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パパの子育て小説・エッセイ

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子育ての中で感じたことを小説やエッセイにしています。
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#育児

不思議なカードゲーム

息子がカードゲームを やろうと言ってきた。 カードの表面は統一の黒の絵柄で、 裏面は寿司の絵が描かれている。 「かっぱ巻き」なら2枚、 「まぐろ」なら2枚。 なるほど、神経衰弱か。 息子がダイニングテーブルの上に、 カードを並べる。 神経衰弱は記憶力のゲーム。 息子はまだ4歳なので、 あまり得意ではない。 どうやって勝たせてあげようか と思案しながらゲームは始まった。 が、それは普通の神経衰弱ではなかった。 世にも奇妙なルールの 神経衰弱だったのだ。 ルール①まずは普

あのね

4歳になる次男は話かけるとき、 「あのね」 というのが口癖だ。 「あのね、お父さん、あのね」 なんとも可愛いらしい。 会話は続く。 「あのね、お父さん、今日ね、幼稚園でね、 「あのね、お友だちと遊んでたらね」 このまま眠りたくなる、 心地よい響き。 何を伝えたいかはわからない。 でも一生懸命伝えようとする 気持ちが見えて愛おしい。 子どもにとって、一日は長い。 その日にあった出来事は 大人にとっては些細なことだが、 子どもにとっては真新しい大きなこと。 凝り固ま

兄のもの、弟のもの

歳が近い兄弟を持つ親なら、 誰しも知っていることは、 兄と弟には同じものを与えることだ。 違うものを与えてしまうと、 たいていは喧嘩の種になる。 僕はあっちがいい、 僕はこっちがいい。 という感じだ。 特におもちゃは深刻だ。 たまに「サービスです」と、 親切におもちゃをくれるお店が あるのだが、兄弟別々の物を渡す。 不安どおり、家に帰ってから おもちゃをめぐって喧嘩が始まる。 たいては、兄が勝ち、 弟は負けて泣いて終わり。 俺のものは俺のもの  お前のものも俺のもの

明けの運動会

台風が明け、緊急事態宣言が明け、 小学1年生の長男の運動会が 快晴の空の下で開かれた。 緊急事態宣言中に準備されたため、 種目は一学年につき、わずか2種目。 運動会自体、午前中で終わった。 長男はかけっこと、ダンスのみ。 待機中はマスクをつけているが、 競技中はマスクを外す。 われわれ大人自体が 初めての経験をしている状況の中、 長男にとっては 初めての小学校の運動会。 ビデオカメラのファインダー越しに、 一生懸命に走ったり、 踊ったりする姿を見て、 うるっと来る。

UFOキャッチャーという悪魔の誘惑

子どもを持つ親の間で、 あいつだけには近寄らない方いい という悪魔のような存在がある。 それがUFOキャッチャーだ。 クレーンゲームともいう。 100円入れてクレーンを操作。 目当ての物を掴んだ、 という喜びは束の間、 ポケットに行くまでに 無情にも落ちてしまう。 そして子どもの残念そうな顔を 見てしまうと、また100円を 投じてしまうのだ。 わずか30秒程度の娯楽。 あっという間に財布の中の 100円がなくなっていく。 たちが悪いのが、 たまに取れてしまうことだ。

子どもの漢字の覚え方

7歳の息子が最近覚えた漢字は 「最強の剣」だ。 その漢字の使い道は 現実世界では思いつかないが、 覚えたことには、驚くばかりだ。 私が子どものころ、漢字を覚えたのは 本か漫画だった。 何度も繰り返して読んでいるうちに いつの間にか読み書きを覚えていた。 今の子どもたちはゲームやYouTube。 漢字を絵として捉えて 前後の文脈でなんとなく読もうとする。 当然間違えるときもあるのだが、 私が本で漢字を覚えた方法と同じだ。 これが「読み」。 そして、今度は「書き」。

お出掛け日和

せっかくの休日は、 子どもと一緒にお出かけしたい。 できれば家族みんなで。 でも、残念ながらできない日も多い。 雨が降っている日。 熱中症が心配されそうな暑い日。 子どもが風邪をひいている日。 前もって立てていた計画を 泣く泣く中止にしたことは 何度もある。 3週連続で週末は雨だった。 今週こそは天気も快晴、と思ったら 子どもがひどい咳をしていた、 なんてこともある。 うちは子どもが二人いるので、 どちらかが体調が悪いと、 家族みんなでお出掛けするのは 断念せざるをえ

いってらっしゃいの新しい形

テレワークになってから 「いってらっしゃい」と 言われた記憶がない。 むしろ学校や幼稚園に行く子どもたちに こちらが「いってらっしゃい」と 言っている。 2階にある私の仕事部屋。 パソコンと仕事用の書類しかない、 小さな部屋だ。 朝、その部屋でメールの確認など ちょっとした仕事を終えると、 長男が学校に行く時間。 1階に降りて「いってらっしゃい」と 見送る。 その30分後、今度は次男が 幼稚園に行く時間。「ばいばい」と見送る。 次男は「また遊ぼうね」と手を振る。 それ

子どもと夜の対話

親子4人で寝るには寝室は狭い。 仕方がないので、私は一人で 別の部屋で寝ている。 次男が大きくなったら使う予定の部屋だ。 夜はなるべく早めにその部屋に行く。 リビングにいるといつまでも 子どもが寝ようとしないからだ。 部屋に行くと、しばらしくして、 次男が歯磨きの仕上げにやってくる。 シャカシャカシャカ。 一旦、うがいをしに出ていく。 そして、今度は絵本を持ってくるので、 読んで聞かせてあげる。 それで私の夜の育児は終わりだ。 二人の子どもに「おやすみ」を告げると、 電

マイクラをする我が子がかわいすぎる件

今回のお話は、『マインクラフト』、略して『マイクラ』というゲームを知らないと話がわかりづらいこと、ご了承ください。 二人の子どもがマイクラという ゲームに夢中だ。 このゲームは他のゲームと違って、 プレイヤーが自由に行動するゲーム。 建物を作ったり、フィールドを冒険したり、 アイテムを集めたり、地下を探検したり。 私も子どもと一緒に始めたのだが、 やりたいことが多すぎて、 あっという間に時間が経ってしまう。 決められたゴールがない分、 子どもはすぐに飽きてしまうと 思

4000回繰り返す、子育ての喜び

子どもをお風呂に入れるのは、 私の担当だ。 毎日、まず自分ひとりでお風呂に入り、 体を洗ってすぐに、 二人の子どもを順番に呼ぶ。 体と頭を洗ってあげて、 湯ぶねにつからせる。 二人が湯ぶねに つかったところで、ひと段落。 お風呂用のおもちゃで遊ぶ 二人の子どもを横目で見ながら、 私は先にお風呂を出る。 バスタオルで体をふき、 ドライヤーで髪を乾かす。 これで自分のお風呂は終了。 次は子どもの番。 ここから、またひと仕事。 なかなかお風呂を出たがらない、 二人の子ども

子育てはデジャヴの連続

子どもの成長を見届けていると、 「どこかで似た景色を見た気が」という、 デジャヴ(既視感)に捉われることが 何度もある。 子どもの歯が抜けたとき。 子どもが朝顔を育てているとき。 子どもが自転車に乗れたとき。 子どもが宿題をしているとき。 全部、二度目の景色のような気がする。 なんのことはない、 自分の子どもの頃の姿を重ねてしまうのだ。 そのときの仕草が、 我が子だけあって 自分と似ているからだろうか。 いや、たいていの子どもは同じ仕草だろう。 それでも、デジャヴに捉わ

夏祭りと太鼓

夏になるたび、近所の神社では お祭りが開催された。 そこに行くのは、私も息子も大好きだった。 夕方、ようやく暑さが落ち着いたころ、 薄暗くなった道を、 妻と4歳になった息子と歩いていく。 神社に近づくと、赤提灯の光が輝き、 太鼓の音が聞こえてくる。 まるで異次元の世界に 入っていくような感覚。 日本人に生まれて良かったと思う瞬間だ。 ただ、そんな物思いに 耽っているのも束の間。 息子のために、 早く食べ物を買ってやらないと。 焼きそば、たこ焼き、唐揚げ、焼き鳥。 バ

数をおぼえる子どもたち

長男は文字をおぼえるのが早かった。 役に立ったのが、お風呂で使える 数字やひらがなの表。 裏側を濡らすと、 ペタッと壁に貼れるやつだ。 ふたりでお風呂に入ると、 それを一緒に読んだ。 欠点はすぐにカビが生えるということ。 何度か買いなおした記憶がある。 ただ、そのかいあって、いつのまにか、 数字やひらがな、アルファベットまで 読めるようになった。 ところが次男は、なかなかおぼえない。 数字ひとつとっても、 「いち、に、さん、ご、ろく、なな」 「さんの次によんが抜けたか