新刊 ・ 『 カッコウ、この巣においで 』(集英社文庫)発売のお知らせ ・ 5 〜 あるいは俺のカップが火を噴くぜ ・ 57
引き続き発売中でございます。
試し読み、たっぷり1章の9割8分くらいまで読めますよ!
今回はこちらの記事で紹介しました、「晋六窯」の京谷さんご夫婦に取材に行った際に作成したカップの話。
ついカップ系ばかりつくってしまうな……。
ちなみに取手を取り付けるのは素人には難しいので、晋六窯さんにやっていただきました。
幅広の持ち手は安定感があって良いですね。
高台内に日付と名前を入れてくださいました。
練った土をろくろで器のかたちにしていくのですが、例えばテレビなんかで芸能人が陶芸体験やったりする際のあるある失敗、回っている土をのばしていると指がとられて土がぐちゃっとつぶれるアレ。
物語の中で初めてろくろを扱う主人公にも必ずやらせるぞ、と思ったのですが、ご指導いただいた通りに手を動かしていると……むう、ぐちゃらない……。
これは京谷さんの教え方が上手すぎるのだと思うのですが、何だかつるんとできてしまいました。
と、取材に同行してくれていた集英社さんの編集者さんが「わあぁ」と声をあげ見事に失敗。
本当に有能だ……!
「ちょっと、その感じが知りたいです、自分がやっても成功してしまって……どうすればわたしにもその失敗ができますか?」と、少年ジャンプのスポーツ漫画の初回で今までやったこともない競技を突然やらされたのに皆が息を呑む天才ぶりを発揮する主人公が全く空気を読まない無邪気っぷりで吐くようなセリフを言ってしまいました。その節は大変失礼いたしました。
器のかたちができた後は、乾燥→素焼き→釉薬がけ→本焼き、と作業が続くのですが、乾燥には日数がかかる為、取材の時はかたちをつくるところまでで終了。
なので器の色は、見本を見せていただいて「こんな感じで」とお願いしました。
作業しているろくろの周囲には、飛び散った粘土のかけらがカラカラに乾いて落ちているのですが、京谷さんが「これも水で戻せばまた使えますよ」と言われたのがとても印象的で、物語の中でも使わせていただきました。土って凄い。
ちなみに晋六窯さんでは陶芸教室もやっておられます。
あなたもぜひ参加して、浩臣さんのめくるめくトークショーに圧倒されてください!
自分の手で直接土に触れてかたちにしていく、という作業は思った以上に楽しくて無心になれて、やれと言われれば一日中でもできそう……と思いました。
パンやお菓子をつくるのが好きなのですが、その感じにも少し似ている。生地を直接手で触ってかたちをつくりあげていく行為には、精神を深く落ち着かせる作用があるなと思います。
勿論、それを「生業」として行っていく為には本当に様々な苦労や工夫が必要かと思いますが、これを「お仕事」として、先祖代々ずっと引き継いで、「てづくりの器」をわたし達に届けてくれる職人さん達は本当に偉大で有難い存在だなと思いました。いついつまでも続いてほしい。
そんな風に実際に手で触れて体験した思いを、物語の中にいくつも込めてみました。
陶磁器そのもの、そして陶芸にご興味ある方にも読んでいただけたら嬉しいです。
なお、今までの作品はこちらから。
試し読みもできますのでぜひ。
『 雨音は、過去からの手紙 』(マイナビ出版ファン文庫)
こちらKindle Unlimited版もございます。
『 世界の端から、歩き出す 』(ポプラ文庫ピュアフル)
こちらもKindle Unlimited版がございます。
『 真夜中のすべての光 上下巻 』(講談社タイガ)
『 この季節が嘘だとしても 』(講談社文庫)