【はがきサイズの短編】 ばあちゃんのジオラマ テーマ:駐日
正方形のテーブル一面に、青い海と白い砂浜、大きなココナッツにやたらデカくて派手な虫、小人が大きな絵みたいに佇んでいる。
「智、ちょっとばあちゃん家の手伝いしてよ。」
だらだらしていた俺に頼まれたのは、一人暮らしのばあちゃんが自宅を開放して土日に数時間だけやっているジオラマギャラリーの受付だった。
人形作りなど、手先を使った趣味が豊富な俺のばあちゃんの口癖は「昔、南の島の王子様に求婚されたのよ」だ。ボケているわけではないと思う。
それが今日からハワイ旅行に行くという。誰か来るかもしれないし、と可愛くお願いされ俺はつい引き受けてしまったのだ。
ところが、誰も来ねえ。
俺は人と話すのが好きで、隣に誰かいればずっと喋っていられる。それが、数時間もずっと一人。さすがにちょっと寂しいなあ。
開け放たれた薄いドアの向こうの紅葉並木を眺めていたら、入り口の前に、浅黒く欧米系の顔立ちをした、親指ほどのじいさんがいた。
呆気にとられて固まっていると、「ジオラマギャラリー」の看板を優雅に指さす。俺はガクガクとうなづくと、彼は堂々と侵入してきた。
やがて、俺をじっと見ると慌てた様子であちこち見回し、驚異の身体能力でラックに飛び乗りばあちゃんの写真を指さした。首元で小さな手を水平に動かすジェスチャーをしている。
「いや、ばあちゃん死んでねえって!」
俺は、ばあちゃんが歩く真似をし、両腕を元気なカニのように広げた。通じたのか、じいさんはほっとした表情を見せた。
安心したつかの間、じいさんは海岸をイメージしたジオラマに気づき、微笑みながら涙を流したのだ。
日本語なら、いくらでも言葉をかけられるのに。すると、
「マメマメハ大使!ここにいたんですか!」
日本人の男たちが大慌てで入ってきた。
大使といわれたじいさんは男に連れられていく。そのうちの一人が言った。
「この御方はな、南の島のマメマメハ王国の駐日大使なのだ。このジオラマ、今は亡きマメマメハ王の庭にそっくりだよ。あとでばあさんと大使館に来るように。この島の事は世界秘密だから、誰にも話すなよ。」
赤い紅葉の中を、黒いリムジンが走っていった。
ばあちゃん、あんた若いころ何したんだよ。謎は深まるばかりだ。
でも、なんだかおもしろいことが始まる予感がして、俺はちょっとわくわくした。
Fin
こんにちは!高木梢です。
今回のテーマは「駐日」です!
駐日大使とかニュースでよくやる、あれです。
ちなみに、今回出てきたマメマメハ王は、かの有名なハメハメハ大王の友達で、マメマメハ王国はハメハメハ王国の属国です。(自分で書いててわけわからなくなってきた)
そうそう、マメマメハ王国の島民の名前はハメハメハ大王の歌と同じで、王様も含めて全員マメマメハです。
・・・完全なパロディですね。後悔はありませぬ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
素敵な画像をお借りしました。
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