ぼうっとするのも勉強のうち!?
私が教員(2022年3月末で退職)だったころ、
授業中にぼうっとしている生徒を発見したら、こそっと後ろにまわり込んで
「わっ!」
と驚かせて覚醒を促していましたが、
ぼうっとすることは学習にとってそんなに悪いことではないようです。
(驚かせる行為も今の時代だと非難されるのでしょうか…)
この「ぼうっとしている」状態のことを
脳のデフォルトモードというようですが、
デフォルト(初期設定)で記憶力を高める能力が備わっている脳って
かなり高機能な臓器であるといえます。
しかも、
被験者は単語を覚えるための努力をしていない無意識の状態ですから、
勉強のストレスは全くありません。
脳は、デフォルトモードで、かつ、オートモードで
記憶力を高めることができるのだから有能すぎて怖いぐらいです。
むしろ、その能力を使いこなせていないという事実のほうが
重大なのかもしれません。
もしかすると、私が授業中に驚かせた生徒たちの脳は
デフォルトモードで、何らかの記憶強化中だったかもしれず、
学力の向上を阻害してしまっていたのかもしれません。
ただ、この実験では、
単語の情報を習得した後に「ぼうっとしている」ので、
授業中の「ぼうっとしている」状態は、
授業以外の内容の記憶を強化している可能性が高いので
(注意して正解だったのだろう)と思い込むようにしています。
私の失敗
脳のデフォルトモードの効果を考えると、
私の授業スタイルは生徒たちの学習の定着を妨害していたのかもしれません。
私は自分が担当する時間割の前の授業が終わるとすぐに教室へ行き、
チャイムと同時に授業がスタートできるよう、休み時間の間に
数学の復習プリントを配布して授業の準備をしていました。
大半の生徒たちは、私のルーティンに慣れており
そのプリントを休み時間であるにもかかわらず、
積極的に取り組み出すことが習慣化されてきたので
「意欲があって素晴らしいな」と思っていました。
(もちろん休み時間は自由なので強制はしていません。)
しかし、ぼうっとする脳のデフォルトモードのことを考えると、
この行為によって
私の前の授業の記憶を強化する機会を奪ってしまっていたのかもしれません。
当時は
反省して改善しなければならないと思う気持ち
と
自分のルーティンを崩したくない気持ち
で葛藤しましたが、結局
「これぐらいなら大丈夫だろう」
というバイアスがかかって自分のルーティンを守ってしまいました…
ぼうっと過ごして記憶アップ
脳のデフォルトモードを有効に活用するために、
学校全体で意思統一し、
授業間の休み時間は「ぼうっとして何もしないこと」を推奨すれば、
定着の効果が期待できるでしょう。
(実践していないお前が言うなって感じですが…)
小学生の場合、休み時間には外で遊びたいと思うので、
デフォルトモードタイムみたいな時間を決めて
時間割に組み入れば実行可能であると思われます。
以前、昼休みに昼寝の時間を設けた学校で
学習効果が認められたというニュースを聞いたとき、
これも脳のデフォルトモードが関係しているのではないかと思い、
その効果を確信しました。
無意識の力に頼るローコスト・ハイリターンの方法なので
実行しない手はないでしょう。
ただ、こんな話もあります。
数年前、勤務校で絵本の読み聞かせの研修を受けたとき、
その講師の方が
と説明していました。
他にも脳のデフォルトモードには
デメリットが多いように説明していたので、
私としては
「デフォルトモードは学習に効果的なの?そうでないの?どっち?」
と混乱してしまいました。
講師の方に直接、質問もしましたが、
講師の方も脳科学の専門家ではなかったため、
あまり納得のいく回答が得られませんでした。
しかし、今考えると、
ヘリオット・ワット大学の実験も絵本の読み聞かせも
どちらも正しいのではないかと推測しています。
脳のデフォルトモードでは
「ぼうっとしている状態」なので集中することは難しいけど、
記憶を促進するから、授業の合間などに行うと効果的で、
集中して話を聞かなければならない授業などでは、
無意識より意識が重要になるので、
デフォルトモードを抑制するほうが効果的であると
考えればいいのではないかと思っています。
結局、昔からよく言われるメリハリが大事だということですね。
しかし、ぼうっとしていても活躍している
私たちの脳って一体いつ休んでいるのでしょうか?
一番のブラック企業は私たちの頭の中にあるのかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?