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変わりゆくわたし
人の全身の細胞は3年で入れ替わる、と言われている。
そんな物理的な変化ではなくとも、ゆっくりと私は変わる。視野、価値観、感性、生き方まで。
それを感じた出来事で、私がよく記憶しているのは、高校3年の頃だっただろうか。私は地元の図書館で大学受験に向け勉強をしていた。私の家から図書館までは、歩いて10分ほど。家は騒がしく、誘惑も多いので、中学の頃から何かに集中したいときは図書館に行っていた。高校に入ってからは疎遠になっていたが、さすがに受験生、勉強せねばということで再び通うようになっていた。
集中力も切れ、少し休憩しようと私は自習室を出て、棚を巡った。本のタイトルを眺めるうちにある棚の前で足を止めた。中学生の頃、好む本が多くよく触っていた棚だった。
私は中学の頃、所謂文庫本をよく読んでいた。現代の、中学生らしく、ちょっとファンタジックな、でもライトノベルではない、そんな物語たち。昔読んだ本を棚から取り、裏面の内容をまとめてある紹介文を読む。そこで気がついた。その内容に、全く興味を持てなかった。
高校に入って、私は本を読まなくなった。中学校では設定されていた朝の読書の時間がなくなったのもあるが、単純に勉強と部活動に明け暮れて本を読む暇がなかった。そして何より大きいのは、スマホを持ったこと。本を借りて家で読むということをしなくなった。一日に一冊は本を借りて、夜遅くまで読み込んでしまう本の虫は何処かへ消え失せていた。
勿論、全く本に興味を失くした訳ではなかった。単純に、大人びたのだ。中学生の頃にワクワクしていた物語に、もう既に私の心は踊らなくなっていた。
最初はちょっと驚いた。でも、すぐに受け入れて、私は本を棚に戻し自習室へと足を向かわせた。
昔観たことがある作品をもう一度観ても、全く違う感情を抱くことがある。それも、私が変わったということだ。
昔仲良くしていた友達の、昔は許せていたことを、今では許せず疎遠になってしまうこともある。これは、双方が変わったんだろう。
昔の私は確実に私ではあるけれど、今の私と昔の私が違うことも確実なのだろうと思う。
そして今の私だって色褪せて、次の私へと変わっていってしまう。図書館で自分の変化に気づいて驚いた。そんなかつての私の心や、今の私の心を忘れてしまうことがなんだか勿体ないから、こうやって綴るのだと思う。