6つの技術で上手くいく!先生初心者のための授業の教科書 4.指示の技術
「言ったとおりに生徒が活動してくれない!」「活動させようとすると、授業がいつも荒れてしまう…」こんな悩みのある先生はいらっしゃいませんか?
本稿は、私の10年間の経験をもとに授業を「する」ための基本となる技術を6つにまとめた「授業技術の教科書」の第4章です。お読みいただき、書かれている技術をマスターすれば、最低限の「普通の授業」ができるようになり、冒頭のような悩みが少しだけ減るはずです。私が本稿を書くに至った思いなどは、1.はじめにをお読みいただければ幸いです。
本章では、指示の技術について詳しく書いていきたいと思います。
【指示とは何か】
指示とは、先生が発する言葉によって、生徒の行動を促す技術です。発問と同じく、指示の技術を使うことで生徒が能動的になる時間を増やすことができます。反面、適切な流れ、適切な言葉で指示をしないと生徒の混乱を招いたり、「自由時間」と勘違いして好き勝手な行動をとる生徒を出してしまったりします。
「生徒の行動を促す技術」ですから、行動した生徒が多ければ多いほどよい指示だったということになり、行動した生徒が少なかったり、促したのと違う行動をとる生徒が出たりしてしまったら、悪い指示だったということになります。「言ったとおりに活動してくれない」と生徒のせいにしてしまわず、自分が指示の技術を上手く使えていたのかを振り返ってみることが大切だと思います。
【どうやって指示すればよいか】
指示の技術を用いる際のポイントは、次の3つです。
①指示フローを徹底する ②行動指示をする ③リミットを設定する
①指示フローを徹底する
指示フローとは、次の流れのことです。
「指示 → 間 → 確認 → 評価」
指示をする際は、必ずこの流れに乗っ取るべきです。
指示の方法については②③を確認してください。指示をしたら必ず間をあけます。生徒が行動するための時間を確保するためです。
次に、生徒全員が指示した行動をとったかどうかを確認します。これは指示に違反している生徒を見つけるためではなく、困っている生徒を見つけるためです。行動できていなければ、その生徒へ個別に対応します。基本的には、全員が指示した行動をとるまで次には進みません。
全員が指示した行動をとったら、評価を行います。評価の詳しい内容については6.評価の技術をお読みいただきたいのですが、全員が先生の指示に協力してくれたことに対して、感謝を述べたり肯定的な言葉をかけたりします。確認の段階で、どうしても指示に従わない生徒がいる場合、ここで注意をします。ですが、いきなり注意から入るのではなく、「もしかしたら困っているのではないか?」という気持ちで声をかけ始めることが大切です。
なおこの指示フローを徹底するためには、1回の指示につき1つの行動を促すようにしなければいけません。これを「一時一事の指示」と言います。「教科書の20ページをあけて、ノートに練習問題を解きます。はじめ」と、1回の指示で複数の行動を指示してしまう先生は少なくありません。しかし、これだと指示フローの「確認→評価」ができません。「一時一事の指示」に置き換えて「教科書の20ページを開いてください」(間→確認→評価)「ノートに練習問題を解きます。準備をしてください」(間→確認→評価)「では始めてください」(間→確認→評価)と、いくつかに分けて指示を出せば、質問フローに乗っ取ることができます。
②行動指示をする
授業中、「~について考えて」と指示する先生がいます。ですがこれは「~について考えたことをノートに書いて」「~について考えのある人は手を挙げて」のように直すべきです。最初の指示を思考指示、あとの二つを行動指示と呼びます。授業中の指示は、すべて行動指示にするべきです。なぜなら、思考指示では生徒が指示に従ったかどうか確認できないからです。これでは①で述べた指示フローを徹底することができません。しかし行動指示にすれば、生徒が指示に従ったかどうかは一目でわかります。困っている生徒も見つけやすくなります。
また、授業場面が切り替わる際は特に注意して行動指示をしなければいけません。話し合いを終えて説明や発表を聞く場面に切り替わるといったシーンが想定されます。このようなシーンでは「話すのをやめなさい」「筆記用具を置きなさい」「前を向きなさい」といった、切り替えを促す動作指示をします。当然、確認→評価の指示フローを徹底しなければいけません。これをせずに場面を切り替えてしまうと、勝手な行動が増え、授業の荒れにつながります。
③リミットを設定する
「1分で~しなさい」「話し合いは12時までです」のように、終わりの時間を明確にするのが「リミットを設定する」ということです。なぜリミットを設定することが大切かというと、リミットを設定することで「その時間内に集中して取り組もう」と感じさせ、モチベーションを高めることができるからです。この効果を「タイムプレッシャー」と言います。読んでいただいている先生方も、締め切りのない仕事にはなかなか手がつかない、という経験があるのではないでしょうか。
また事前にリミットを設定しないと、生徒の行動を終わらせる指示をした時に、指示に従わない生徒が出てきます。「まだやりたい」と感じさせてしまうためです。こうなると強い言葉でもう一度指示したり、注意したりする必要が出てきてしまいます。事前にリミットを設定しておけば、このような事態を避けることができます。
【まとめ】
指示、つまり「先生が発する言葉によって、生徒の行動を促す技術」を高めるには、①指示フローを徹底する、②行動指示をする、③リミットを設定する、の3つを意識することが大切です。