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独裁者について
中国14億人の頂点に立つのは、いわゆる「チャイナ・セブン」と呼ばれる7人の「中国共産党中央政治局常務委員会」メンバーである。
その中でも、習近平が、党・国家・軍すべてについての最高指導者であることは言うまでもない。12年11月に党中央政治局常務委員に再選、中央委員会総書記と党中央軍事委員会主席に選出されたところから起算すれば、既に10年近く中国のトップの座に居続けていることになる。
なにしろ、14億分の7、14億分の1である。熾烈なトーナメント戦を勝ち抜いていることを考えると、比較するのも申し訳ないくらいだが、日本の国会議員とか閣僚の先生方なんかよりは、遥かに優秀であると同時に、壮絶な権力闘争を生き延びてきた歴戦の猛者であることは間違いない。
権力の頂点に立った人物の引き際は難しい。「そろそろ引退してはどうか」と言ってくれる人は少なくとも周囲にはいない。自分で判断するしかない。
民主主義国であれば選挙がある。アメリカの大統領であれば、2期8年以上は居座ることはできない。どこかで引き際を考えることになる。
非民主主義国の場合、それがない。そもそも、そこに至るまで生き延びた人たちは、とても猜疑心の強い人たちである。人を信じていたら、命がいくつあっても足らないような修羅場をくぐり抜けてきている。権力の座から降りた途端に、自分の身がどうにかなるのではないかと思っている。自分もそうやって他人を引きずり下ろしてきたからである。だから、ますます引退できなくなる。
スターリン、毛沢東、ヒトラー。みんな死ぬまで権力の座にしがみつくしかなかった。プーチンも同じことを考えているのだろう。
そして、習近平もそうした系譜に連なろうとしている。
もしかしたら、辞められるものならば、辞めて、肩の荷を下ろしたいと本心では思っているかもしれない。思っていても、辞めた途端に、それまで従順だった部下たちが牙をむくかもしれない。そう思うと、怖くて辞められない。実態はそんなところではないのか。
前に、「企業のガバナンスについて」という記事を書いた。企業のトップにも同じようなところがある。民主主義によって地位に就いたわけではないので、優秀な名経営者と言われた人たちほど、知らず知らずのうちに独裁者のような立場に祭り上げられてしまう。周囲はイエスマンばかりである。引き際は誰も教えてくれない。
若い頃はスーパーマンのように優秀だった人でも、年を取るにつれて耄碌する。猜疑心だけ強くなる。で、判断を誤る。晩節を汚す名経営者が多いのは、引き際がわからないからだと思う。「経営の神様」とかおだてられると、ますます引退したいなんて言えなくなってしまう。
権力の座にいつまでも居座ろうとする隣国のトップを見て、自分の身を顧みることができる企業トップが何人いることやらと考えてしまう。