【短編小説】 隠して
隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だったし、昼休みはどこかに行ってしまうし、夏のプールの授業はアレルギーの関係だかで見学だった。初めは花粉症かと思っていたのだが、うだるような暑さの夏の日もマスクを着けたままだったので少し気味が悪くもあった。彼女の席は直射日光が当たる窓際の席なのに、汗一つかいていなかった。胸元まで伸びた髪を結わえることなく、背中に流し、時折重力に負けてはらりと前に垂れる。結わえたらいいのにな、なんて思うがそれを