいている。
市区町村立図書館は、地域に根ざしたサービスを提供しており、住民の日常的な利用を支える役割を果たしている。一方で、都道府県立図書館は地域資料の保存や研究支援といった、より広範で専門的な職務を担っている。これらの業務は単なる事務作業ではなく、利用者の多様なニーズに応じた正確な情報提供や資料管理が求められるため、図書館司書には高度な専門性が必要である。「誰にでもできる仕事」という主張は、図書館業務の本質を見誤ったものである。
ますだ氏は、非正規職員が「無能」だと考えているが、実際には多くの非正規職員が限られたリソースの中で図書館サービスの質を支え、重要な役割を果たしている。特に、地域密着型の市区町村立図書館では、非正規職員がレファレンスサービスや資料選定、イベント運営に携わり、その存在は欠かせない。彼らを軽視することは、図書館全体のサービスの質を低下させるリスクがある。
また、図書館司書資格が比較的取得しやすいという理由でその専門性が低いと判断するのは短絡的である。資格取得後に現場で培われるスキルこそが、実務において重要となる。特にレファレンス業務では、単に定型的な質問に答えるだけでなく、利用者の個別ニーズに応じた情報探索能力が求められる。非正規職員もこれらの業務を日常的に担い、窓口でそのスキルを発揮している。
技術革新の影響
指定管理者制度やAI技術の導入による業務効率化は、図書館業務の改革の一環として提案されている。しかし、技術の導入には慎重な検討が必要である。図書館は公共サービスの一部であり、利用者との直接的なコミュニケーションや地域社会との関わりが重視される場である。AIやロボットがその役割を代替することは難しく、技術革新が公共性やサービスの質を損なうリスクがある。
地域密着型の市区町村立図書館では、利用者との信頼関係が重要であり、その場での人間的な対応が求められる。これを技術で補完することはできても、完全に代替することは不可能である。したがって、効率化を図るにしても、サービスの質や公共性を損なわない範囲での導入が必要である。
以上を踏まえ、ますだ氏の主張に対して、図書館における非正規職員の役割や専門性の再評価が求められる。また、技術革新の導入についても、公共図書館の使命を損なわないような慎重な制度設計が必要である。図書館が今後も地域社会にとって価値ある存在であり続けるためには、全ての職員が尊重され、その専門性が適切に評価される環境を整えることが不可欠である。
評価システムの導入とオープンな文化の形成
図書館業界では、非正規職員に対する評価システムの欠如や低賃金、昇給、昇進の制度がなく、職員のモチベーション低下やサービスの質の停滞を引き起こす原因となっている面がある。図書館業務は高度な専門知識と技能が求められるにもかかわらず、その努力や成果が正当に評価されないケースが多い。特に、非正規職員に対しては評価基準が不透明で、昇給や昇進制度も整っていないため、これがキャリアの発展やスキル向上を妨げている。非正規職員は、自費で研修に参加し、非正規職の任期終了後には新たな図書館に移り、再び一から信頼とキャリアを築かなければならないのが現在の現状である。
民間企業のサービス業と比べても、図書館職員、非正規職員に対するフィードバックや評価は限られた職員に対してしか行われず、それも運営する自治体や、指定管理者により異なり、基準が明確ではない。この問題を解決するためには、全国的な基準がある評価制度を導入し、それに基づく賃金アップが不可欠である。具体的には、利用者アンケートや上司からのフィードバックを取り入れ、職員の努力や成果を公正に評価し、その結果を賃金に反映させる仕組みを構築すべきである。こうした評価制度が整えば、職員は自らの業務に対する評価を正しく認識し、さらなるスキル向上や業務改善に励むことが可能になるだろう。
また、図書館業界における閉鎖的な文化も問題として挙げるべきである。特に、図書館司書同士の結束が強く、外部からの新しいアイデアや技術の導入に対して抵抗が見られることがある。このような閉鎖性は、図書館のイノベーションを妨げる要因となっている。
異業種からの転職者や市民ボランティアの意見を積極的に取り入れる図書館は、たとえば図書館のない地域に新館を建設する場合や市区町村合併で新しい図書館を作る際に、比較的容易にその取り組みを導入できる。
例として「瀬戸内市立図書館」では、市民が主体的に活動するボランティア組織「図書館友の会」があります。
しかし、すでに設置されている図書館にこのような取り組みを導入することは非常に困難である。例えば、その図書館が自治体の直営であれば、正規職員が3年ごとに異動することが多く、ボランティアの運営に必要な技術やノウハウが蓄積されにくいからだ。
また、長年勤務している正規職員も、ますだ氏が指摘するように、固定化した考え方を持ち、加齢や個人の性格などが影響し、その意識を変えることが難しい場合も中にはある。そのため、従来の図書館においては、多様な視点を反映させた職場環境やオープンな文化を形成することが難しいのが現状としてある。また、これを指定管理者制度が導入された図書館でも、同じことがいえる。指定管理者制度そのものが、自治体によるコスト削減を目的とした制度であり、指定管理者は図書館を運営するため、常に経営破綻のリスクも伴う。目に見える成果が得られなければ、指定管理者の契約が打ち切られる可能性や、違う管理者があてがわれる可能性がある。そのため、一定期間で契約が終了する危機があり、指定管理者の変更時には多くの職員が転職する事態があったり、指定管理者も職員の雇用を保証できるわけではない。直営館の場合も、自治体によるが、3年で非正規職員を雇い止めにしたり、契約職員にする制度があるが、大半の職員を継続的に雇うわけではたい。そのため、直営館でも、非正規職員が抜けるとガラッとサービスが変わることがある。
このように、図書館に関わる正規職員と非正規職員の間には、情報や知識の継承に多くの課題がある。また、指定管理者制度に対する意見もさまざまで、図書館業界内では意見の統一は見られない。
さらに、公共図書館では職員が3年ごとに入れ替わるため、専門知識や経験が十分に継承されないことも課題だ。これらの問題を解決するためには、定期的なミーティングや研修を通じて情報を共有し、図書館サービスの質を向上させる取り組みが不可欠だ。
特に、非正規職員にも正規職員と同等に意見を表明できる場を提供することで、チーム全体のモチベーションや連携を高めることが理想ですが、現状ではその間に雇用形態の違いや、正規非正規ということで相手を下に見る風潮があるなど、大きな溝が存在する。
また、ある自治体では、非正規職員が5年以上勤務し、時給職員から月収職員になる制度があるが、異動制度がないために派閥が生じるという問題もある。
公共性と図書館の役割の再確認
公共図書館は、地域住民に対して平等かつアクセス可能な知識を提供する場であり、その役割は公共機関としての重要な使命を担っている。したがって、図書館職員の評価や待遇について議論する際には、公共サービスとしての使命を最優先に考えるべきである。非正規職員の役割や待遇についても、この公共性を担う重要な一員としての意識が必要であり、彼らの貢献を軽視することは図書館の本質を見失うことにつながる。
また、図書館は情報の中立性を維持することが求められており、そのためには職員が公平かつ公正な立場で業務に従事することが不可欠である。正規職員と非正規職員の間で待遇や評価の格差が大きくなり、職員間のモチベーションが低下し、結果的にサービスの質の維持が困難になる可能性がある。この点を踏まえても、全職員に対する適切な評価や待遇改善が必要であり、公共性を損なわない形での制度改革が求められる。
さらに、非正規職員を正規職員に登用するための制度やキャリアアップの機会を増やすことも重要な課題である。現在の図書館業界では、非正規職員がキャリアを積むための明確なルートが整備されていないことが多く、これが職員の成長を妨げている。適切な評価システムとキャリアパスの整備により、職員一人ひとりのモチベーションを向上させ、図書館全体のサービス向上につながる環境を構築することが求められる。
社会的公平性と非正規職員の未来
非正規職員の雇用制度は、図書館業界に限らず日本全体の労働環境においても重要な議題である。非正規職員の増加は、短期的なコスト削減を優先した結果であるが、その一方で、長期的な視点では専門職の人材育成やサービスの質を低下させるリスクがある。図書館においても、非正規職員の待遇改善やキャリア支援が、今後の図書館運営においても継続的な大きな課題である。
社会全体が持続可能な労働環境を実現するためには、非正規職員が正規職員に転換するための機会を作り、キャリアアップのための制度改革が不可欠である。また、非正規職員に対する待遇の改善は、図書館の公共性やサービスの質を高めるためにも重要であり、この点についても業界全体での取り組みが必要である。
公共図書館における非正規職員問題は、図書館の公共性や社会的使命と密接に関連している。図書館が持続可能な運営を実現し、地域社会に貢献し続けるためには、全ての職員が尊重され、その専門性が正当に評価される環境を整えることが不可欠である。また、指定管理者制度や技術革新の導入についても、図書館の公共性を損なわないよう慎重に検討されるべきである。
これらが実行されることで、図書館はその公共性とサービスの質を維持し、さらには向上させることができるだろう。図書館職員が共に協力し、地域社会のために質の高いサービスを提供する未来に向けて、制度改革が進められることを期待する。
指定管理者制度の影響とその課題
指定管理者制度の導入は、図書館を含む公共施設の運営において、コスト削減やサービスの効率化を目的として進められてきた。しかし、指定管理者制度の運用に伴う問題点も無視できない。特に、図書館業界においては、この制度の導入によって、さらに雇用の不安定化が進んでいる。
指定管理者制度のもとでは、図書館業務が外部の企業や団体に委託されることが多く、その結果、職員の雇用形態が契約職員に偏りがちである。これにより、正規職員としてのキャリアパスが限られ、職員のモチベーションやスキル向上の機会が制限されることが問題視されている。
さらに、指定管理者制度による図書館運営では、利益追求が優先される傾向があり、サービスの質が低下するリスクが高い。図書館は本来、公共性を重視し、利用者に対して平等にサービスを提供することが使命であるが、指定管理者による運営がその本来の役割を損なうことが懸念されている。
指定管理者が図書館の運営を請け負う場合、短期的なコスト削減が優先されるため、職員の育成や長期的な視野でのサービス改善が後回しにされることが多い。このため、職員の専門性向上や図書館サービスの質を維持するためには、指定管理者制度のあり方を再考し、運営の透明性と責任を強化する必要がある。
AI技術の導入とその課題
図書館業務の効率化や利便性の向上を目指し、AI技術の導入が進められている。例えば、AIを活用した自動応答システムやデータ分析による利用者のニーズ把握、蔵書管理の効率化など、さまざまな分野でAIの導入が検討されている。
しかし、AI技術の導入には慎重な姿勢が求められる。図書館は情報提供の場であると同時に、人と人とのコミュニケーションを重視する施設でもある。AIによる自動化が進みすぎると、利用者との直接的な交流や対話が減少し、図書館の「人間的な」サービスが損なわれる可能性がある。
特に、レファレンス業務では利用者が具体的な質問をし、その背後にある意図や文脈を汲み取ることが重要である。このような高度なコミュニケーションは、AIだけでは完全に代替できない。したがって、AI技術は図書館の補完的なツールとして導入されるべきであり、利用者との直接のやり取りを大切にする図書館職員の役割は引き続き重要である。
また、AI技術の導入にはコストが伴い、導入後の維持管理も必要となる。そのため、図書館が本来の公共サービスを維持しつつ、AI技術を適切に活用するためには、導入目的と効果を十分に検討する必要がある。
非正規職員の役割とその重要性
ますだ氏の主張において、非正規職員が「無能」と見なされる点に対しては強く異議を唱えたい。実際、多くの非正規職員は限られたリソースの中で重要な役割を果たしており、図書館サービスの質を維持するために不可欠な存在である。
特に、市区町村立図書館では、非正規職員がレファレンスサービス、資料選定、イベント運営など、利用者と直接関わる業務を担当していることが多い。これらの業務には高度な知識とスキルが求められ、単なる「事務作業」ではない。非正規職員は利用者との日々のやり取りを通じて、現場で培ったスキルを活かし、柔軟な対応を行っている。
図書館サービスの本質は、利用者に必要な情報を提供することであり、そのためには現場で働く職員一人ひとりの努力が重要である。非正規職員であっても、正規職員と同じように重要な役割を担い、図書館サービス全体を支えている。この点を無視し、非正規職員の専門性を軽視することは、図書館のサービス向上を阻害するものである。
非正規職員が正規職員になるための機会を拡充し、彼らの努力や成果が正当に評価される環境を整えることは、図書館全体の発展にとって不可欠である。
最終的な考え方
これまで述べてきたように、公共図書館における非正規職員問題や指定管理者制度の課題は、図書館の公共性や社会的使命と密接に関連している。図書館が持続可能な運営を実現し、地域社会に貢献し続けるためには、全ての職員が尊重され、その専門性が正当に評価される環境を整えることが必要である。
また、AI技術の導入に関しては、サービスの質を損なわない形での活用が求められる。技術革新が図書館の公共性や人間的な側面を損なうことがないよう、慎重な検討が必要である。さらに、非正規職員のキャリアパスを拡充し、正規職員と同等の評価を受けるための制度改革が重要である。
図書館が地域社会の知識基盤としての役割を果たし続けるためには、全職員が協力し、公共性を最優先に考えた運営が求められる。これらの提言が実行されることで、図書館はその公共性とサービスの質を維持し、さらに向上させることができるだろう。
この考えに基づき、図書館業界全体での改革が進むことを期待している。今後も、利用者にとって最も価値あるサービスを提供し続けるため、職員一人ひとりが成長し、共に学び合う環境を整えていくべきである。