暴力父の好きだった白い花が咲いた
子供の頃に私が家庭内で見ていた景色、それは地獄のようなものだった。
大人になって突然に思い出す。父から暴力を受けている祖父母や母の昔の映像が何度もよみがえり、そのたびに涙が出てきたり、呼吸が激しくなっていた。苦しかった。辛かった。これはフラッシュバックとかいうものだろうか?
子供の頃に、父親が「畑に行くぞ、河童もついてこい」と言われ、車の助手席に乗せられると、私は恐怖におびえていた。「ダムの方向に走ってる…私はダムに沈められるんじゃないだろうか?山の中に置いてこられるんじゃないか?私は、いらない子として殺されてしまうんじゃないか?」と不安になり、いつもガタガタふるえていたのを思い出す。結局は何事もなく畑に行って帰ってくるのだけど、常に頭の中には「何かやらかすと父に殺されるかもしれない」という不安があった。今、大人になって改めて考えると、ありえないことを考えて心配してたんだなと思う。子供の考えることは大げさだ。
よく見る夢に母親が出てくる。母が鎖で柱につながれいて、母の心臓に向かって、先のとがった太い木がどんどん近づいてきて、グサーッと刺すところで目が覚めたりする。その夢を何度も何度も見た。丸男さんと一緒に暮らすようになってからはその夢を見る回数が減った。
私が初めて精神科に行った時、担当の精神科医には、子供の頃に家庭内暴力があったことは話さなかった。なので、仕事などのストレスによる「鬱」とだけ診断された。でもWEBなどで調べてみると少し違うような気もする。私はもしかして、PTSDという病気になっているのではないだろうか?仮にPTSDになっているなら、それは簡単には治らないものだと思うが、私は今、鬱のお薬を飲んでいるので、PTSDの症状も緩和されているだろうし、特に悪い部分はないように感じている。なので日々の生活に不便はない。
父の記憶。できることなら、記憶を置き換えたいと思っている。
暴力的な父ではあったけれど、暴力には理由があって、される側にも非はあったのだと。父は努力家であったこと。ちゃんと結果も出し、自分の家も自分で設計して建てたし、頑張って稼いだし、他にもいくつもの難しい資格を持っていた。本当は誇れる父であったのだと思いたい。海に行った時も私のサンダルが海に流されたけど、父が泳いで取ってきてくれたこともある。色々と良い部分はたくさんあったけど、他の人が見つけられなかっただけに過ぎないと。
怖かった父の記憶を消して、良かった部分を残したい。
そうすればこのトラウマのような症状も消えるだろうか?
先日、父の住んでいた家で育てていた芝桜を少し刈り取ってもらってきた。私は自分の家の小さい庭にこの芝桜を少し植えた。白い花が咲いた。かわいい花だった。このまましっかりと根付いてほしい。
白は父の一番好きな色だと母が言っていた。
私の記憶が綺麗に生まれ変わり、整理され、この花が咲くたびに父の笑顔だけが思い出せるようになったら、そんな風に自分の心をコントロールできるようになったらどんなにいいか。