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美術展観賞記録

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展覧会に行ったときの感想文。Instagramに投稿しているものと文章はほぼ同内容ですが、写真および作品解説を追加していることがあります。
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2024年12月の記事一覧

「吉田博 今と昔の風景」(MOA美術館)

「吉田博 今と昔の風景」(MOA美術館)

 今年最後の展覧会は熱海へ。MOAの場合、普段なら開館直後から1-1.5時間ぐらいはそれほど混雑とは無縁で楽しめるんですけど、今回(12/30)は開館直後からそこそこの人の数。いかにも年末、といった感じです。

 個人的にMOAの吉田博展は今回で4回目ぐらいの訪問で、何度見ても新品同様の保存状態の良さ、そして度重なる摺りによって線が潰れておらず、より吉田の意図に近いと思われるクオリティの高さはピカ

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『藤沢と江戸の出版事情 蔦屋重三郎と絵師たち』(藤沢浮世絵館)

『藤沢と江戸の出版事情 蔦屋重三郎と絵師たち』(藤沢浮世絵館)

江戸中期の版元である蔦屋重三郎(1750〜1797)をフィーチャー。浮世絵というと広重や国貞(三代豊国)なんかの歌川派の作品を観る機会が圧倒的に多いんですが、今回はもう少し前となる18世紀後半、たとえば喜多川歌麿や東洲斎写楽、葛飾北斎やその師匠である勝川春章、北尾重政といった絵師が中心。歌川派はその元祖である歌川豊春がようやく登場しはじめたぐらいの時代です。

こうして観ると、確かにこの時代の画面

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「「不在」トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル展」(三菱一号館美術館)

「「不在」トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル展」(三菱一号館美術館)

三菱一号館美術館にとっては初となる現代芸術展。コロナ禍で開催延期となり、4年越しに実現した展覧会となります。今回は後半、カルのパートに話題を絞って。

最初に展示された映像作品《海》は、イスタンブールの海を前に、人生で海を観たことがない人達に海を見せるというもの。海を観たあとにカメラのほうを振り返る人々の表情は様々で、涙を浮かべる人もいれば表情を崩さない人も、中にはカル独特の「システム」に困惑して

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「歌舞伎展」(川崎浮世絵ギャラリー)

「歌舞伎展」(川崎浮世絵ギャラリー)

 タイトルの通り歌舞伎をテーマに、葛飾北斎、三代歌川豊国(初代国貞)、歌川国芳の三名を中心に構成。作風としてスタンダードな豊国作品が多かった印象でしょうか。個性的な作家に多く触れれば触れるほど、かえってスタンダードな存在がありがたかったりするのですが、ただ、今回に関しては北斎・国芳の作品に興味を持ちました。

 北斎にかんしては「浮絵」と呼ばれる、一点透視図法を用いたものなのですが、北斎のそれは少

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