6つの技術で上手くいく!先生初心者のための授業の教科書 2.説明の技術
「授業中、生徒がすぐに寝ちゃうんだよね」「塾の方がわかりやすいって言われちゃって…」こんな悩みのある先生はいらっしゃいませんか?
本稿は、私の10年間の経験をもとに授業を「する」ための基本となる技術を6つにまとめた「授業技術の教科書」の第2章です。お読みいただき、書かれている技術をマスターすれば、最低限の「普通の授業」ができるようになり、冒頭のような悩みが少しだけ減るはずです。私が本稿を書くに至った思いなどは、1.はじめにをお読みいただければ幸いです。
本章では、説明の技術について詳しく書いていきたいと思います。
【説明とは何か】
説明とは、先生が発する言葉によって、生徒の理解を促す技術です。授業内容に関する説明と学び方に関する説明の2種類がありますが、どちらの説明をするときにも注意するポイントは同じ(あとで述べる3つ)です。
「生徒の理解を促す技術」ですから、理解した生徒が多ければ良い説明だったということになり、理解した生徒が少なかったり、そもそも生徒が聞く気をなくしてしまったりしたら、悪い説明だったということになります。
【どうやって説明すればよいか】
説明の技術を用いる際のポイントは、次の3つです。
①最小限に絞る ②変化をつける ③簡単に感じさせる
①最小限に絞る
説明を聞いている時間というのは、生徒にとって最も受動的な時間です。ご自身の経験からもわかると思いますが、この受動的な時間が長ければ長いほど、授業に向かうモチベーションは下がっていきます。また、長い説明は生徒の頭の中を混乱させ、理解しづらいものになってしまいます。
そのため、説明は最小限に絞ることが大切です。二つの観点から「最小限」を考えるとよいでしょう。第一に授業全体に占める説明時間の割合、第二に一回一回の説明の量です。
授業全体に占める説明時間の割合について、具体的な数字を示すのは難しいですが、私は最低でも50%以下(50分授業なら25分)、目標は30%(50分授業なら15分)と考えています。
一回一回の説明の量については、時間というよりも意識の問題です。先生は生徒を思うあまり、1から10まで全部丁寧に説明してしまいがちです。でもそれだと説明が長くなり、聞かない生徒が出てきます。また記憶しておける量も超えてしまいます。そのため最初は半分程度の説明に留めておき、質問を受けたり、困っている生徒を見つけたりしながら(見つけ方は7.観察の技術参照)、説明を補足していきます。
②変化をつける
学生のころ、よく寝てしまっていた先生の話し方を思い出してください。きっとすごく単調な話し方をされていたのではないでしょうか。
話し方に変化をつけることで、生徒を飽きさせないようにすることができます。また説明の中の大事な部分に変化をつけることで、理解しやすい説明をすることもできるようになります。変化のつけ方は2つ。「強弱」と「緩急」です。
「強弱」とは、声の大きさの変化のことです。もちろん教室全体に聞こえるはっきりした声で説明をするのが基本中の基本ですが、そこに変化をつけましょう。大切な部分は大きな声で説明します。ヒントやテストに向けたティップスのような話は聞こえるぎりぎりの小さな声で説明します。
「緩急」とは、話すスピードの変化のことです。普段の自分の話すスピードを把握したうえで、大切な部分はゆっくりと説明します。雑談に近い部分や全員に伝わらなくてもいい枝葉末節の部分は早口で説明します。
「強弱」も「緩急」も、恥ずかしがらずに大げさに、落語か演劇のようにつけることが大切です。
③簡単に感じさせる
「難しそう」と思った時点で、多くの生徒はモチベーションを下げてしまいます。できないことをバカにされるよりは、最初から挑まない方がリスクが低いからです。
そのため、説明の方法によって「簡単そう」と思わせることが大切です。説明の順番を変えるだけで、簡単に感じさせることができます。簡単に感じさせられる順番とは「具体から抽象へ」「既知から未知へ」の二つです。
「具体から抽象へ」とは、事例や実物などの具体的な(イメージしやすい)ものから説明をはじめ、徐々に専門用語や公式など抽象化(一般化)されたものへと進んでいくということです。例えば歴史で縄文時代の学習をする際、いきなり「今日は縄文時代の学習をします」と専門用語を出してしまうと難しく感じさせてしまいます。でも縄文土器の写真やレプリカなどを示し、「今日はこれが使われていた時代の学習をします。」と説明すれば、生徒の頭の中では「難しそう」という不安よりも「あれは何だろう」という興味の方が強くなるでしょう。ここからスタートして、「縄の文様をつけた土器なので、縄文土器といいます」「縄文土器を使っていた時代だから縄文時代といいます」と、説明の抽象度をあげていきます。
「既知から未知へ」とは、新しい知識(未知)を、未知のものとして説明するのではなく、すでにもっている知識(既知)の応用と位置づけて説明をするということです。例えば数学で政府の数について学習する際、いきなり「負の数とは-1,-2,-3…のことです」と未知から説明を始めたら、「難しそう」と感じさせてしまいます。しかし「2-1=1ですね。では2-3だとどうなるでしょう。」というように既知の振り返りから説明をはじめれば、生徒は「負の数」という新しい知識を「未知」としてではなく「既知の応用」としてとらえることができるでしょう。
【まとめ】
説明、つまり「先生が発する言葉によって、生徒の理解を促す技術」を高めるには、①最小限に絞る、②変化をつける、③簡単に感じさせる、の3つを意識することが大切です。
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