今はもう消えてしまった京都の本屋のはなし・8
現時点での、これが最終回。
もしまた記憶が甦ってきたら書きますが(トップ画像にはKURATA yumi氏の写真を使わせていただいております。多謝)。
今までの記事は以下のマガジンにまとめてあります。
今日書くのは、ブックストア談。
四条沿いにあった間口の小さな書店です。
これを書く為に調べましたところ、そもそも「ブックストア談」を始めたのはポーラの会長さんであったことが判った。
ポーラ。
そう、化粧品のポーラですよ。
びっくり。
なんでまた、と思いましたらば、当時の会長、鈴木常司氏が読書好きで、書店事業を立ち上げたんだそうです。
京都のブックストア談は、1979年11月に1号店として開業されたのだそうで。
ちなみに鈴木常司会長、美術も好きで、ポーラ美術館を設立されたのもこの方だとか。
昔行ったことがあります。緑と光あふれる、本当に素敵な場所でした。
なんかこういうの、いいですね。昔はこういう企業人がたくさんいたんだろうな。稼いだお金を、文化につぎ込める人。で、しっかりそこからも稼ぎを生み出せる人。
談はポーラの子会社が経営していたんですが、会長が2000年に亡くなられた後、02年にポーラの経営方針変更で手放すこととなり、文教堂に売ってしまったんだそうです。
それも、別に不渡り出してたとかではないようで、非常に儲かっていたんだそうな。確かに、いつ行ってもお客さんの多い店でした。子会社の方も寝耳に水だったらしい。切ない。
ただ有り難いことに、「ブックストア談」の名前はそのままに、中身もほぼ変わりませんでした。
1階は一般書籍と雑誌。
一般書籍、と言ってもいわゆる新刊、そして売れてる本、それから雑誌。「ぱっと急ぎで本を買いに来る時の『とりあえずビール』的ニーズ」を満たすような感じ。
ここの真髄は、2階と3階にあふれる漫画本でした。
漫画フロアはざっくりと「女性向け」「男性向け」的に出版社や作品が分けてあったような記憶が。確か3階にアニメイトがありましたよね。
もう本当に品揃えが豊富で素晴らしかった。
狙っていく時にも、特に狙いなく「何か面白い漫画に出会いたいぞ」という時にも向かう店でしたが、楽しかったのが自他共に認めるオタク友人と一緒に行く時。
子供の頃は、あまり漫画雑誌を自分で買って読むことがなく(小遣いが少なかったので(笑))、殆ど友達に借りて読んでいました。それで「今世間ではどういう漫画が描かれているのか」という知識を得ることができた。
大人になってそういう交流がなくなってしまって、ちょっと新しい漫画にうとくなっていたのですね。もっぱら買うのは、昔から好きな漫画家さんの新作とか、ずっと続いてる漫画の続きとか、雑誌で紹介されていたりアニメなど別メディアで触れて面白かったものとか。
そんな中、その友人と行く談は本当に楽しかった。もうあれこれと、いろいろな作品を教えてくれるのです。
棚の間を行きつ戻りつ、「この作品のここがいい」と語るのを聞くのが本当に面白かった。読みたくなるかどうかよりもっと手前に、友人がどれだけその作品を好きか、という熱量が直に伝わってくるのが何とも言えず好ましかったのです。
あれこれ言いながらどんどん棚から抜いていって、大人買いしていく姿も実に豪快で良かった。
その後友人は結婚して府外に引っ越してしまい、会う機会が格段に減り、一緒に談に行くこともなくなりました。
自分もそれで何となく足が遠のいてしまい、たまにしか行かなくなってしまった。
その頃は漫画は大体大垣書店で買っていて、ちょっとレアなものは寺町の喜久屋書店に行っておりました。
そういえば喜久屋書店も2019年に閉店してしまいましたね。ここは申し訳ないですが、ほんとに数える程しか行ったことがなかった。特に理由はなく、たまたまなのですが。
そしてしばらく行かない間に、ブックストア談、何だか様変わりしておりまして。
なんか名前も、「文教堂JQストア京都店」にいつの間にか変わってた。
そして1階には文具やら雑貨やらが。
本、なくなった。
どうも3階にはアニメショップの「アニメガ」が入ったようで、そちらには行けば多少のコミックなどもあったのでしょう。
でもこの変貌ぶりがショックで、結局入らずじまいでした。
そしてその文教堂JQストアも、2019年に閉店。
何とも言えず、さみしい幕切れとなりました。
今でも思い出すのは、友人が楽しげに話す声、自分の全く知らないジャンルの漫画がどんどん中身のある生きた作品として目の前に展開されるその様子、そしてたくさん抱えた本をレジに運ぶ友人の嬉しそうな顔。
またいつか、どこかの本屋であんな時間をすごしたい。
その為には、個性を放つ素敵な本屋が一店でも多く生き残ってほしい。
そういう努力をされている方々がいます。
ぜひご一読ください。
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