【はがきサイズの短編】アイシャドウパレット テーマ:紫陽花
ハイドランジアブルー。わたしにとって、永遠の青。
6月の今日、晴れてよかった。
北棟3階、二人だけの踊り場。最後の体育祭の日。お祭りの歓声は、はるか遠くに聞こえる。
わたしの手には、宝石箱みたいな8色アイシャドウ。その名も、ハイドランジアカラーパレット。
目の前の白いまぶたに、淡い水色が彩られていく。
「体育祭の音、大きいね。」
目を閉じたじゅりあは、嬉しそうにささやいた。
「そう?遠くに聞こえる」
「まじ?……そろそろ行かなきゃ、やばいかな?」
「まだ。藍色が残ってる。」
二重線の内側に、深いブルーを線のように引く。
大きなまぶたは、二色の丸い紫陽花みたいにきれいだ。
「ほら、できた。鏡、見なよ。」
星みたいなバンビの目が、ゆっくりと開かれる。蓮の花が咲くように。
「ありがと、まりあ。」
じゅりあは、身を乗り出してわたしの瞳を覗き込む。
「へへ、やっぱ、可愛い!」
「……鏡、見なくていいの?」
「うん。まりあの目、鏡みたいになってる。だから、いいんだ!」
チャイムが鳴った。わたしは、言いかけた言葉を飲み込んで、じゅりあと階段を降りていく。
わたしたちの日常へ。
6年後の今日が、晴れて良かった。
青い紫陽花の花束を持ったじゅりあの瞳は、別の人を映している。ゴールドのアイシャドウ。純白の手袋。その指には……。
花束が宙を舞った。あのとき言えなかった言葉が、水色の空に溶けていく。
ハイドランジアブルー。わたしにとって、永遠の青。
Fin
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こんにちは!高原梢です。
今回のテーマは、「紫陽花」です
noterさまから素敵なお題をいただきました!ありがとうございます。
紫陽花が咲くロマンチックな季節に、noteを再開して初めていただいたお題…とても嬉しかったです🪻(←紫陽花っぽい花?なんだろうこれ)
その割には、切ない終わり方になってしまいました汗
(紫陽花の花言葉がチラついてしまって…)
実はですね、noteをやめて、またふらっと戻ってきたとき、内心ドキドキでした。
フォロワーさま、どうしてるかな…。挨拶して迷惑にならないかしら…なんて、考えたりして。
結局、♡を押すくらいしか勇気が出なかったのですが。
そうしたら、♡を返してくださって、優しいコメントまでいただけて。
本当、ありがたいな…と思いました。
インターネットでまで人見知りしてた自分、バカだなー。
コメントいただけると嬉しいから、自分もコメント送ってみよ!と思いました。
最近、そんなことを考えていました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
素敵なお題をいただきました。
はがきサイズの物語、テーマ募集しています。
思いついた言葉を、お気軽にコメントください。
それにあった物語を書きます。
その他、なんでもリクエスト大歓迎です。
最後に、はがきの画像と、きれいな紫陽花の写真です⇩
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