見出し画像

『1984年に生まれて』 郝景芳 


文化大革命に翻弄された両親から生まれた子、雲雲。

思春期を過ぎ、大人になっても自分の居場所、生きる意味が見つけられず、悶々とした日々を送っている。

現実(社会)に根を下ろすこと=心の自由が奪われることという考え方に囚われた彼女はある男性との失恋により、精神に不調を来す。


療養により過去を顧みる時間をとれたことで、ある皮肉な事実に気がつく。
社会に囚われない生き方を求めた結果、社会よりもミクロなもの、1人の男に無意識に囚われていたという事実に。


“自分が想像している自分は本当の自分ではない“

“なぜなら、外から自分を見ることは不可能だから“

自らの心が生み出した偶像、初老の紳士・ウィンストンとの対話により、自分らしい社会との向き合い方が見えてくる。


どこにいるか、なにを成すかではなく、自分が自分でいることの自由を理解した雲雲。

社会に所属しても変わらない自分でいることはできる。



最終章で明かされる衝撃の事実。

どちらがフェイクか?

物語と本当の人生との差は何か?

本当にそんなものあるのか?



哲学的な問いが散りばめられているのに、小説としての面白さも成立している。

主人公の人間性や考え方に共感できる部分が山ほどあって、自分の人生の道標を探すような気持ちで、貪るように読み進めることができた。


まだはっきり見えないけれど、私も何かを掴みかけることができた気がする。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?