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特別じゃないけれど良い日

今朝は、まずこどもたちを日本語補習校へと送り出し、すぐに帰宅。洗濯物を干して、朝ごはんの洗い物を済ませ、散らかったリビングテーブルを片付けた。
朝の家事を終え、家から歩いて15分ほどの距離にある小さなローカルマーケットを覗いた。かわいちクリスマスリースを見つけて、それが欲しかったのだけれど、お値段がちっともかわいくなかったので断念した。他にも素敵だなと思うジャケットや、アートもあったけれど、やはりどれもとんがった価格だったので、丸腰の私は、そそくさとそのマーケットを後にした。

マーケットの向かいにあるリサイクルショップにも立ち寄った。そのお店の存在に気がついてからしばらく経っていたのだけれど、今日が初めての訪問だった。無造作に積み上げられた食器や家具。お世辞にもきれいとは言えない店内だけれども、その雑然とした雰囲気は嫌いじゃなかった。ゴチャゴチャした食器棚に、5つ揃いのカップを見つけた。めっちゃ好み!というほどではないけれど、レトロな模様、大き過ぎず小さ過ぎないちょうど良いサイズ感がなかなか悪くない。値段シールには「5cups£2」と書かれていた。5個で2ポンド、安いではないか!ということで購入。お店のおじさんの包装の仕方があまりに雑で、プチプチの無駄遣いが過ぎたけれど、静かに見守っていた。

リサイクルショップを出て、今度はそのすぐ近くにある雑貨屋を訪れた。その店は何度か訪れたことがあったけれど、今はクリスマスシーズン真っ只中ということで、クリスマスグッズや、クリスマスギフトがたくさん置かれていた。その中に、ズッキューンと私の胸をわしづかみにするものがあった。Nativity(キリスト降誕劇)のフェルト人形だ。なんとも言えない素朴な表情、フェルトならではの温かみが、ものすごくかわいい。欲しい!と思ったのだけれど、これもまた、その愛らしい見た目とは裏腹の攻めたお値段。いや、まあ手作りのものだから、手間ひまがかかっていて、値段が高くなってしまうのは仕方のないことだ。相応の対価が支払われるべきものだ。けれど、私にはその対価を支払うだけのお金がなかった。私が器用だったなら、自分で作ってみようと思うのかもしれない。しかし私は、知る人ぞ知る超不器用人間。こんなん作れまへん。諦めて帰ろ。

ということで、帰路に着いた。すっきりと晴れた青空だった。欲しいものを全て手に入れることはできなくても、こうやって青い空を見上げるだけで満たされるなぁ、と思う。とか言いながら、帰宅後、さっき見たNativity人形がやっぱり気になりすぎて何度も写真を見返した。やっぱりかわいいぜ。欲しいぜ。欲深い私。

そうこうしているうちに、こどもたちが補習校から帰って来る時間が近付いていた。お迎えは夫に頼んでいたので、私は家で昼ごはんを作らなくてはいけなかった。昨日のタイカレーの残りを消費しなくては。しかし米はもうない。ライスヌードルを茹で、玉ねぎとエノキを炒め、そこにカレールーの残りを投入し、茹で上がった麺を絡める。ナンプラーで味を少し足す。できあがり。手抜き料理だったけれど、思いのほか美味しくできて、夫にもこどもたちにも好評で、気分が良かった。

昼食後、車で10分ほどの距離にあり、以前から気になっていた日系ベーカリーにシュトーレンを買いに行った。私はシュトーレンが好きなのだ。イギリスのクリスマスと言えば、ミンスパイやクリスマスプディングが定番らしいが、やはり私はシュトーレンが食べたかった。初めて訪れたベーカリーには、アンパン、食パン、カレーパン、ジャムバタチーズららんらーん、じゃなくて、ジャムバタチーズはなかったけれど、日本のパン屋さんにあるようなパンがたくさん並んでいて、どれも美味しそうだった。シュトーレンだけでなく、明日の朝ごはん用に、それぞれ好きなパンを選んだ。私と夫はカレーパン、息子は普通のメロンパン、娘はチョコチップメロンパン。明日の朝が楽しみだ。 

ベーカリーを後にし、そこから車で数分走った場所の公園を訪れた。公園内を少し散歩してから、その近くにある美味しいと噂のフランス系パティスリーへ。店内のショーケースには、タルト・オ・ポム、エクレア、ミルフィーユ、クイニーアマン、カヌレ、チョコレート、などなど私の好物たちがお行儀よく並んでいた。どれも本当に美味しそう。こどもたちはチョコレートを、私と夫はエクレアを(2人で半分こ)購入。カヌレとクイニーアマンも捨てがたかったのだけれども、それは次回のお楽しみということで。公園のベンチで、すぐにでもそのエクレアにかぶりつきたかったのだけれど、外は寒く冷たい風が吹いていたので、車に戻って食べることにした。しかし、車に戻る途中で、これまた以前から気になっていたガーデンカフェが公園の横にあったことを思い出し、立ち寄った。

こちらもやはりクリスマスシーズンということで、もみの木、クリスマスリース、ヒイラギやポインセチアなどがディスプレイされていて、クリスマスの気分を高めてくれる。クリスマス関連の植物だけでなく、たくさんの種類のグリーンがあり、そのどれもがセンスよく置かれている。なんとも心地の良い空間だ。たくさんの植物の中で、急に私の視界に飛び込んできたものがあった。それは"ヤドリギ"。英語ではmistletoeという名前で、欧州ではクリスマスのシンボルのような植物だ。日本では馴染みのなかったヤドリギだけれども、最近、クリスマスについての知識を得る中で、その存在が気になっていた私。しかし、中々本物のヤドリギを見つけることができずにいた。なので、ヤドリギを見つけるが早いかすぐに手に取った。鮮やかで艶やかな緑の葉、黄身がかった白い実が、左右に広がっている。そのアンバランスさが絶妙なバランス。そしてクリスマスリースとは違って庶民でも気軽に買えるかわいいお値段。うん、リースはやめてヤドリギを飾ることにしよう、と即決即購入。ふんふんふーんと鼻歌交じりでレジへと並んだ。レジの横に、「Part-Time Staff required」の貼り紙があった。近頃、バイトしたい欲求が高まっている私。その貼り紙が気になり、写真を撮った。園芸店での勤務経験なんてもちろんなく、家で植物もまともに育てたこともない私が、園芸店で働ける気などしないけれど、ここで働くことができたら楽しそうだなと思い、とりあえず写真だけ撮っておいた。会計を済ませ、ようやく車へと戻った。

車に乗るとすぐ、こどもたちは「チョコ!チョコ!」と騒ぎ出す。はいはい、とチョコレートの入った袋を渡し、夫にはエクレアを渡した。一口かじった夫が「クリームたっぷりだけどしつこくない甘さで美味しい」と一言。後部席のこどもたちも「チョコ美味しい!」と嬉しそう。夫が半分食べたエクレアを私にくれた。クリームがこぼれ落ちそうになっていたので、すぐに頬張った。うん、夫の言う通り、美味しい。すぐに食べ切ってしまった。半分こじゃなくて、1人ひとつでもよかったな、なんて思ったけれど、もうちよっと食べたい、くらいがちょうどよいのだ。そして、美味しいものを分け合って食べることは、しあわせのかけ算になるのだと思った。

その後、スーパーに買い物に行ってから帰宅。今日の夕飯はお鍋だ。ネギと白菜、豚と鶏の水炊き鍋。私がネギと白菜を切り、お米を研いでいる横で、夫は明日の夕飯のビーフシチューの仕込みをしていた。普段は夫の帰宅が遅いこともあり、夫婦での会話はあまり多くないのだけれど、こうして一緒にキッチンに立つと、会話が生まれる。美味しい食事を作る時間を共有することもまた、しあわせのかけ算になるのかもしれない。夕飯のお鍋は、シンプルに美味しかった。

今日は、何か特別なことがあったわけではない。けれど、お買い得なカップと、ずっと探していたヤドリギを買えたこと。家族と一緒に美味しいエクレアとお鍋を食べたこと。欲しいものを手に入れ、1人の時間と家族の時間の両方を過ごせたことで、なんだかものすごく、充実した1日になった。明日も、特別な日ではないけれど、良い1日でありますように。