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美しい言葉、風景

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心に留めておきたいフレーズや風景を書き留めたいと思います。画像は上野の不忍池。青々、生き生きした一面の蓮と、歴史の重みと哀しさが入り交じって見えます。秋は枯れ始めています。
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記事一覧

大叔母とのお別れ(ホラー要素強め)

大叔母とのお別れ(ホラー要素強め)

大叔母はお寺の家に嫁いできた。その家に私の家族が訪問する時は、「よそ者」感があったと思う。
子どもの頃の私も疎外感があった。二人の男のきょうだいは母親に溺愛されていた。子どもなりのプライドから、仲のよい家族関係をとりつくろいつつ、私は生来のよそ者であった。
母方の親戚の集まりで、ひととおりのセレモニー(乾杯や歓談など)が進み、こういう席では女の人だけに課される家事一般をこなした後は、従兄弟の隠し部

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あの世につながる道を思う(想像強め)

あの世につながる道を思う(想像強め)

親族が亡くなる。大往生だった。
お寺の出ということもあり、お坊さんのお経は長かった。朗々と響く、よい声だった。おりんと木魚のリズムと、お香の匂いが立ちこめて、本当に極楽浄土に行けそうな気がする。
旅立つ日のためにあつらえた白い仏衣に包まれて、長い闘病から解放され、穏やかな顔で横たわる故人から、ゆっくりと魂を引き離していくために、必要な時間と手順のように思えた。

華麗な生まれ変わりとはならずに、故

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自閉症のある青年と海が描かれた映画

自閉症のある青年と海が描かれた映画

自閉症のある青年が主人公の映画「ぼくはうみがみたくなりました」(2009年)の、突き抜けたような爽快感が忘れられない。映画の舞台は湘南(三浦)だが、作品の生まれた町田市の人々のネットワークがうらやましくて、その勢いで書いた、2011年4月のブログ記事を転載する。

「ぼくうみ」のサイトはこちら。劇映画ですが、自閉症のある息子さんがいた脚本家の山下久仁明さんが企画された作品です。

「ぼくはうみがみ

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2011年4月に書いたこと:「要らない服を、誰が着ると思う?」

2011年4月に書いたこと:「要らない服を、誰が着ると思う?」

「要らない服を、誰が着ると思う?」という問いは、もう20年くらい前の!東京ボランティア・市民活動センターのスタッフの言葉だ。まさに善意の押しつけを戒める言葉である。
東日本大震災からさかのぼり、阪神淡路大震災をきっかけにボランティアや寄付の活動が盛んになっていく。1990年代の当時は「ボランティア元年」と呼ばれたように、企業も自治体も個人も、ボランティアや寄付をすることにまだ慣れていなくて、むしろ

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80越えの、悲しくて美しいエッセイ

80越えの、悲しくて美しいエッセイ

朝日新聞の読者投稿欄「声」。なぜかふと、目にとまり・・・すごく悲しくて、盛っているところがないのに美しい言葉で書かれた投稿を何度も読んだ。久しぶりに切り抜いた。それから三ヶ月近くたつのに、初めて読んだ時の、80年の重みがあるのにピュアで透き通った美しさは消えていなかった。
このnoteのトップの画像は朝日新聞デジタルのスクラップ。昭和世代の私にはやはり縦書きの活字で、新聞の柔らかなグレーの色調が読

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